人が望めば戦争は始められる。しかし、望むタイミングで終戦させることはできぬ。

 『フィレンツェ史 第三巻・第2章』の中でマキャヴェリ(1469~1527)が晩年に残した評言。

 別な評言にこんなのもある。

  他者の扱い方は、鷹揚にするか、叩き潰すか、どちらかにすべし。軽く傷つけただけの相手からは、報復されてしまうぞ。重い攻撃ならば、報復するのは無理だ。(『君主論』第3章)

  専制統治者は、罠を察知できなくてはいけない。つまり、狐になれ。次いで、狼どもを恐れさせていなくてはならぬ。だから、獅子となるべし。(『君主論』第18章)

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 Joseph Trevithick 記者による2023-10-11記事「Sig Sauer Shows Off P365 Pistol-Armed Aerial Drone」。
   Sig Sauer 社の新提案。ドローンに火器を縛り付けて射撃してみるという多くの素人工作の動画を同社は哂い飛ばさず、メーカーとして、自社の拳銃を市販のクォッドコプターに取り付ける研究を開始した。ドローンはオフザシェルフの出来合いだという。製造元は特定されていない。
 ともかく、そのドローンごと、たった1名で持ち運び、操作できる。

 昨日、DCにて、米陸軍の年次コンベンションが開催された。それに合わせて同社は2つの「空飛ぶ拳銃」システムを会場で展示した。

 Sig Sauer 社は、米陸軍の6.8ミリ口径の「XM7」小銃や、「XM250」分隊軽機、そしてモジュラー拳銃である9ミリ口径の「MHS」を米軍に納品している。

 こんかいドローンと組み合わせたのは「P365」という、もっともコンパクトなサイズの9ミリ自動拳銃で、これは軍用ではない。

 ドローンへの取り付けは、ヒラメのように拳銃を横に寝かせ、排莢が真下へなされるようにしてある。スライドと一体式のコンペンセイターが、発射時のマズル踊りを抑制。

 ドローンは、レーザーの助けを借りて地上のターゲットを狙う。引金はサーボモーターによって、リモコン操縦者が引く。

 メーカーによると、空中での発射反動を、無視できるくらいに抑制することに成功したという。

 会社の説明係によると、名前は明かせないが、さる顧客が、このシステムを軍用に完成してくれ、と頼んで来ているという。

 ※SIGの拳銃はコンパクトなものでも安価とはとても申せないから、使い捨てにできるものではない。敵が拾ったら、そのまま敵の資産になってしまう。それに対してドローンは基本的に使い捨てと考えるべきであることはウクライナ戦争が現に幾万の事例で以て証明しつつあることだ。ということは、SIGのこの思いつき、軍隊相手の提案ならば、的はずれもいいところだろう。大勝利した野戦の新戦場で、死んだフリをしている敵兵がいないか、ドローンにチェックさせる――そんな用法しか、ないだろうと思う。なにしろ、このドローンから取り外した拳銃は、そのまま良い武器となってしまうのだから、警察用としても使い難い筈。そこへいくとイスラエルのエルビット社が昨年から提案している「LANIUS」は割り切っている。小さなレース用のクォッドコプターで、たった7分しか飛翔はできないのだが、ビル内をビデオカメラで偵察して、敵人の姿を画像上で確認した上で、150グラムの自爆炸薬を起爆させる。しかもこの「LANIUS」を、もっと大型で長距離飛行できるマルチコプター上に4機くらい載せて、遠隔地へ経空投入するという「親子式」の運用法も開発しているようだ。母機に無線中継もさせるのだろう。

 ※ただし、なおまだ、ブレークスルーの可能性はある。まずは「使い捨ての単発ショットガン」。これなら、敵が拾っても敵はそれを武器にすることができぬ。だから、同じく使い捨てのドローンと組み合わせることに合理性が生ずるだろう。尤も、すでに「クレイモア」と結合されたクォッドコプターがある故、市場訴求力があるかどうかは疑問だ。もうひとつは、捨ててしまっても惜しくない値段の、サタデーナイト拳銃(.22のリボルバー)を縛り付けることだ。ソレノイドがDAの引金を曳き絞るのに特に困難は無い。ジャムの可能性も極小。こちらは、犯罪組織が「脅かし」用に使いたがるだろう。

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 2023-10-11記事「Wing-screen Wipers: How Self-cleaning Cicadas Could Help Us Have Cleaner Cars」。
   セミの羽根は、「超撥水性」であることで知られる。
 朝露が、セミの羽根の表面で、おのずから、小さな水滴にまとまる。そのさいに、羽根表面の埃・ゴミも、その水滴が除去してくれる。よってセミの羽には塵がまったく付いていないのだという。

