土曜日、6機のF-22が追加で嘉手納に飛来していた。ヴァジニア州のラングレーから。

 Edward Luttwak 記者による2024-4-23記事「Iran is weaker than we think Despite Obama’s mistakes, Israel retains the upper hand」。
    16年前のオバマ政権は、イランに「アメリカに死を」の路線を止めさせようと試みた。結果、イランは中東の米軍基地を無人機で爆撃するようになっただけだった。

 このときも、今も、アメリカ政府は「構図」が理解できていない。イランに「アメリカに死を」の態度を放棄させることなどできないのである。

 オバマは、ロースクールで同窓だったロバート・マレイを信任していたと思しい。マレイは大のイスラエル嫌いであった。だからイランを見る目も曇っていた。

 イランの政体は、イランの人民からは支持されていない。なにしろ抑圧的であり腐っている。
 なのでイラン指導部は、IRGC(イラン革命防衛隊)内の矯激分子、および「Basij」民兵、政治大好き説教師たちに、ますます頼るしかない。

 だからオバマが対イランの制裁解除とひきかえに核合意を呑ませたつもりになっていても、中味の芯は何も変わっていない。

 オバマはバイデンに対して、マレイをイラン問題のコーディネーターにするんだぞと強いた。しかしマレイはセキュリティ・クリアランスを喪失し、その地位にはいられなくなった。

 バイデンはイエメンのフーシを、テロリスト名簿から除いてやった。何の見返りもなしに。それでテヘランは、バイデンは利巧じゃないと理解した。今、フーシはテヘランの手先として米軍艦と直接に交戦中である。

 イランは、サダム・フセインのイラクよりも強靭である。それは国土が4倍広く、人口が2倍あるからじゃない。イランはイスラム化する前から地域の先進帝国で、地域を支配する側の国であった。中東で、何百年もそれをやってきた。その政治文化遺産が、強靭なのである。

 瀬戸際挑発も、イランは巧妙だ。決して米軍からは真正戦争をしかけられないようにマネージしている。

 イランが中東の盟主になるためには、根本の障害が2つある。宗派と民族だ。
 イランはイスラム発祥の地ではない。サウジが盟主面をしている。サウジのスンニに対抗してイランは「シーア派」をつくったが、まだ中東のメジャーではない。さらなる分裂は、イラン人はアーリア人種であってアラブ人ではない。アーリアのイラン人はずっと、未開のアラブ人を馬鹿にしてきた。「トカゲ喰い」と呼んできた。アラブ人はペルシャに支配される側の文盲の乞食であった。イスラム教ができる前は。

 ※そのイスラム教を宗教らしく整えてやったのもペルシャの学者なんだとイラン人は思っている。なにしろベドウィンは無学だったので。

 しかし今日、たったひとつのテーマで現代の中東はまとまることができるのだ。それが、反イスラエル。
 だからイランは、反イスラエルの旗振りをする。これにはスンニ派もアラブ人も反対はできない。協賛するしかない。

 IRGC(イラン革命防衛隊)は、レバノン、シリア、イラク、イエメンに住むアラブ人を手下のゲリラ戦士に育てる「帝国のスキル」があることを立証している。こんなことがやれたのは、昔インドを支配していた大英帝国ぐらいなものであった。

 いま、アメリカ軍がイランを恐れなければならない原因もここにある。イランは、手下のアラブ人たちを捨て駒にして米軍に立ち向かわることができる。その捨て駒の人数が、年々、増える一方なのだ。

 かたやイランには逆風も吹く。4月1日にダマスカスにて、IRGC(イラン革命防衛隊)の高級指揮官と幕僚が、イスラエル軍機による対地爆撃を喰らい、まとめて吹っ飛ばされた。この一件について、アラブ世界は、まったく、沈黙している。ざまあみろと思っているのだ。ダマスカスは古くからのスンニの牙城だったが、いまやシーア系政府が支配するところ。スンニ派諸国は、イラン帝国の拡大を、苦々しく思っているのだ。

 ※雑報によるとバイデン政権は議会に対し、長射程型(すなわちレンジ300km、GPS自律誘導)のATACMSをウクライナに供与すると通知したという。バイデン政権がATACMSの初期型(レンジ165km、クラスター弾頭だがGPS修正はしないタイプ)の供与に踏み切ったのは2023-10のこと(初発射は23-10-17)。2023夏の「反転攻勢」とやらが大失敗した、かなり後なのであるが、おそらくは、ロシアが北鮮から弾道ミサイル「KN-23」などを購入したことが確実になったタイミングでバイデン政権は「制裁」の意味をこめてそれを決定した。「KN-23」は2023-12-30にハルキウに初弾が撃ち込まれている。その2~3ヵ月前に北鮮からの輸入作業が始ったと考えて矛盾はない。つまりこういうことだ。ウクライナ人が《長射程の反撃兵器》を自前で整備していなかったためにロシアから一方的に苦しめられているのは、まったくウクライナ人がなまけていたせいなので、そこには特に配慮などしない。むしろ「1987米ソINF条約」の精神が崩れることを米国としては重視する。今回の長射程型ATACMSの供与決定の背後には、おそらく、ロシアがイランから弾道ミサイルを輸入しようと動いたことがあるのだろう。これまた「制裁」の意味合いなのだ。

 次。
 Boyko Nikolov 記者による2024-4-23記事「Hostilities surge: Hezbollah struck Hermes drone in air clash」。
   4月21日にヒズボラは、イスラエル軍の「ヘルメス450」無人偵察機を撃墜した。SAMを使って。場所は南部レバノン。

 その前の4月6日にも、「ヘルメス450」と「ヘルメス900」が撃墜されている。後者は1機が3000万ドルするものだ。

 「ヘルメス450」は別名「ジーク」といい、エルビット・システムズ社が開発した。
 ウイングスパン10.5m、最大離陸重量450kg(ペイロード150kg)。

 エンジンはロータリーエンジンで、最大130ノットを出す。高度は1万8000フィートまで。滞空は20時間可能。

 ※リーパーの最新系列の「モハベ」無人機に、メーカーはミニガンを搭載してテストしたという。この「モハベ」という、非スペイン人には発音しにくい、したがって輸出商売的には論外なネーミングが、そもそも私には謎で仕方なかったのだが、ようやく意図が分かった。こいつをメーカーは、メキシコの麻薬カルテル相手の戦争用に売り込もうというのだ。麻薬カルテルならMANPADSを保有していないから、低空から銃撃もし放題だ。トランプとその支持者がよろこびそうな絵図が浮かんでくるじゃないか。