ソラ棒もいいね

 近くのお宅で屋根の修繕があり、その仕事に来ていた大工の動かしたバンがものすごい勢いで後退して拙宅の柵の丸太をヘシ折った。おかげで9個ならべて光らせていたうちの、2個のそらだまを撤去せざるを得なくなった。女房のやつはせいせいした顔で「ちょうどいいわ」とぬかしおった。わたしのそらだまがガーデニングの美観を損ねているという、かねてよりの意見なのだ。美観と防犯と一体どちらが重要なのか? ……いや、女にこういう話をしても無駄だ。男の責任で黙って実行あるのみだ。
 さいきん、わたしの熱意がメーカーに伝わったのかどうか、近くのホームセンターに、そらだまの交換用の電池が売られるようになり、また、そらだまの新規なラインナップも見かけられるようになった。そのひとつを試用するときがきたようだ。
 わたしは「ニッケル水素バッテリー」という表記にピンとくるものを感じたので、和歌山県の(株)タカショーの「ステッィックソーラーライト シャンパンゴールド2本セット」(SLL-225C)を買ってみた。\2000-もせぬ売価である。竹槍のようになっているから、どこでも地面に突き立てればよい。
 結論。この性能は、合格だ。心細いほど小面積な太陽電池なのにもかかわらず、また、日当たりが不充分な場所に挿してあるのに、深夜の3時過ぎまで、なんとか輝度を保っている。さすがに、朝まで煌々としている「商品X」には及ばぬものの、わずか1年くらいのあいだで、そらだま技術は着実に進歩を見せている。考えてみれば、(株)タカショーは、「マルチムーン」の輸入元じゃないか。
 参院選のあと「2ちゃんねる」の「ニュー速+」がめっきりつまらなくなったと感じたので、ここしばらく、「トキシックジャンクション」のようなあちら系のユーチューブばかりをみていた。それもあらかた再生してしまったから、こんどは長尺モノが豊富(ニュルンベルク裁判の広報映画まである。「軍靴の響き」の原語は「サウンド・オヴ・ブーツ」だったのねんのねんのねん…)な「WeShow」を巡回しているところだが、英国バージョンで見られるビートルズの動画には慨嘆を禁じ得ぬ。
 厨房の頃は、これっぽっちも覚れなかったことが、いまや分かる。このグループは英本国では、無学歴のノイズメーカーとして、エスタブリッシュメントから顰蹙されていた。しかし、DQNが天才をもつこともある。デビュー直後の1964年頃と、解散後の1972年頃を比較すると、ポール・マカートニーの外見に9年間で蓄積されたのは、ジャンキーの度合いだけである。スチルやジャケ写と違って動画では彼は、白痴としか見えない。しかし、そのジャンキーの頭のなかから、さらにバンドオンザランが出てきた。きっと左利きのモーツァルトも、リアルではこういうタイプだったからこそ、生前は不遇だったんだろう。4人の中で普通の口がきけるのはジョン・レノンだけである。彼がリーダーとしてチームを引率し、女王の前で熱唱しているのはあまりにも自然だ。そして彼が自作しリードヴォーカルをとっている全盛期の曲の数々は、彼が正気でアヴェレージな右利きの地頭をもっていたことを思いつつ聴けば、これまた奇跡的な天才の仕事であったと言う以外にどう評し得ようか。われわれは奇跡を聴いたのだ。