 英国の大学の研究チームは、この「自動クリーニング」表面構造を、高層ビルの窓ガラスや、ソーラーパネルや、カメラのレンズに応用したいと考えている。

 ※セミ大国のわが国として全国の小学生諸君は夏のおわりにセミの屍骸を拾いあつめ、その羽根がほんとうに霧吹きで水を吹き付けただけでクリーンになるかどうか、確かめるべきじゃないか? セミの強烈な羽ばたきは、ゴミの除去とは関係がないのか? セミより古くからサバイバルしてきたトンボの羽はどうなっている? あっちは、強烈な羽ばたき無しで清浄を保っているように見えるが? しかもセミ成虫より長生きだ。

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 2023-10-11記事「Clear Sign of Raised Reserves ―― Merkava III Tanks are Back in Action」。
    10-8にイスラエル軍は、レバノンからヒズボラが攻撃してきたのを承けて、そちらの国境に近い部隊に、倉庫から「メルカーバー3型」を引っ張り出させた。3型は2020年に退役させた旧タイプだ。

 要するに予備役を総動員したので、戦車の予備ストックも、現役復帰が必要になった。

 IDFの現役戦車は、4型とその改型で、およそ550両。
 予備用の3型は、700両くらいあるはずだ。

 ※まめ知識。メルカーヴァーの4型の初期生産型は、戦後の戦車として珍しく、装填手の頭上のハッチを廃止してしまった。つまり砲塔の天板には、右寄りに、車長用のハッチがあるだけ。左半分には、ハッチがない。そうすることで、砲塔上面の避弾径始デザインは合理化された。そして車長用のハッチを大きくした。ところがこれでは乗員の緊急時の脱出に不都合であると、運用側から不満が告げられた。それで、ローダー用のハッチは、復活している。ところで、ハマスのドローンが投弾してうまいこと内部火災を起こさせた、メルカーバーの砲塔左側前方部には何があったのか? 60㎜迫撃砲はローダーの担当なので、その弾薬が置かれていたのではないかと疑われる。ハマスのドローンが、上空から、イスラエル戦車の砲塔左前部を狙うことには合理性がある。もし少し外れて車体へ着弾したとしても、そこ(車体左側)は、ドライバー席のスペースなのだ。

 ※世界中のイスラエル国籍男子に予備役招集がかかったはずなので、わが国の国際空港からも多数のイスラエル人が帰国しつつあるところだろうと想像するが、日本の大手メディアはそれを報ずるつもりはないようだ。

 ※中国の高校生が安倍射殺劇を演出して大喝采という報道があるが、この校長は大ピンチではないか? 劇の暗喩が習近平暗殺の英雄待望にあることは自明で、諸外国は、中国の若い世代の間にそのような空気が漲っていることを察してしまった。

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 J.P. Lawrence 記者による2023-10-11記事「The military is studying ketamine infusers for wounded service members」。
    米陸軍と空軍の医務隊は、麻酔薬の「ケタミン」を注入してくれる貼り付けデバイスを、8月のミシガン州での演習で試した。

 懐炉のようなデバイスを負傷兵の腹とかに貼り付けると、そのデバイスから適量のケタミンが身体に送り込まれ、疼痛を緩和してくれる。このベンチャー企業、既存のインシュリンの自動投与器具からヒントを得た。

 開発は、加州の「ボクストン・バイオメディカル」社。軽量なのでドローンによって最前線の負傷兵の居場所まですぐに届けることができる。

 ケタミンは米国では悪名がとどろいてしまった。中毒性が低い麻酔薬であるため、トリップ作用を期待して濫用する者がいるからだ。

 米軍のメディックは、ベトナム戦争中はケタミンをほとんど使っていない。しかし2011~2016のイラクおよびアフガン戦線では、適用者率が11%に増えている。

 ケタミンは平時であれば血管注射なので1人の患者に射つのに8分かかってしまう。この器具は上皮浸透方式なので、その時間を30秒に減らす。戦場ではいちどに多数の負傷者が出るので、1人あたりにかける時間を短くできる器具が、特に求められるのだ。

 器具の中には、ケタミンが6ミリリッター入ったカートリッヂが仕込まれている。
 貼りつけたあと、「ボタン」を押すと、投薬が始まる。かんたん至極也。

 これをクォッドコプターで届ける場合、配達距離は最大35マイル。