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 Thomas Pinney 退役海軍大佐による2018-8『Proceedings Magazine』寄稿記事「UAVs: Before Fire Scout There Was DASH」。
    DASH(Drone Antisubmarine Helicopter)は758機製造されたが、米海軍での現役期間は10年に満たなかった。対潜魚雷の他、B57核爆雷も投下できるロボットヘリだった。
 なぜこの発明品は失敗におわったのか。
 当時、アスロックは1万ヤード先へ投射できた。しかしソナーの性能が上がってきて、駆逐艦からもっと遠く離れた海域でソ連潜を探知できることもあった。
 カマン社はまだ有人の軽対潜ヘリ SH-2(ランプスのマーク1となる)を完成していなかった。つなぎが必要だった。しかも、なし得れば、大量にストックのある旧式小型駆逐艦の後甲板を有効利用できるサイズのものが。
 NY州のジャイロダイン社は、ベンディックスの1人乗りヘリコプターをすでに無人機に改造していた。海軍はこれに着目する。
 メインローターが二重反転式なので尾部ローターが要らない。このスタイルは安定していてリモコン向きであり、狭い甲板でも扱い易い。
 マーク44対潜魚雷の他、核爆雷も運用できる仕様だが、海軍の記録では、ダッシュが核爆雷を運んだことは一度もなかったようである。
 DASHを発艦させるには、エンジンをフルパワーにしたあとで、ホールドダウン・ケーブルをリリースする。
 発艦時のリモコンは後甲板から目視でするが、飛翔開始後は、CICルームにて、対水上レーダーの反射画像をモニターしながら操縦する。
 しかし初期のQH-50(=ダッシュ)のレーダー反射は弱く、にもかかわらず、トランスポンダーを搭載していなかったので、CICルームからの操縦は相当に困難であった。
 データのフィードバックが一切ないということは、CICルームの操縦者は、DASHのげんざいの対地速度、高度、向かっている方位を、数値で報告されることはないということ。アナログのレーダー輝点の移動を白色グリスペンでなぞりながら、推測するしかないのだ。
 ケネディ大統領は、1963年後半に、ダッシュから対潜魚雷を投下する訓練を視察している。
 そこから全艦隊への普及が始まったが、1969年には、ダッシュは放棄された。
 米海軍はダッシュを400機以上も、運用中に喪失している。
 じつは1960年代の米海軍内にても、艦政本部系と航空本部系は対立していた。ダッシュの部品は艦政系統が調達していた。それが部品の故障率を著しく高くした。
 加えて、航空系の幹部たちも、ダッシュを冷遇した。海軍において航空系の主流は、「空母派」である。彼らにとって、空母だけが優遇されるべき対象だった。ダッシュが空母の近くをフラフラ飛びまわったり、操縦電波によって空母の無線に干渉が起きることを、彼らは嫌った。
 駆逐艦が空母から十分に離隔していた場合のみ、ダッシュを使った対潜訓練が許可された。
 ベトナム戦争中、駆逐艦長の関心もASWには無かった。
 機関科員たちは、ダッシュが逸走した場合にそれを回収するために4基のボイラーを駆動させねばならぬことを心配していた。
 ダッシュは、通信が途絶した場合は、その場で低空ホバリングを続け、通信回復を待つ仕様になっていた。
 だがじっさいには、あてどもなく逸走し去ることがしばしばあった。
 1965年には、ダッシュに偵察用のビデオカメラが装置され、かつまた、テレメトリー送信機がとりつけられた。これでようやくリモコン操縦者は、ダッシュの現在の速度や高度を逐次に正確に知り得るようになった。
 このように改造されたものは「スヌーピー」と呼ばれ、ベトナムの沿岸偵察および、対地砲撃時の着弾観測機として用いられた。
 ベトナムの陸地で撃墜された味方パイロットをレスキューする道具として QH-50 が使えないかどうか、検討されたこともある。
 ソノブイ投下、チャフ撒布、スペアパーツ配達の機体として実験されたこともあった。
 解役の後、DARPAが、夜間用ビデオカメラ、レーザー照準器、そして機関銃と投下式の手榴弾を、DASHに装備してみたこともある。
 もっと後には、スティンガーSAMの訓練標的曳航機、もしくは標的そのものにされた。
 現在のMQ-8Bファイアスカウト無人艦載ヘリとダッシュを比較すると、主ローター回転面積がダッシュの方が小さいことは目を惹く。ペイロードも、DASHが上回っているが、滞空時間はファイアスカウトの5時間に比して1時間と、あきらかに劣る。速力も倍ちがう。
 だが、価格の上ではダッシュが断然に安いのである。これをどう考えるか。
 なおMQ-8Bはもうじき、ひとまわり大きなMQ-8Cにひきつがれるはずだ。