最善の援助品としての「ディーゼル発電機関車」を考えよう。

 復興支援というと昔は平和恢復後の平時の話であったが、今はそんな時代ではない。

 かつては、たとえば侵略犯罪国家の全土が占領されて戦争のカタがつき、ニュルンベルク裁判のA級処刑が済んだその翌年くらいのタイミングで「マーシャル・プラン」を考えてもよかった。
 現代は、そうはいかぬ。プーチンが絞首刑となるのを待ってはいられない。ウクライナ向けのネオマーシャルプランは今すぐスタートするしかないだろう。

 すなわち、一方で戦争当事国軍には戦争をさせつつ、それと並行しながら、銃後のインフラ支援を考えてやらねばならない。新事態だ。

 このばあいも、わが国内で平時から製造されている特定の工業製品に「デュアルパーパス設計」の配意があれば、とても重宝するのである。
 そういう製品が、戦争の起こる前から普通に量産されているなら、こんなときには、それを単純に増産して援助に振り向けるだけだからである。

 具体的には、日本国内でデュアルパーパス品として製造を考えるべきなのは「火力発電型機関車」だろう。

 タービン(またはピストン)からのメカニカル・リレーで動輪を回すのではなく、タービンなどの内燃機関で発電した電力によって、動輪直結の電気モーターを駆動させる。

 鉄道の機関車でありながら、停車中にはそのままローカルな小型発電所となるものだ。

 発電所や変電所は、完全に地下化するのがむずかしい。また、無人機とミサイルのミックス空襲をぜんぶ阻止することもむずかしい。

 ウクライナのような立場の国に対しては、与国は、移動式の小型発電所を多数、提供した方がいい。
 それがこの「ディーゼル発電機関車」だ。

 あわせて、余った電力を架線からでも機関車からでも吸い取って蓄電しておくことのできる「電池テンダー車」を連結できるようにしておくと、尚一層、「機動発電所」としての融通性は増すだろう。

 発電所として機能させるときは、トンネルや陸橋下の引き込み線に止めて、厳重な対空遮蔽をほどこすことは申すまでもない。空襲の剣呑度に応じて頻繁に、その位置も変えるようにすれば、簡単にはミサイルの餌食にもなるまい。

 コルゲートメタルでなまこ形ドームをつくり、その上にガレキをぶあつく覆土して、引込み線の対空遮蔽トンネルとしてもいいだろう。

 電力網にかぎらず、戦争荒廃がすすんでいる国のインフラの復興は、鉄道線路を軸に進めるのが合理的である。
 たとえば水道管やガス管も、軽便鉄道の線路に沿わせておけば、どこを破壊されてもすぐに復旧資材を現場まで届けやすい。

 そのためにも機関車はたくさん必要だ。
 理想を言えば、隣国のルーマニアやチェコやポーランドで産出する地下資源燃料を、機関車燃料としてそのまま燃やしてしまいたい。石油が出るなら重油でいい。石炭が出るなら、石炭でもしょうがないだろう。産地近くの駅でそれをテンダー車と貨車に積み取り、すぐに国境を越えて自国の線路を走って戻る。最も合理的だ。クリーンとか言ってる場合じゃない。

 そのためにはゲージをEU規格にあわせる改軌工事も急がねばならぬ。そういう支援を、日本政府はすることだ。

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 AFP の2022-10-27記事「Crimea Power Plant Hit by Drone Attack: Moscow-Backed Authorities」。
   クリミア半島内のバラクラヴァ火力発電所が、木曜の夜、ウクライナ軍の無人機×1による攻撃を受けたものの、損害は軽微だという。
 変電器のひとつに火災が発生したが、消し止められたと。

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 Defense Express の2022-10-26記事「Now We Know How Austrian Rotax Engines Got Into iranian UAVs: Those Could Have Been Stolen Off Private Jets」。
   ロタクス912エンジンは、1989年いらい、5万基以上も製造されているベストセラーである。

 西暦2000年以降、このロタクスの912と914エンジンは、EU圏内で頻繁に盗まれるようになった。

 912にも低速回転と高速回転の2バージョンがある。犯人は低速回転バージョンだけを盗んでいる。
 民間の格納庫に忍び込み、そのエンジンが搭載されている軽飛行機から、首だけ外して持っていくのである。プロの仕業だった。

