『マカロフ』は沈んでおらず、セワストーポリまで自航で戻りつつあり。

 HIサットン氏が2022-5-9-08:57UTC時点での「センティネル2」衛星の画像を調べて推定している。

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 Jeff Schogol 記者による2022-4-13記事「Here’s why Russian tanks keep getting decapitated in Ukraine」。
  スティーヴン・ザロガ大先生(今の身分は、Teal Group の顧問)に尋ねてみた。なぜロシアの戦車はびっくり箱のように内部弾薬が誘爆を起こしやすいのか?

 大先生いわく。オートローダーと、ターレット底部の回天木馬型の弾庫の組み合わせが、その原因の一部をなしておるんじゃ。
 通常、この自動装填メカは、最大で20発くらいの弾薬を収蔵する。

  ※ここでいきなり疑問なんですけど、T-72以降のソ連戦車のカッタウェイ・イラストをネットで確かめると、この戦闘室床下の円周形弾倉の中には30発くらいも装弾できそうに見えるのである。そして円周と車体の隙間にもむりやりに10発くらい置いて、それで総計40発くらいになる。ザロガ先生、まさか曖昧な記憶だけで話をしておられませんよね?

 ザロガ先生いわく。まず、装薬に着火してしまうのである。最初は1個か2個。
 薬莢が爆燃することにより、連鎖反応が起きる。ターレット底部の弾薬が、すべて、一連の爆竹のようにはぜてしまうのだ。

 ところで20発というのは、自動装填装置内にあらかじめ装弾されている即応分であって、じつはロシア戦車は、最大で40発の弾薬を搭載できる。

 その残りの20発が、戦闘室内部のあちこちに置かれるのだが、ほとんどむき出し状態に近い。その弾薬を焔や衝撃から守るための隔壁のような仕切りが何もない。それが最初に着火するのではないか。

 そしてロシア戦車の車内空間は、西側の戦車に比べて狭い。
 車内まで何かが貫通してくれば、それは高い確率で弾薬にも当たる。

 この欠陥はずいぶん前から公知であった。湾岸戦争よりも前、シリア軍が装備したソ連製の戦車がイスラエル軍の戦車砲で当てられたときも、ソ連戦車はすぐに内部の弾薬の誘爆が起きることが観察されているのだ。

 とうぜんロシア兵もそれは分かっていて、チェチェンに攻め込んだときは、戦車の砲塔内の吊り籠下の円環弾倉に入る以上の予備弾薬は、積み込まぬようにしていた。すなわち、オートローダーの即応分だけの弾薬しか、車内には置かない。そのオートローダーにも、20発くらいしか装弾しなかった。

 ところがこれで安全になった半面、不便が生じた。戦車がいったん発砲をしはじめる状況に入れば、20発とか22発ぐらいの主砲弾は、たちまちに射ち尽くしてしまうのある。

 米軍のM1戦車の場合、砲弾はすべて砲塔後端せりだし内の、防爆隔壁(および防爆スライドドア)で仕切られたエリアに収納されている。もしこの弾薬庫内で誘爆が起きてしまった場合、砲塔後半部の天板パネルがガス圧で吹き飛ぶ仕様となっており、戦闘室内の乗員は、弾薬庫の誘爆の巻き添えにはならない。

 このおかげで、訓練済みの乗員は生き残り、脱出できるチャンスが、ソ連戦車よりもはるかに高くなるわけである。

 中部ヨーロッパで第三次大戦が起きたとき、NATO軍は数で劣勢であるから、その戦車はまず「撃たれ強い」ことを重視して設計されている。最も貴重な資源である、「訓練済みの乗員」の生存率を高めることが、長期戦の最終勝利に結びつく。

 かたやソ連軍は、数で圧倒し、短期決戦するつもりでいたので、乗員の生命消耗などは二の次として、戦車の火力と走力にすべてを賭けたのである。走力を担保するためには戦車が鈍重となってはならず、トレードオフとして防護力や安全性は妥協させた。

 ※T-72の車体の中央の下方を真横から、装甲車の30ミリ機関砲で射撃すると、このカルーセル弾庫を直撃することになって有効であるという話もSNS上にはある。確認された話ではない。

 ※ロシア戦車360両の喪失原因をOryxが解析したところ、破壊されたものは166両だが、自発的に遺棄されたものは188両でもっと多かった。他のAFVと違い、ロシアの戦車乗りは、燃料が切れるとすぐにその戦車を放棄して逃げる傾向が強いとわかった。攻撃されて弾薬が誘爆するまで待つことはないというわけだろう。

 ※一層わからないのが、戦車ではないIFVやAPCでも「びっくり箱」状に自爆している残骸が多いこと。車内に何を積んでいたんだよ、という話。ひょっとして、予備燃料や、調理用の油脂類を、ポリタンクで積み込んでいたのか?

