全米ががっくりした ホームレス・アローン(Homeless Alone)

 CLEVE R. WOOTSON JR. & KRISTINE PHILLIPS 記者による2018-8-25記事「They raised $400,000 for a homeless vet – who said they spent it on vacations, casinos and a BMW」。
   ケイト・マクルーアはフィラデルフィア市内で高速95号線から一般道へおりるランプの途中でガス欠に陥ってしまった。
 そこに、ヤク中でホームレスの乞食、ジョニー・ボビットがいた。ボビットは元軍人である。
 ボビットは、車のドアをロックして待てと言い、物乞いで集めた手持ち金20ドルを使ってポリタンク入りのガソリンを買ってきてくれた。
 その後、マクルーアは乞食に礼をせねばならんと思い、捧状に固めたシリアルや冬用の靴下、小銭などをボビットにめぐむ。
 しかし、ネット上でまとまった資金を集めてボビット氏に人生をやりなおしてもらう支援ファンドを興したらもっと善いのではないかと考え付いた。ボビット氏ならそれを受ける資格はあるであろう。
 マクルーアの同棲人、マーク・ダミコ(自宅一軒所有)が義捐ファンドの立ち上げ事業を手伝った。
 彼らはせいぜい1万ドルも集まれば御の字だと考えていた。
 ところがWP紙などが美談としてこの話をとりあげたものだから、とんでもないことになった。ちょうどホリデイシーズン前で、「グッドモーニングアメリカ」が宣伝してくれたり、BBCも取材をして、すっかり全米規模で有名に。
 それから数ヶ月後には、ファンドには約1万4000人からの醵金40万ドルが蓄積されたのだ。
 昨年秋、マクルーアは言った。ボビットに家と、彼の夢のピックアップトラックであるという1999年型「フォードレンジャー」をプレゼントするつもりだと。
 ボビットの方は、彼がホームレスだったときにいろいろと助けてくれた個人や団体に対し、寄付をしたいと考えていた。
 ところがマクルーアとダミコがボビットに与えたのは、家ではなくて、1台のキャンピングカーであった。しかもその所有権はマクルーアとダミコにあって、駐車している場所も、ダミコの親類の所有する土地。
 さらに二人組は、テレビ、ラップトップPC、携帯、衣料、そしてSUVの中古車もボビットに与えたのであるが、このSUVはすぐに故障してしまった。
 現金はボビットの名義口座には入っていないため、ボビットはその40万ドルにアクセスできない。
 ボビットは当初弁護士には相談せず、フィナンシャルアドバイザーに相談した。
 ダミコいわく。現金はまだ20万ドルが残っているが、ボビットがマリワナ中毒から抜け出して正業に就くまでは渡せぬ。
 マクルーアはニュージャージー州運輸局のしがない受付嬢である。ダミコは大工である。しかるにとつぜん、彼女はBMWの新車を購入した。カップルは休暇をとってフロリダ、カリフォルニア、ラスヴェガスを旅し、ボビットはヘリの操縦を習ってグランドキャニオン上空を飛んだ。
 ダミコがヴェガスにおいて幾ら使ったのかは、ハッキリしていない。
 ボビットも麻薬と縁が切れていない。ドナーの義捐金の一部は、確実に麻薬の密売人の収益に化けた。
 ボビットはその後、弁護士を雇った。
 このネット寄付集めの枠組みを提供したのは「GoFundMe」という既存のサイトだが、同サイトにとって本件は、最大の醜聞になってしまった。
 ある内部告発専門サイトの管理人氏いわく。
 ネット上ではプロ詐欺師が、毎日、数十から数百のいんちき義捐金ファンドを立ち上げて、寄付を呼びかけています。たとえば癌治療のカネを集めたいと言う企画者に向かって「最近の診断書を見せろ」と求める人は、いないでしょう。
 それと、善意でファンドを立ち上げたのだが、本人たちに財産管理の能力がなくて、大金を無駄にしてしまうケースも、多々あります。
 ボビット氏のケースの場合、マクルーアにはヤク中患者を立ち直らせる方法について何の知識もなかったことが問題です。どれほどの資金を集めたとしても、ヤク中患者を一晩で立ち直らせることなどできないのです。
 分別のある人は、寄付をする前に、寄付金が正しく必要な人のために役立てられ、ふさわしくない人々の私腹は肥やさないことを、まず確かめねばなりません。それには、会計管理の実態をチェックすることが有効です。支出の細目までが遅滞なく公開されているかどうか。