 数十基はくだらないであろうこうした盗難ロタクスが、最終的にイランに買われているのであろう。

 たとえば2014年にはイランのフロント企業が「ジェットスキー用エンジン」と称して、盗んだエンジンを61基も国外へ持ち出そうとして、ドイツで摘発された。
 おそらくそのエンジンは「リムバッハ550」だった。それをコピーしたのが中共の「MD-550」で、「シャヘド136」は公式にはそれを搭載している。

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 ANDREW MELDRUM 記者による2022-10-27記事「Ukraine battles to retake Kherson; Russia warns it could hit US satellites」。
    ウクライナ軍に包囲されたヘルソンの市街区からは7万人以上の住民がエバキュエートされており、体面を次々失墜しているプーチンは、ウクライナ戦争に利用されている米国の商用衛星を攻撃するぞ、と宣伝し始めた。

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 ロイターの2022-10-27記事「Down on chips, Toyota goes back to basics with car keys」。
    トヨタは日本国内で販売する新車用の「キー」を、しばらく、1本はスマートキーとするけれども、スペアは、メカニカルキーにすると発表した。

 これは集積回路チップが不足しているなかで、ユーザーへの納期を早めるため。

 2本目のスマートキーは、出来次第、可及的すみやかに、顧客に渡す。

 ※ロシアは地上で水爆を使う前に、宇宙で使う可能性が高い。放射線汚染の敷居が低いからだ。1発目が静止軌道ということはないだろう。低軌道爆発で発生したEMPが、どの通信衛星や航法衛星にまでダメージを与えるかは、事前には予測し難い。とりあえず、衛星アセットがまったく使えなくなるという事態を、われわれは「脳内演習」しておくしかない。トヨタはこのさい、スマートキーなどは全廃した方がいい。メカニカルなものならば、EMPの害を被らないで済むのだから安全だ。

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 Matthew Roscoe 記者による2022-10-27記事「New Russian Buyan-M warship set to carry twice as many Kalibr cruise missiles」。
    ロシアの『ブヤン-M』ミサイル艇がモデルチェンジし、新型は、旧型の倍の16本の「カリブル」巡航ミサイルを搭載すると。

 その容積を確保するために船の断面形はV形とし、旧型のウォータージェットは、スクリュープロペラに改めた。

 新モデルはすでに何隻か進水している。就役はしていない。まず北方艦隊に所属する筈。

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 Kamil Galeev 記者による2022-10-27記事。
   米国の三流ジャーナリストどもは、シベリアで中共とロシアが紛争を起こすこと期待しているようだが、現実は、こうだ。

 ロシアは人口分布がシュリンクしつつある。収縮の焦点は黒海に近い暖地のクラスノダール市である。
 ロシア人はシベリアと極東を放棄しつつある。そこが砂漠になるならなれ、という態度。それでむしろロシア政府の方が、そこに中国人が入ってきてくれることを願っている。

 ロシアはシベリア領土などを中国と争う気は、もう無い。
 ただし北京は、そこに出て行くことを大いにためらっている。

 なぜロシアは1905年に極東へ拡張したか? とうじのロシア人の平均年齢は、17歳だったのだ。人の若い国が膨張するのである。今のロシアは老人国。老人国は縮むのが当然だ。

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 Anna Nemtsova 記者による2022-10-26記事「Now Putin’s Sending Prison Rape Victims to Die on the Front Line」。
   ロシアの刑務所内はソ連時代からカースト階級制がしっかりとできあがっていて、いちばん弱い受刑者たちは、毎日、殴られたりレイプされたりしている。それが永久に続くのである。
 もっかロシア全土の刑務所をリクルート行脚中のプリゴジン(ワグネル総帥)はこのたび、そうした、最低カーストの受刑者を、ワグネルに入隊させてやるぞと誘い出してやる。
 彼らは刑務所の地獄から脱出できるが、そのままウクライナの最前線へ直行させられる。

 『デイリー・ビースト』はノヴゴロドの受刑者から音声証言を得た。彼の獄友たちは1週間の基礎訓練ののち、戦闘に投入されたそうだ。すなわち先週からバフムトに居るという。
 うち1人は、ドローンからの爆撃を受けて顔面が引き裂かれ、入院中だと。

 すでにプリゴジンは6000人以上の囚徒を傭い上げた。その月給は1500ドルから3000ドル相当だという。

 ワグネルも当初は、受刑者の中の殺人犯や強盗犯をセレクトしていた。そいつらならば戦場でも役立つだろうと踏んだのだ。しかし戦況が悪すぎるため、もはや人材を選んでいる余裕がなくなったのだ。