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 2018-6-11記事「5 facts about Saab’s NLAW anti-tank system」。
   NLAWは重さ12.5kg。距離20mから800mまで使える。

 NLAWは、敵戦車の頭上1mの高さを通過しつつ、爆発する。

 この1mの高さは、射手が目測したり計算する必要はない。射手は敵戦車の見えているハッチかアンテナ部分に照準して発射するだけ。あとは飛翔体の方で、それよりも1mだけ高く飛んでくれるのである。

 戦車以外の目標を撃ちたいときには、直撃起爆モードも選択できる。

 敵戦車が2台、距離50mと距離150mに重なって見えるとき、150mの方を攻撃するように、設定することができる。この場合、100mまでは戦車の磁気に反応しないように、スイッチで設定するのである。

 携行姿勢から発射までの時間は、もし敵戦車が距離400m以内であれば、2秒しかかからない。それより遠くの目標に対しては、照準作業に10秒が必要だとという。※これは弾頭の光学センサーに、目標を認識させる作業だろう。炸裂タイミングは、磁気と光学情報を頼りに、弾頭が判断する。

 兵隊は、こいつの使用法を、1時間で習得することができるという。

 ※スウェーデンの対戦車ミサイル「ビル」が下向きに撃ち出す自己鍛造弾は、標的にしたセンチュリオン戦車の天板から底板まで貫通して、地面にめり込んだそうである。NLAWの弾頭が「Bill」からの転用であるとするならば、これでT-80にびっくり箱現象が起きる機序は納得ができる。

 ※成形炸薬の金属溶融ジェットが、戦車の砲塔装甲に穴を開けたとき、それは「衝撃波」が戦車の車内に持ち込まれたと同じことなので、その瞬間的な空気圧上昇+超音速スプリンターだけでも、弾薬の自燃が起きるかもしれない。こうした、被弾直後の戦車車内の様相は、すべての軍が秘密にしていて、動画映像が公表されたことはない。昔、富士学校では、61式戦車の車内に生きた豚を縛り付け、戦車砲に当てられた車内がどうなるのか、確かめたことがあったという。もちろん、射撃後にハッチを開けて、内部を撮影するのだが、惨憺たるものだったそうだ。こんなものを戦車兵には見せたらあかんぞというわけなのだろう。しかしこういう秘密主義が横行すると、国によっては、戦車の装甲防護力をいいかげんなレベルで妥協してもいいことにされてしまう。また、地形を盾に使うのが大前提の「自走対戦車砲/戦車駆逐車」と呼ぶのがむしろ正しかった61式や74式を、おこがましくも「MBT」と宣伝することにもつながってしまう。

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 Julian Spencer-Churchill 記者による2022-5-9記事「Four Important Thresholds of Russian Nuclear Weapons Use in Ukraine」。
   WWIのヴェルダン戦で、ドイツ軍は、ヴォーとドーモンの2要塞に対して毒ガスを多用して陥落させようとした。それと同じノリで、もし、攻めあぐんでいるアゾフスタール鉄工所の上で、ロシア軍が10キロトンの戦術核(イスカンデルにて運搬)を地表爆発させたとしたら、どうなるか。

 「Nuclear Bomb Effects Computer」を利用すると簡単に知られる。硬化地下構造物に対して深さ13mのクレーターができる。放射性のダストは東向きの風に乗って中国まで飛んで行くだろう。

 ※著者はもと英軍工兵将校で、今はモントリオールの大学にて国際関係論の助教授だという。専門はパキスタン。高度な教育を受けたお坊ちゃんだということは文章から伝わるが、戦争指導のことはよく分かってない感じ。

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 Kamil Galeev 記者による2022-5-9記事。
  記者の友人がモスクワ市内を歩いたところ、次のことに気付いたそうだ。
 商店、レストラン、パブの店主たちは軒並み、記念パレードのポスターとセントジョージのリボンを店頭にベタベタと貼ることにより、政府への協賛の意を表わしている。愛国カルトだ。

 しかるに、少数民族の店主の店だと、そうした政府協賛の飾り付けが一切、ない。たとえば、中央アジアからの移民の店主が経営しているハラル食のレストラン。チェチェン人のレストランも同様だ。

 この日、露軍のフィールドキッチンがストリートに出店し、通行人に、「兵隊食」をふるまったという。

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 Dan Lamothe 記者による2022-5-6記事「Pentagon will buy Ukraine laser-guided rockets, surveillance drones」。
   バイデン政権によるウクライナ軍への追加援助品の中には、1970万ドル分の「RQ-20 ピューマ」無人機が含まれている。手投げ式の固定翼観測機である。