航空雑誌には既に載っていたのかもしれませんけども、航空雑誌や船雑誌や戦車雑誌や銃器系雑誌などを読まなくなって久しい小生は、先日届いた『朝雲』第2740号にて、はじめて三菱重工の「心神」の実物大RCS試験模型の写真を拝見し、こんなプロジェクトがあったのだと承知した次第です。
いや、古っ臭ーーー! 20年後にはF-22やF-35だって時代遅れになってるかもしれないというのに……わくわくさせるところが何もない。名折れでしょう。こういうことやってるから「属国」って言われちゃうんですよ。目標が低すぎる。しかも、欧米のメーカーは一目みて「これはモノにならん、宣伝だな」と見切ったのと違いますか。防衛庁や三菱が用意できる資金で最先端の完成品ができるわけないというのが常識でしょう。
記事によると、「先進技術」という名のステルス機体や推力偏向エンジンを「実証」するものだと。で、見た目、F-22のモンキーコピー。しかも全体にF-22より小さいという。
マズすぎるよ。モンキーコピーなら、逆にガタイを本舗よりもでかくしておくのが「後進国」の慎みというものでしょう。そうすれば、将来の改造だっていろいろ、し易いのに。
小さい機体に、どうやって、侵攻任務に必要な燃料を詰め込むのか? また、大型になるはずの初期の国産核兵器をウェポンベイに収納する気はあるのか? 疑問だらけです。スクランブル専用機にでもする気なのでしょうか。最後の有人インターセプターとして。
『朝雲』の記事には信じられないようなことも書いてあります。F-4の後継が「F-X」ですけども、この「心神」はF-Xのさらに次をめざして平成22年から実機開発するという。
これ、本音でしょうかね?
妄想させて貰いましょう。このモデルの意図は2つあるでしょう。
ひとつは、アメリカに「F-22を三菱でライセンスさせてくれないなら、F-Xは完全国産しちゃいますよ」と言える立場を獲得しておくこと。バーゲニングの道具としてでしょう。防衛省の意向です。
もうひとつは、三菱重工の「売り込み」ですよ。
もちろん「心神」を輸出しようってんじゃない。三菱重工そのものを売るのです。アメリカに。合弁もしくは合併ですよ。下請け工場志願。MDと省昇格が「三原則等」に突破口をあけてくれますからね。
それにつけても「心神」をフランスの試験場に運んだりして、アメリカに頼っていないところを見せ付けておかなければならない。これもバーゲンの手。
げんざい、アメリカと西欧はそれぞれ、域内の航空宇宙防衛メーカーをぜんぶ再編統合して、巨大企業体をまとめあげ、そのマンモス企業体の開発体力・販売競争力を以って、世界市場を奪い尽くそうと、躍起になっています。
1980年代にアメリカ企業がハッキリさせてくれた「戦理」なのですが、圧倒的な資本力で開発をした航空宇宙防衛分野のハイテク製品は、世界の市場において「対抗不能性」を獲得できる。競争者がいなくなるのです。外国が後からF-15をコピーしようったって、できない。30年経ってもできない。できるころには世代交代。だから予め統合すればするほど強い、となります。とにかく注入資金力勝負、企業体力勝負になってきた。
これを欧州各国も気付いて、90年代にメーカーをどんどん一つにまとめて、アメリカに対抗し出しました。
欧州は結集するとアメリカより巨大なので、これがかなり手ごわくて、2000年代に入ってからは、アメリカもうかうかしていられなくなってきた。米国内でますますメーカー数が整理されつつあります。いよいよ迫った石油高騰時代に生き残れる、超低燃費旅客機の開発競争もスタートしています。
かたや、日本は「自由を戦って守ることはいたしません」と謳う、反自由主義のマック偽憲法の支配する空間であるために、自由の敵と現に戦っている諸国に対しては武器は輸出できないなどというイカレた縛りがある。それじゃ日本がシナから攻められた際、誰が武器を売って助けてくれるんですかね? まあともかくそれで、典型的な偽憲法的機関である通産省/経産省としては、武器メーカーの統合を指導しようがなかった。インセンティヴ・ゼロでしょう。将来にわたって外国からの注文が取れないんじゃ。しかも大臣がシナの手先だったりするくらいだし。
