文民統制の形式と実態

 迎撃ミサイルの発射をすると「迎撃した時点で交戦状態になる可能性があ」るので、MDの指揮官にその判断を任せたりすれば文民統制が確保できない「との意見が大勢となった」──とかいう本日のK通信のニュース配信があるんですが、すべて匿名では、例によってホントかウソか人々は判断できないですね。
 これって、誰がそう言っているのか名前を挙げなくて良いほど些細な問題ですかね。少なくとも記者の署名が無いんであれば、この種の記事は「誰かが為にする低級なディスインフォメーションじゃないのか? 事実は、何の責任も持っていない記者の知人の小者による妄想・妄言に過ぎぬのではないか?」等と大いに疑って良いでしょう。
 現行慣習では、領土・領海の上空は、大気圏内であれば「領空」と看做されます。PAC-3は最大射高が1万5000mで大気圏内。しかし水平射距離が対ミサイルで最大4万5000mに達するそうですので、これは領海12浬(22.2km)を超える場合がありえます。さらにMS-3になりますと、公海上から発射して大気圏外で撃ち落とすというのですから、ひょっとしたら韓国空軍機やアメリカのスペースシャトルをMDが間違って撃墜することもポテンシャル上は可能です。ではその場合、日本と韓国、日本と米国は「交戦状態」になるのか?
 ──なるわけがない。相手が誰か分かっていて撃つ者があり、その撃つ者に対して撃ち返す者があって、交戦が生起するのです。北鮮の弾道弾はブースター&サスティナーが切れた段階でフリー・フライトに入り、あとは重力に引かれて落下するだけですから、レーダーでフリー・フライト中の2点または3点を捉えれば、弾着点は即座に算定される。それが日本領内であると分かったら、明白な危害が切迫してるんですから、これを迎撃するのは軍人の任務であるのは勿論、その任務を予め付与しておくのが最高指揮官たる首相の責任でしょう。
 こういうのはROE以前の問題ですが、あとで混乱しないように、ROEはあった方が良いですね。MDも、要はROEをさっさと統幕が作って、それを首相が承認すれば、誰がミサイル発射権を持とうが、誰が核のボタンを押そうが、問題はありません。
 公海を走っている軍艦がいきなり何者かから発砲されたら、司令官または艦長の指揮でその何者かに撃ち返して破壊殺傷して構いません。日本の警察官や海上保安官が外国軍ゲリラから急に発砲されたら、敵の正体がハッキリしない状況でそれに撃ち返して殺して構いません。それで「交戦」が生起しても誰も「文民統制違反」とは言いません。
 日本の「文民統制」の真の問題は、官僚が名目手続き上は合法的に、しかし世間常識的には勝手に始めてしまった「施策」を、政治家が、後から止められないことにあります。止められない理由は、公務員の身分が法律で必要以上に保障されていることにあります。国家公務員の課長補佐(軍隊なら省部の中佐?)以上の身分は保障されるべきではないというのが日本現代史の教訓でしょう。
 外務省や文科省の小役人が衆知の国家叛逆的な暴走をして日本を衰亡させようと企てているのに、選挙で全国民から選ばれている内閣がその首謀者を免職できない。これでは戦前の関東軍と同じです。この法律の一大欠陥に目をつけた反日諸勢力は、まず役所に細胞を送り込み、役所によって日本の国権を減殺しようと画策し、ほぼ成功しつつあるのです。
 軍隊の中佐以上の者をいつでも何の理由がなくとも首相の意向だけで免職できるとしたら、文民統制違反なんて起きるはずがないでしょう。逆に、この人事権が首相にないとすれば、内閣は必ず役所に支配される。外国との交渉もできないし、起きた紛争は永遠に終わらず、国庫がムダにどこへともなく消え、競争力と国力は低下します。
 役人は選挙で国民の支持を受ける必要がありませんから、合法的な反国家活動を最も効率的に遂行できる立場に居るのです。その害悪はK通信社の比ではないでしょう。
 「文民統制」というときに忘れてはならないことは、「宗教家も文民じゃない」ってことです。これは自由主義先進国では常識ですが、日本でのみ、なぜかスルーされています。
 いま、日本の内閣には宗教家の代弁人が混じっています。もし日本の国防国策にこの閣僚が口を出すとしたら、それは文民統制に反する事態です。つまりは憲法違反ですね。
 野暮ですがテクニカルな話に戻して突っ込みを入れましょう。「ミサイルへの燃料注入など発射の兆候が確認できた段階で安保会議、閣議を開いて警告を発し、その上で指揮官に発射権限を委譲す」ることは可能でしょうか? これは前提が間違っております。
 北鮮のミサイルは、ふだんは山岳地帯の横穴トンネル内に、発射車両(TEL/MEL)ごと引き込まれています。それを偵察衛星では確認はできません。そして、横穴トンネルの中で燃料を注入し、それからトンネルから車両が走り出てきます。
 車両は、座標が精密に既知の、上空から遮蔽措置のとられた場所のどこかに占位し、そこでエレクターを仰起させ、発射します。トンネルを出てから数十分です。その数十分の間に日米の偵察衛星が上空を通る可能性は少ない。というのも、敵はその衛星の通過時刻を外して発射するに決まっているからです。
 つまり「発射の兆候」など見えるわけがありません。
 もうひとつ。来年はシナが核弾頭付きの巡航ミサイルの量産に入るでしょう。これが近海の原潜から発射されたら、どうやって「発射の兆候」を偵知できますか?
 ついでにお尋ねしましょう。政府は07年に「民間防衛」パンフレットを配るという。MD配備が07年からなので、それに合わせるわけです。そこで素人質問! もし05〜06年のうちに核ミサイルが飛んできたら、国民はどうしたら良いのですか?
 役人の無責任は今に始まったことじゃないので驚きませんが、国民から負託をうけている政治家がこんなニュースに黙っていちゃいかんでしょう。
 さらにつけたし。アーミテイジ氏が「シナは一つ」と発言しているそうですが、これは彼が閣外に去るのに早速目をつけたシナ・ロビーがいつもの手で「仕事」を与えることを約束しているからでしょう。パウエルと同じパターンです。
 閣内に残る人が何と言っているかに注目していくべきだろうと思います。