こんどは「ふ号」? ウクライナ戦線に風船爆弾が再登場。

 Svetlana Shcherbak 記者による2024-3-28記事「The russians Claimed That They Shot Down a Kamikaze Balloon: What Threat Does This Pose?」。
   GPS航法装置と動力を有し、爆薬を積載した無人の飛行船――ただし外見は気象観測用の風船だという――がウクライナ方向から飛んできたので戦闘機によって撃墜した、とロシアが宣伝している。

 しかし爆弾やリフレクターを吊るした風船による攪乱作戦は2023年前半にロシア人がドンバス地方で始めたものである。また再開したのではないか。それが偏西風に乗ってしまったのではないか。

 小型の風船を撃墜するのはとても厄介で難しい。

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 Joseph Trevithick 記者による2024-3-27記事「Two Of The Fastest U.S. Sealift Ships Trapped By Baltimore Bridge Collapse」。
    フランシス・スコット砂洲橋が落橋してしまったことにより、それよりも奥(広義のチェサピーク湾であるが、それがボルチモア市心にまで引っ込んでいる入り江)の埠頭に繋留されていた「高速輸送船」(所属は連邦海運局だが、ほぼ米軍御用)×2隻と、予備の輸送船×2隻が、出られなくなってしまった。

 ※記事の附図が貴重である。「Fast Sealift Ship」は全長946フィート、幅106フィート、排水量54895トン、死重26416トン。ぜんぶで8隻あるが、積載需品容積が微妙に異なる3タイプに更に分類できる。なおまた、連邦運輸省の海運局が国防予備艦隊として保有している輸送船としては、この8隻の他に、Ro/Ro船が27隻、支援クレーン船が4隻、灯標工事船が2隻、ミサイル射場設備船が2隻、練習船が8隻。それらの母港は米本土に14港ある。東海岸では、北から、ボルチモア、ノーフォーク、ニューポートニューズ、ポーツマス、チャールストン。メキシコ湾では、ニューオリンズとマレロ(ルイジアナ州)、「MARAD Layberth Facility」(テキサス州)、ポート・オブ・ボーモン(テキサス州)。西海岸では、北から、タコマ(ワシントン州)、アラメダ(加州)、オークランド、サンフランシスコ、ロングビーチ、サンディィエゴ。このうち所属船の数が多いのは、チャールストンの6隻、サンフランシスコの5隻。ボルチモアとMLFは4隻づつでそれに次いでいる。ただしRo/Roの古いものは主機が蒸気タービンで、除籍5分前の物も少なからず。

 閉じ込められている優秀船は『SS Antares』と『SS Denebola』。

 こうした輸送船に乗組むのは文民の船員。だが有事には米海軍の軍事シーリフト・コマンドの麾下に入る。
 平時には最小人数の保守要員しか乗せていないので、出動までには準備に10日ぐらいかかるのがふつう。
 しかしボルチモアの優秀船は、準備5日で出動ができる。それが、使えなくなってもうた。

 ※雑報によると今はコンテナ船の上に橋梁残骸がのっかっている状態だが、このコンテナ船を動かすとその巨大構造も水没して旅順港閉塞完成みたいになってしまうので、除去作業の段取りを必死で考えているところ。コープス・オブ・エンジニア(米陸軍工兵隊=連邦の大河や港湾の巨大工事はふつう、ここが請け負う)の出番だろう。

 ※ミシュランの2016年の道路地図で確かめると、この橋の南側には迂回の橋が無いも同然(200km以上走ってノーフォークまで行けばある)。しかし北側3kmには入り江を横断する海底トンネルがある。しかし海底トンネルは、可燃物や危険物を積んだトレーラーが通行するのに不自由があるかもしれない。

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 The Maritime Executive の2024-3-28記事「Investigators Check Dali’s Fuel with Speculation of Possible Contamination」。
   コンテナ船『ダリ』が電力喪失した原因は、ディーゼル燃料の中に何か悪いモノが混ざっていて、それでエンジンが止まったのではないかという疑いがある。

 2022年には、シンガポールで200隻前後の商船に給油した高濃度硫黄含有重油の中に「有機塩素化合物」が混ざっていたために、80隻近くが燃料ポンプやエンジンのトラブルに見舞われたという事件が起きている。

 『ダリ』号は、バックアップ用の発動発電機も、主機と同じ燃料で回していたために、主機と同じように即座に停止してしまったのではないかと米コーストガードやNTSBは疑っているそうだ(WSJ報)。

 『ダリ』のディーゼル燃料は、上海と韓国で給油されていたという。それは「マリン・ガス・オイル」と分類される油種で、普通の軽油よりも汚染物質を少なくしてあって、割高なものである。これは寄港先の環境規制がうるさいので、しぶしぶ使うのである。

 『ダリ』号は3-13にはパナマ運河にあり、そこからNY港、ノーフォークを回って、最後にボルチモアに寄った。パナマでは給油はしていない。しかしボルチモアで給油した。その軽油が汚染されていた(FuelTrust という専門機関による推理)。