3月の前半の某日に……

「新風」の魚谷党首が来道されるそうなので、某所で面会する予定です。「廃憲」の方針について直接確認したいことがあるだけですが……。
 ところで、神浦さんのサイトを見ていたら、例のヤマハなんとかの無人ヘリ輸出事件についてマニアックな解説がされていました。
 新聞を一紙も購読せず、田舎に暮らし、テレビも見ない小生は、神浦さんのサイトを新聞ダイジェストとして定期的に見るようにしていますけれども、神浦さんは自衛隊内に「ディープ・スロート」のボランティアをたくさん持っていて羨ましいなという印象を受けたことがたびたびあります。これまで、あっと驚く納得の言及に、何度感心させられてきたかわかりません。(たとえば、潜水艦の舵がタンカーの底に接触してしまう理由は何か、について。)
 これらの解説はもちろんスパイ行為にはあたらず、ジャーナリストの甲斐性であり道義的義務でもあります。というのは恐らく防衛庁詰めの記者は皆知らされているのですけれども、誰もそれを新聞やテレビで大衆に向けて説明しようという気はない。そういう、埋もれたインフォメーションが、無数にあるのでしょう。
 そこで神浦さんのような背景解説を、インサイダーではない読者は望みます。公益を損なう秘密の暴露とは違う。いやしくもジャーナリストならばそうしたオフレコ・チャンネルを持ち、それに基づいて官庁の意図的誘導的な公式発表を補足し補正してやろうと心がけるのは当然です。その努力が軍事外交に限らずすべての報道の分野で集積され続けることで、初めて健全な民主制政治もあり得るのです。が、日本の他の新聞記者やテレビ報道班員ときたら、まず読者/視聴者に背景の説明をしてやろうとなどいう熱意はゼロなわけです。現状では神浦氏だけが例外的にその熱意をもっているように見える。だからわたしは氏の書き込みの中から、他では得られない背景事情の理解の資料を推知できるとうれしいのです。
 ただし無人ヘリの解説は的を外しているように見えます。この報道の背景は、防衛機密に関するスパイ防止法の国会提出のための雰囲気作りを政府が一丸となってしようとしていることでしょう。そこを解説しないと、背景解説にはならぬような気がします。
 たとえばプルトニウム発電の問題を考えるとわかりやすい。日本がエネルギーを自給しようと思ったら、その方法はプルトニウム発電しかありません。しかしそれを政府が大いに推進しようとしても、反日マスコミにたきつけられた社会的な反対が起き、予算もつかなければ必要な法律も整わない。政府が言葉でちゃんと説明すればよいのですが、日本のエリート官僚と政治家と原子力関係の特殊法人役員には、民主制政治に必要な「自己説明力」がさっぱり無いのです。政府はこう思っているでしょう。「とつぜん、石油が暴騰してくれればいい。そうすれば、政府が説明をしなくったって、国民は理解してくれるだろう」と。
 このような日本政府の自己説明力の欠落をカバーしてくれるのが、「とつぜんの石油危機」に匹敵するような「都合のよいタイミングで報じられ、国民を覚醒させてくれる事件」なのです。
 スパイ防止法なんか、つくっておくのがあたりまえなんですが、これままた政府にはそれを国民に平時に理解させる自己説明力はゼロです。
 だから、読売事件とかヤマハ事件のようなささいな古い事件を「タマ」として温存しておいて、チェイニー氏が来日してGSOMIAをつくれと求めてきたような折に、検察からマスコミに「新事件」「捜査の新展開」として一斉に報道をさせるのです。報道させられるメジャー・メディアの側としては、これが政府の対世論の空気づくり工作への加担であって、事件そのものは、象徴性や一罰百戒効果はともかくとして、そんな大げさな意味のあったものでもないことなどは百も二百も承知です。が、記者クラブ経由でしか記事種をもらえないかなしさ、諾々とそれを報じていこうという達観に支配されているわけなのです。
 ネパールへの自衛官派遣だって、もっと背景説明が必要でしょう。これはシナに対抗するためにこれからインドと軍事的に結んでいこうとする、その特務機関づくりでしょう。誰も説明する人がいないようですので、北海道の片隅から、差し出がましく言及をいたしました。