 ボビットは現在、再びホームレスである。そしてひきつづき阿片中毒者である。ボビットはいまだに、集まった寄付金にはアクセスできていない。自分の名義の口座には振り込まれていないから。
 そしてマクルーアの車がガス欠になったあのランプで、当時と同じように、物乞いを続けている。
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 2018-8-26記事「China’s Navy Is Studying the Battle of Guadalcanal. Here’s Why It Matters」。
   40年間も実戦をしていない大国の軍隊というのはめずらしい。中共軍のことだが。
 ガダルカナル方面作戦で日本は艦船38隻、航空機700をうしなった。じつは米側も同じくらいに損失しているのだが、米側はそれを補充してなお余りある国家の総力を有していた。日本にはなかった。
 中共海軍の公刊雑誌が2017-12月号で、ガ島戦をとりあげた。
 MIでの敗報が正確に伝えられておらず、アメリカの生産力を過小評価し、攻撃主義に囚われていた。
 航空偵察が不十分。
 雑誌は、ヘンダーソン飛行場を早期に米側が確保し、日本の空母はそれに対抗できず、遠すぎるラバウル基地から飛んだ日本の戦闘機はガ島上空に十分なエアカバーを提供できなかったことを重視。
 日本陸軍は夜襲に自信を持ちすぎていた。
 日本陸軍は固有の支援重火器が非力過ぎ、にもかかわらず、艦砲やCASには頼らない主義だった。
 準備火力が無さすぎたのである。
 陸軍の総攻撃は企図がバレバレで奇襲にならなかった。
 部隊を蝟集させすぎていて、米軍火力の餌食にした。
 第一回攻撃は、兵力が少なすぎたが、増援が来たときには、米軍陣地の防備火力も倍増していた。
 日本陸軍に対する補給は悪すぎた。と同時に、米軍の後方兵站を攻撃するという着眼も持たなかった。
 日本海軍は目視を重視したので、日本の戦艦の艦橋は異常に高いのである。 陸戦では米軍の戦車が大いに働いてくれた。
 ※この既視感は何かと思ったら、要するに『失敗の本質』等の日本の古~い文献の受け売りですよね? 連中が数十年前の認識レベルで新しがっているようだと知られたのは一収穫だ。
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 Kelsey Atherton 記者による記事「Who will mass produce the first lethal drone?」。
 ウクライナ戦線では、低価格のドローンが、クォッドコプターから、固定翼型に、シフトしている。ロイタリングして突入自爆するタイプ。
 ことしの4月後半には1機のDJIのクォッドコプターが爆発物を投下している。よって、まだ廃れたわけではない。
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 Liu Zhen 記者による2018-8-26記事「China ‘developing electromagnetic rocket with greater fire range’」。
   レールガン類似の電磁推力で投射して初速を与える地対地ロケット砲を、チベット国境用に、中共軍が開発している。
 射程は未公表だが、200km以上になるだろう。チベット領内からインド軍を叩く。
 中共軍の保有する、直径30cmの地対地ロケット弾は、150km飛ぶ。
 標高4000mからこのロケット弾を発射すると、空気密度は海面の半分なので、空気抵抗は少ない。よって射程は延びる。
 そのかわり、ロケットの尾翼で姿勢を安定させることは難しくなってしまう。したがって着弾は相当にバラけることに。
 そこで、電磁カタパルトによって初速を与えてやることにすれば、正確さと射程の両獲りができる。
 ※電磁カタパルトのメリットとして、加速度を微調整できるので躯体を破壊してしまわずにすむというものがあったんだが、米空母へ実装したものはそうはならず、射出時に機体各部を傷めるらしい。ロケット弾も、筒体を高額な炭素繊維製か、頑丈なスチール製に変えるぐらいの強化が必要なんじゃないか?