正直、「FMいるか」よ、ありがとう!

 このコミュニティFMのアナウンサーたちの田舎の大学生的な喋り方は正直従来わたしの耳には苦痛であったのだが、このたびの真っ暗な停電期間中(わが街区に限れば、2018-9-6日の未明3時15分頃から、翌7日の午前8時47分までの約29時間半)、いちばん役に立ったメディアは、ポータブルラジオにて聴取できた「FMいるか」であった。
 遠くの地震に起因する長時間停電に陥った地域住民がとりもあえずいちばん知りたいと思っていることは何か? 震度の見直しでも、震源が活断層かどうかでも、閣僚や気象庁の誰彼の公式発言でもありはしないのだ。
 そんな腹立たしく無益な古情報をLP盤の終末トラックのように漫然と繰り返してくれる放送局ばかりが多かった中で、わが函館山の「FMいるか」放送局は、「復旧変電所情報」「通電再開街区情報」「信号再開道路情報」「給油営業中のGS情報」「営業続行中の食料品店情報」「閉鎖病院情報」等を、主に住民や関係者からのタレコミ情報に基づいて(裏は取らずに)逐次に速報してくれた。後半に至り、同局が契約しているフレッツ光の回線が7日朝4時半にダウンし、インターネットSNS配信は断念されたようだが、携帯電話のボイス通信等で収集は続けられたと察する。
 こうしたコミュニティFM局の電界強度は平時からもっと強くしてもいい。特に災害時には出力を上げられるような準備と法規が必要である。発動発電機の燃料が尽きた南茅部~椴法華方面の僻地中継局が数時間にして早々と停波したらしいのは、じつに気の毒であった。僻地こそ電波情報が必要なのに、これでは社会的使命は果たせない。
 停電が実は全道ブラックアウトだと分かった昨日時点ですぐ考えたこと。
 これは米国発のリーマンショックに準ずる経済的な大災厄である。
 よって、消費税増税はもはや許されなくなった。
 ぎゃくに「復興国債」の発行を検討しなければならないだろう。
 十数年にわたり、女房から馬鹿にされつつ、非難されれつつ、さげすまれつつ続けてきた、戸外におけるLED灯設置実験の意味が、ようやく理解してもらえたのは、嬉しかった。
 これからインフラが復旧すると、北海道じゅうの懲りた人々が、LED懐中電灯を購求せんものと、電気店に殺到するかもしれない。
 各種の懐中電灯をランタン代わりに一晩中点灯してあらためて確認できた所見を記す。
 プッシュボタンスイッチでON/OFFする型式の安物LED灯は、放置しているうちに接触不良を起こして消えてしまう率が高い。
 スライドスイッチ式、または、胴体をねじってON/OFFする型式の、売価1000円弱~2000円弱のスイッチ方式のものが安定していると実感した。電池は、単三を1本か2本使うものが、補給面でいちばん安心ができる。
 単3は、スマホ用のモバイル充電器に装填する電池だから、非常時を想像できる、こころがけのよい人なら、多数のストックを保有している。
 ガスカートリッジ式の卓上コンロは、とても重宝する。冬場だったら、これが文字通り、命を救うだろう。
 家族で朝飯~昼飯代わりに一人2~3個のアイスクリームを食べるときが来るとは思わなかった。長期停電となったら、冷蔵庫の中の冷凍食品から、とっとと始末をつけて行く着眼が必要なのだ。他方、常温保存が利く食品は、最後の命綱として、残しておく。
 長時間停電からの復旧後、最初に急いでやらねばならないのが、冷蔵庫内の大清拭だ。ハイターを使わないと、カビが大繁殖するはずだ。……というわけで、我が指先は今、非常に痛む。爪の隙間に塩素が入っちまうんだよね。
 近所のスーパーマーケットの中には、6日のひるま、店の前の駐車場にて、冷凍食品をすべて無料で配布したところがあった。ぼやぼやしていると融けて腐ってしまうからだ。
 彼ら従業員にもこれから、大清掃の一仕事が待っているはずだ。
 陸上の冷凍設備が使えないのでは、地元の漁船だって出漁しない。
 しかしわたしは「こんがり焼き鯵」の干物をストックしていたので、影響ほとんど無し。
 このような大規模長時間停電では、温泉専用施設だけはでなくて、自家発電機がある大きなホテル付属の浴場もダウンするらしい。これは勉強になった。
 必然的に開眼したのが、「水シャワー」の浴び方である。
 まず、びしょぬれのタオルで全身を拭い、ついで、頭を洗う。そのうちに全身から発熱してくるゆえ、最後は冷水の直噴にも堪えやすくなる。修行者の気分になる。しゃがんで洗うのがコツと思った。そして、夕刻前の明るい時刻に済ませるのが安全也。
 家庭用の風呂用の湯沸し器は、燃料は灯油ゆえホームタンクにふんだんにあるのだけれども、その運転には100V電源が必要な仕様であるので、停電中はまるで使えなくなる。
 北海道の地場メーカーよ! 電力は一切必要としない灯油燃焼式の家庭用給湯機の開発を急ぎなさい!
 さもないと、今回懲りた道民は、プロパンガス燃焼式の家庭用給湯機材に、乗り換えるだろう。個人的には、それでもいいんだけどね。
 女満別空港は、発動発電機用の燃料が涸渇して、6日のうちに運用をギブアップしてしまったとラジオで聞いた。
 安いからといって重油を燃料にしていたのか?
 もし今次の災厄から彼らが教訓を汲む気なら、空港の発動発電機は、燃料を「ジェット燃料」に統一しておくべきだろう。さすれば、航空機に給油するための容量の大きな燃料タンクの残量がある限り、飛行場の機能を維持する電力も保つはずだからだ。
 ブラックアウトの危険が伏在することがわかった北海道に限っては、ドラスティックな「燃料行政」の見直し指針も必要と思う。
 北海道用版のディーゼル燃料として「灯油」を普及させるべきだ。
 発動発電機も、ディーゼル乗用車も、トラックも、そしてビル用暖房、戸建住宅用暖房も、基本的に「灯油」かLNGにする。
 燃料の「灯油での統一」は、米陸軍が世界的にやっていることである。彼らはトラックのディーゼルを、ヘリコプター用の灯油(ジェット燃料)で回している。それで、何の問題もないのだ。兵站がとても単純になるので、車両を動かすときの灯油の仕事効率が軽油よりすこし悪くても、補給コストの低さでペイしてしまうのだ。
 北海道もその方針を採用すれば、将来、冬に大停電や大災害が起きたとき、内地から灯油だけを補給すれば、人々は助かる。
 「デマ」が流れたのは新鮮な驚きだった。6日早朝に「本日午前10時で断水する」とかいう流言が広まった。配水施設は標高の高い所にあるし、ウチは平屋なので、理性では、上水の水圧の不足はないはずだと思いつつ、それでも万一に備えねばと、「水溜め」大作業に励んでしまった。
 さっきPCのメールのフォルダーを開けたら、モノやカネを送りましょうかというご提案を多数いただいており、甚だ恐縮した。
 せっかくなので、停電中でも(モデムやルーターを必要としないで)メールを受信したり送信できる機能のついているモバイルPCの中古品でもあったら、何台でも貰います。
 拙著『空母を持って自衛隊は何をするのか』の中でさまざまに提言した防災上の着眼に関し、今回、特に修正の必要を感じたことはなかった。
 しかし、付言したいことは、おかげさまで、たくさん思いついた。それらはまた、ぼちぼちと語って行こう。
 とにかく皆様、ありがとうございました。当方、無事です。