 元ワグネルの指揮官いわく。プリゴジンはロシアを、第二のシリアに変えつつあるようだね、と。

 囚人部隊の戦死率はすさまじい。レニングラード区から連れてこられた最初の47人の囚人部隊は、ひとりも生還しなかった。全滅である。7月、バフムトへは、68人の囚人がまず送り込まれたのだが、生還したのが片手を失った1名のみ。そいつは施療後、また前線へ戻されているという。

 ※「どうで生きてはかえさぬつもり」。

 元ワグネル指揮官氏いわく。ワグネルはプリゴジンが私費で運営しているように見えて、じつはそうではない。真のスポンサーはGRUなのだ。つまりは「特務機関」なのだ。ワグネルの幹部級は、たいがいが、反ユダヤの極右信条の持ち主で、スラブ土俗宗教に親近だ。

 ※雑報写真によるとドイツ軍の最新AFVが車体の回りに「すのこ板」を不規則に貼り付けて対ISR迷彩にしている。これはグッドアイディア。車体からの輻射赤外線を遮断して、森林の背景赤外線スケープにまぎれこますには、ボロ板を使うのがいちばんだ。適当に隙間もあるので、うまくまぎれる。安い資材だし、軽い。ERAなどの百倍、サバイバルに貢献すると思う。

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 Eli Clifton 記者による2022-10-26記事「Retired general’s pro-Saudi op-eds didn’t disclose financial incentives」。
   過去4年以上、退役した米空軍大将のチャールズ・ウォルド(74)は、サウジアラビア政府からカネで雇われていることを非公表のまま、サウジに有利な宣伝意見の寄稿や発言を新聞・雑誌・TVに対して続けてきた。これは米国の法律に違反する。

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 Idrees Ali and Phil Stewart 記者による2022-10-28記事「U.S. to scrap sea-launched nuclear missile despite military backing」。
   木曜にバイデン政権が発表した核の方針文書。核弾頭付きの巡航ミサイルを潜水艦に搭載するのは止める、としている。もちろん制服上層は反対意見だが。

 そしてまた、次の中間選挙で共和党が大勝ちすれば、やはりこの方針は貫き得ないことにもなるであろう。

 木曜発表の政府方針は三文書。国家防衛戦略。ニュークリア・ポスチュア・リビュー。ミサイル・ディフェンス・リビュー。

 核は簡単には使わない、というのが政権の大きな志向。

 2018にトランプ政権下で米軍は、潜水艦から発射する新世代の核巡航ミサイル(SLCM-N)を開発することに決めていた。

 しかしバイデン政権にいわせると、そんなものは抑止の足しにならず、まさにカネの無駄だ。

 以前に記者が、SLCM-N開発をとりやめたらプーチンに間違ったメッセージを与えないか、と問い詰めたところ、ロイド・オースティンいわく。そもそもSLCM-Nなんてものからプーチンはまったく感作をおよぼされておらず、徹頭徹尾、無駄なアセットなのである、と。

 ※その通り。有限の資源は、敵指導部の心胆を寒からしめるモノの整備に使わないと、国民の負託にこたえることにならない。わが国で言えば、尖閣までカバーできないことが最初からわかっている陸自の自走砲開発と攻撃ヘリ調達はまさに無駄遣いの典型だった。

 かたや統幕議長のマーク・ミレイ大将は4月に、米軍の核オプションはマルチ化するほど有利であり、SLCM-Nもそれに資するという見解を維持。※安価にそれができるならOKなのだが、米国の場合、どんな新兵器も決して安価に収まることはない。メーカーと地元議員がよってたかって無駄予算を引き出そうと共謀するので。ミレイのような大将連も、退職後の再就職を考えたら、現役中に、無駄プロジェクトを遺産として残しておくほど、将来が明るくなる仕組みがある。

 バイデン政権がトランプ時代から継承したプロジェクトもある。それはSLBM用の「W76-2」という低イールド水爆弾頭だ。これはすでに2020からSSBNに混載開始されている。したがってプーチンが戦術核をどこかで使えば、ただちにこいつで対抗ができる。こっちの方は、現にプーチンの心理に感作を与えて、抑止を働かせているのである。ちなみに先日、セントコムの司令官がアラビア海のSSBNを海中訪問したのは、セントコムの司令官は中東近海のSLBM発射も指揮統制する立場にあるから。いつでもウクライナ向けに使うぞ、とプーチンを脅したのだ。



ウクライナの戦訓 台湾有事なら全滅するしかない中国人民解放軍