もしブッシュプレーンが自由に飛べないのならば、「飛ぶ車」が発明されたとしても誰も買わない。

 したがって誰も開発を考えない。
 空の分野では、法制をなんとかしない限り、技術も日本では発展しようがないのだ。
 次。
 Stephen Blank 記者による2018-9-4記事「Russia’s Vostok-2018: A Rehearsal for Global War?」。
      9月11日から15日まで実施される「ヴォストーク2018」大演習は、1981年の「ザーパド(西方)1981」演習以来の規模になる。
 露兵30万人と中共兵3200人参加。モンゴル軍も。
 これほどの大規模演習をする理由は、露軍がいつでも急速総動員をともなう本格大戦争ができるよう、民間人と、地方の役所等も含めて全組織に、活を入れることにある。
 かつての「ヴォストーク2010」は中共を脅しつけるためのシベリア核演習だったが、こんどは中共兵を混ぜてやることによって敵対関係がないことを宣伝する。誰に対する宣伝か? もちろん対NATOだ。
 ロシアはもうじき「スホイ35」も中共に売ってやる。これらによってモスクワ政府はNATOに対し、欧州戦域で開戦した直後に中共を使嗾してロシアの背後を撹乱させようとしても無駄だぞと宣伝しておきたいのだ。
 ロシア側には、事実上の「露支軍事同盟」を結んでおきたいという強い動機がある。
 2012-12発足の安部内閣は露支間に対立緊張があることを前提としてモスクワに粘り強くさまざま秋波を送り続けた。しかし日本がロシアから引き出せたものは5年間、遂に何もなかった。こうして「ヴォストーク2018」が、日本の希望も目に見えるように打ち砕く。
 日本政府は、露支がほんらい似た者同士であり、日本に都合よく対立などしてくれないという現実を受け入れる必要がある。安部内閣の対露構想は、アマチュアたちの夢想に立脚していたのだ。
 豪州などアジア諸国もこれからは「露支一体」を前提として国防国策全般を検討し直す必要があろう。
 ※習近平が弱気になっている。露・支は「宣伝重視」という「癖」では相似ているのだが、その中味には大きな差異がある。簡単に言うと、露軍はじっさいに戦争ができる。アメリカ向けのフェイク宣伝をしていないリアルの「使える」秘匿戦術も持っているのだ。ところがシナ軍は、じっさいにいかなる戦争もできない。徹頭徹尾、フェイク宣伝とフェイク装備とフェイク軍隊しかないためだ。その現実に熊プー(習近平)はさいきん、気付かされた。それゆえ、対米関係が緊張するや、露支間の「気分」の優劣が、たちまち露側に優位になった。平時にシベリア経済を労働者の人海で侵食していても、そんなのはシナ軍の「張子の虎」性をいささかもカバーしてくれない。労働者は脅されれば国家を裏切る気満々なのだ。
 ロシアは、《NATO軍がシリア沖で「毒ガス空襲」を準備している》――といういつもながらの偽ニュースをでっちあげ、アサドがシリア人民を毒ガスで攻撃する口実を用意してやっている。
 例によってプーチン周辺ロシア人特有のパラノイアと虚言症のミックスだが、さいきん、露軍は「NATOを抑止する」という名目でイドリブ市の総攻撃のために北海からも黒海からも軍艦をシリア沖にかきあつめている。ゲリラの潜む市街地に向けて「カリブル」でも乱射させる気なのか?
 そうではない。
 この露海軍の動きは、じつは「ヴォストーク2018」の一環なのだ。さすがに燃料代その他に余裕のないロシア海軍は、全艦隊を極東に集中させる予算など捻出できそうにない。それでやむなく、海軍の大規模動員訓練だけは、シリア沖で済まそうというつもりなのだろう。
 ただし、集中した艦隊は訓練後にまとめて黒海へ移動させ、ウクライナでまたもや新攻勢を始める算段かもしれない。ウクライナでの陸上作戦中、艦隊は、アゾフ海を海上封鎖するのだ。
 もちろんその封鎖は、核の先制使用をチラつかせた対NATOの脅迫を伴う。その「核脅迫」の事前演練が、地中海東部で、見物のNATO海軍相手になされるはずだ。
 このように「ヴォストーク2018」はけっして地域的演習ではない。全地球的な、核兵器運用も包含した大戦争の予行であり、21世紀のプーチン流の瀬戸際外交なのである。
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