わが国の利益だけを基準として、最も好ましくなさそうな展開=地獄コースと、その真逆の天国コースを、可能性として、想像しておこう。
●地獄コース
イランはカーグ島(イラン産原油の9割が積出される拠点。5マイル×3マイルの広さ)を、ガス状の放射性同位体「沃素131」で汚染する。これは米海兵隊が上陸した直後に実行する。
続いてイランは、パナマ運河も「沃素131」で汚染する。これは他国の商船に密かに載せた積み荷を、タイマーを使って爆散させることによる。
前後して、GCC諸国の枢要ないくつかの石油施設や都市に対しても「沃素131」を搭載した無人機をランダムに放つ。
その上でイランは、カーグ島から米軍が出て行かないなら、NYC、シカゴなどの米本土の大都市・港湾でも「沃素131」を使った同時攻撃を実行するぞと脅す。
米国は「イラン+ロシア+中共」を敵とする「新・三十年戦争」にひきこまれる。これはウクライナ戦争の延長。いわば、ウクライナ戦争が支那事変。
●天国コース
「新・三十年戦争」の結果、世界の「一神教」はすべて衰滅し、あらたに日本がモデルとなって「新ウェストファリア体制」が構築される。
その間、わが国は、地下の炭鉱を地下において「新形態のガス・エネルギー」化してしまうケミカル技術を完成する。
この技術は、日本がそもそもペルシャ湾に関わる必要をなくすものであるから、「広義の国防費」だ。またこの技術は世界の民主自由主義諸国にも提供可能なものゆえ、「広義の世界安全保障貢献」でもある。
●本件につき、特に参考になる論説(原文は英文) 其の一
中国以外のすべての国がこれから考えなくてはいけないエネルギー政策についての、有益なヒントを、キコ・トロ氏が2026-3-6にウェブに公表している。「水圧破砕がハメネイ師を殺害した」というタイトルで。
その要旨はこうだ。
2003年から2015年にかけて、米国内石油掘削企業のフラッキング技術が革命的に進歩した。
結果、アメリカ大統領はジミー・カーター以来初めて、イランとの戦争を恐れる必要がなくなった。もしホルムズ海峡が閉塞されたり、GCC諸国の石油施設が灰燼に帰しても、アメリカだけは困らないので。
イラン戦争が始まったことにより、LNGをペルシャ湾岸から大量に輸入している御三家、中国、インド、韓国は、エネルギー調達コストが高騰し、その通貨は下落圧力を受ける。
アメリカは、国内的にはエネルギー高(=自動車用燃料高)となるので政権が有権者から攻撃されてしまうが、傍ら、マクロ視点では、アメリカ以外のすべての国が長期的に落ちぶれるので、「一人勝ち」を期待できる。
アメリカ以外のすべての国の財政は大赤字となり、借金で切り抜けようともがくことになるはず。
他方、中国は、この事態を予想済みだった。2025-7時点で国内に1195基ものおびただしい石炭火力発電所が稼働しているのは、近年に急に準備したものではない。着々と、こうなる日に備えて、旧施設はしっかり温存させ、加えて新プラントを建設させてきたのだ。総体の稼働率は50%で、多くが赤字操業であったが、エネルギー安保の保険の役割を担い、国としてはそれでOKなのであった。
以下、これについての兵頭の付け足し。
ホルムズ海峡を通過する石油輸出量の37.7%は中国行き。これはどの国よりも多い。中国軍はしばらく前に、台湾近海へ自国空軍機を飛ばす活動をピタリと停止させた。貴重な航空燃料の倹約命令が出されている可能性がある。「ジリ貧」が始まったのだ。むしろアメリカがホルムズ海峡に機雷を撒くことで、中国の経済活動と軍事活動とAIデータセンター増設計画のすべてを一夜にして破綻せてやれる。欧州市場の購買力もなくなるから中共製品は輸出先を失い、輸出依存の中共の経済成長はマイナスになり、中共国内の治安は不穏化する。機雷を敷設したり、中共系タンカーを公海上で無警告撃沈してしまうことについての対外的な説明は、トランプ氏なれば、何とでも可能也。
●本件につき、特に参考になる論説(原文は英文) 其の二
ジョン・コンラッド氏による2026-3-18記事「ホルムズ仮説――もし米海軍がホルムズ海峡の再開を急いでいないとしたら?」
いわく。
サウジアラビアのヤンブーへの東西パイプラインとUAEのフジャイラへのパイプラインを合わせても、せいぜい500万バレルしか輸送できないので、世界経済は、けっきょくホルムズ海峡のタンカー往来なくしては、やって行けない計算だ。
ホルムズ海峡は幅21浬。幅2浬の航路が2つあり、2マイルの緩衝帯で隔てられている。
機雷や地対艦ミサイルや片道特攻無人機や無人特攻ボートによる阻害努力は、イランがその海岸から実行しようとすれば、必ず少しは可能。米軍はそれをさせないようにしようと思っても、完全防遏は無理。
と同時に、それらによる阻害攻撃で、商船通航を完封しようとしても、これまた、無理。
ところが、もしも、民間タンカーに対してどこからも船舶保険がつかない状態にしてやることができれば、いともかんたんに、完全に近い封鎖は、できてしまう。
それは起きた。7つの「P&Iクラブ」が3月5日にペルシャ湾における戦争リスク保険の72時間前解約通知を発した。
これで、ホルムズ海峡を利用する西側系タンカーの海上輸送は当面、考えられなくなった。
世界の外航船の約90%を保険でカバーしている「P&Iクラブ」。この保険がつかない商船を、普通の国の港湾当局は入港を許可しない。銀行は貨物の融資を行わない。傭船者は船を予約しない。
戦争リスク保険料は船体価格の0.25%から1%に跳ね上がり、7日ごとに更新されるようになった。
VLCCの傭船料は4倍に跳ね上がり、1日あたり約80万ドルに。現在、1000隻以上の船舶がペルシャ湾に取り残され、ひたすら傭船料を浪費し続けている状態。
そこでトランプの新政策。米国国際開発金融公社に、海上再保険を引き受けさせる。米国政府が、湾岸海運の最終保険者になろうというのだ。
米政府(=セントコム)が、適格船舶に対し、船体、機関、貨物の保険を随時提供する。とうぜん、中共関係船は排除される。
米海軍艦艇は、30海里以上離れた距離から、護衛する。(コンボイ直衛はしない。それは与国海軍がやればよいという考え。)
EUは、この保険が欲しければ、商船に関するIMOの炭素税を廃止するしかないだろう。米国がいちはやく離脱している枠組み。
世界エネルギー市場は分裂する。
ペルシャ湾では原油1バレルの価格が2ドル、メキシコ湾では20ドル、そしてイギリスでは2000ドルになる。
米本国では、民主党系の州(特に加州とニューイングランド)ではエネルギーコストが上がり、共和党系の州では下がる。
以下、これについての兵頭の付け足し。
私がレジャー感覚やスポーツ感覚で「縦列2輪荷車」を実験・普及させようとしているとは思わないように。これは、原油価格が今の十倍、二十倍になったときに、日本国民の命を救うことになる輸送機械なのだ。その日も近づいているように感じられる。別報によるとベトナム政府(文官系)はこの頃、石油飢饉に直面して泡を喰っている様子だが、ベトナム人民軍は慌てていない。原付だろうと電動バイクだろうとナンボでも国内で製造ができる昨今、彼らがかたくなに「押し歩き式・タンデム2輪荷車」にこだわり続けて、民兵訓練も怠らぬようにしてきた周到な努力は、まさにこういう日のためにあったのだから。