しかし、来年からは、防衛省が指揮できるかもしれない。「三原則等」の廃止によって。
おそらく三菱の中の人は、それでももう間に合わないと考えているのでしょう。10年後には世界のハイテク兵器開発競争の第一線から完全に脱落してしまうと。
まあ、「アメリカからF-22が買えたらそれだけでハッピー」なんて考えていられるのは、日本の「2ちゃんバカ右翼少年」だけで、そもそも主力戦闘機を自前で開発して装備できない国は、国連安保理常任理事国には1国しかない。そんなの「列外」なのです。主力戦闘機と主力戦車は輸入をしないというのが、戦後世界の指導的「大国」たる暗黙の矜持。
三菱は、「何が大国の恥か」が、わかっているわけです。他方、偽憲法下でずっとシノギをやってきた防衛族議員は、そんなことには一向関心がない。もちろん歴代防衛事務次官も国家公務員試験の受験勉強中から偽憲法にすっかり入信志願してきて、偽憲法の色眼鏡でしか世界を眺めることができません。とにかく国内の誰も頼りにならない。偽憲法の限界です。
まず三菱はF-35のジョイントベンチャーにフルに加わりたいのでしょう。JVの旨みは、「販売」を外国政府に任せられる。日本の頼りない代議士や役人に頭を下げる必要がないわけです。F-35は世界のスタンダードになることがほぼ決定していますから、これは下請けでも単純に儲かる。それに後から参入するには、それなりの技術力を誇示する必要がありましょう。
その次が、アメリカ企業体との「合併」。これは、米国企業体および米国政府の意向でもあるんじゃないですか? 三菱を自陣に加えることで、欧州勢力に圧勝したいという。単純に、資本力勝負の競争になっているのですからね。合併すればF-22の下請けにもなれるかもしれない。
本来なら、日本国内の航空宇宙防衛メーカーの小規模乱立を20年前になんとかすべきだった。しかし偽憲法下で、通産省が束ねられなかった。
三菱としても、もうこのままだと二流武器メーカーに落ちぶれるしかないから、そうなる前に、米国企業と一体化しちまえというわけですよ。
なにしろ偽憲法の下では財務省の役人は国防費を不要支出と考えますから、パイの総枠が不変。そこに、偽憲法ゆえにMDを押し付けられた。MD以外の装備費は激減ですよ。ですので、放っておいたらあと数年で日本の兵器産業は政府発注減から崩壊します。だから「三原則等」は2007年中に廃止されるという流れ。大局を見れば、アメリカは日本にMDを押し付けたことで、日本の防衛産業を買い取れるようになった。
三菱としては意地でも、試験機には手をつけておかねばならない。いちおう、欧系からでも、JVの引く手あまたという体裁でないと、米国企業体に簡単に呑み込まれてしまいますからね。
でも、偽憲法を廃絶しないままで、そういう自由化をやると、けっきょく、三菱も含めて、日本の兵器産業がまるごと、米系企業にM&Aされて、それでお終いだと思うんですよ。
メーカーや経済人こそ、偽憲法の自殺性についてよく考えて欲しい。自由主義経済とマック憲法は、絶対に両立しないのです。それは三菱重工がアメリカ人から乗っ取りを仕掛けられる時代になれば、よ~く分かりますよ。
12月の10日前後にPHPさんから『日本有事』という新著が出ます。これを読んで欲しい。表紙がダサダサで勘弁してくれっていうレベル(日本の話なのにM-1戦車がセンターにあったりして、イヤガラセをたくらんでいるとしか思えんw)なんですが、中身は廃憲論を集中してとりあげていますから、ぜひ表紙ではなく中身を重視して、ご購入ください。
さらに余裕ある人は、この新刊を入手された後で、片岡先生の『核武装なき「改憲」は国を滅ぼす』にも御目をお通しいただきたい。結論は接近していても、そこに至る細かな歴史認識や軍事バランス分析はずいぶん違うということに、きっと驚かれるはずです。(同書116ページの「くだる」は「大命くだる」の誤記でしょうか?)
『朝雲』の記事の中で唯一泣けましたのが、日本初の推力5トン級の完全国産ターボファンエンジン(戦闘機用)が、いつのまにかできていたってことでしょうか。でも、アメリカはさらにその先を行ってますけどね。これから石油もなくなるし。