書評だけ読んで再書評

 本日とどいた『SAPIO』誌に、柳澤健氏著の新刊、『1976年のアントニオ猪木』の紹介記事が載っていた。
 1976年6月当時、わたしは満15歳で、プロレスに興味はなく、格闘技ファンでもなかった。しかし、鳴り物入りの前宣伝でTV中継されると聞いた「猪木 vs.アリ」戦では、猪木氏はあぶなくなったならリングに仰向けに寝そべる戦法をとるのだろう――という見当だけは、事前につけていた。
 (さすがに、形勢不利となる前からいきなりそれをやると迄は予測せず。)
 というのは、それ以前に、どこかで読んだプロレス漫画(または格闘マンガ)に、まさにそんなシーンがあって、もっともらしい解説も付いていたのだ。
 レスラー(柔道家?)がいきなり仰向けに寝て強敵を誘うや、打撃系の選手である強敵は、ためらってしまい、まったく攻めることができなくなる、という、少年漫画にしてはヤケに意外な展開……。
 だからこそ、格闘技マニアでないわたしの記憶にもちゃんと残ったのだ。
 わたしですら、それを覚えているのだから、わたしと同じ1960年生まれの柳澤氏は、その漫画について知っていて欲しかった。『Number』の元記者として、当然に調査をいきとどかせていて欲しかった。残念ながら、『SAPIO』の紹介文を見る限りでは、この予言的な漫画についての言及は、無さそうである。
 この漫画の原作者をとにかく確認したいものだ。それは故・梶原一騎であった可能性があるのではないか。梶原氏は試合の流れも全部、考えてやったのではないか。