ことしは小吉のはずだったが超吉になるとは……。/はぴべえ(HAPPY兵衛)。

 記事「The 1949 Revolt of the Admirals and Victory at Sea」。
  米国史上、文民政府に対するプロ軍人のもっとも露骨な反乱が1949に起きた。
 この事件の引き金は、1947の空軍独立によって引かれた。
 1945夏。対日戦争は米海軍の勝利であるのに、新聞紙的には原爆の手柄になった。米海軍の不満のはじまりだった。
 『NYT』もVJ-Day論説で、エアパワーによる勝利だとした。海軍提督は、ゆるせないと思った。
 海軍に言わせると、ミズーリ号上で日本の降伏を接受するべきはニミッツなのであって、マックではないはずだ。しかるに田舎人のトルーマンは東部エリートのニミッツを名誉から遠ざけて田舎出身のマックを贔屓した。
 1947年の国家安全保障法。これによって「戦争省(陸軍省)」と「海軍省」が消え、海軍は独自に予算を要求できなくなった。
 「国防省」が、陸軍、海軍、空軍の予算を一括して仕切ることになった。
 陸軍航空隊が空軍になった。だから空軍は陸軍の分身である。空軍将官の多くはウェストポイント卒なのだ。
 陸軍と空軍が対立することはあっても、将官同士の気心は知れている。
 ベルリン空輸も空軍の手柄になった。冷戦は、米海軍の存在感をますますなくするようだった。
 超空母『ユナイテドステイツ』は、1949-4-18にニューポートニューズで起工された。が、数日後に、国防長官ルイス・ジョンソンによってキャンセルされた。
 なぜエセックス級の2倍ものサイズにする必要があったのかというと、当時まだかなりの重さであった核爆弾を吊るした爆撃機を空母から発進させるためには、滑走距離が長くなければいけなかったのだ。核運用可能な空母を持つことで、海軍は空軍と予算権力を張り合える。
 しかし空軍と陸軍が超空母予算に反対したのは当然だった。そんなところに巨額の予算が使われたら空軍と陸軍の取り分がガックリと減るのだ。
 国防費そのものが、1945から1949のあいだに十分の一に削減されていた。
 そしてトルーマンにはそれでも不満だった。国防費110億ドルだけで1949国家予算の30%に近いのだ。他の政策に使える予算が喰われている。
 スーパーキャリアーのキャンセルは、もちろん統合参謀長のオマー・ブラドリーも賛成である。
 ここにおいて海軍提督たちがブチキレた。
 そしてシビリアン・コントロールに公然と叛旗を翻した。
 海軍部内で書かれた弾劾文書がひそかにマスコミに渡された。その文書は、ジョンソン長官と空軍最高幹部らが腐敗していて、公務員として不正だと非難していた。
 ルイス・デンフェルド作戦部長以下、海軍の最高幹部が議会公聴会に呼び出された。海軍将官たちは大いに弁じた。シーパワーを無視するな、と。
 しかしこれが概ね不評だった。ブラドリーは、海軍のやり方は恥だと言った。
 下院軍事委員会も、海軍による非難は理が無く失当だと結論。作戦部長(軍令部長)は即刻馘になり、他の数名の提督たちは早期退役を強いられた。
 政治戦略の大失敗を痛感した米海軍は、1952に、テレビシリーズの『ヴィクトリー・アット・シー』を制作・放映させた。納税者にして有権者たる大衆に直接、シーパーワーの意義を啓蒙することにしたのだ。
 これが、大当たりであった。
 提督にしてハーバード歴史学教授のサミュエル・モリソンの監修した公式米海軍戦史に準拠した、第二次大戦ドラマ。全26回。
 このシリーズ企画は、エミー賞などを総ナメにした。
 音楽は、ミュージカル巨匠、リチャード・ロジャースの作曲である。
 この番組は全米の視聴者に、第二次大戦とは米海軍の戦争だったのであり、第二次大戦に勝ったのは、わが米海軍だったのだ、と信じさせた。
 全26回を通じて、陸戦にスポットを当てている尺は、トータルで1分にも満たない。
 その第25回、沖縄ではバックナー中将が戦死する大激戦となった。こんな陸戦を東京まであと1000マイルも繰り返せるか? だから海軍なんですよ、とドキュメンタリーは訴えた。
 空軍から「宇宙軍」が分離されると、同じ騒動が起きる可能性がある。
 ※その予想を知りたい人は『米中「AI大戦」』を読もう! アマゾンで予約が可能です。
 次。
 Peter Fairley 記者による2018-12-12記事「China’s losing its taste for nuclear power. That’s bad news」。
    中共の総発電量に占める原発の比率は今年、24%に増加した。
 しかし風向きが変わってきた。原発はどうも高額すぎると政府は思うようになってきた。そして民衆も、原発を望んでいないのだ。
 2011の福島第一原発事故がずっと響いている。2017-8の世論調査によると、シナ人民の40%しか、原発建設には賛成していない。
 またブルームズバーグの報道によれば、風力とソーラーによる発電コストは、今では原発より2割安くなっている、と。
 2000年代の中共圏内電力消費は年に10%づつ増加していたから原発を建設しなくてはどうにもならなかったが、今では電力消費は年率4%未満しか伸びていない。
 だとしたら新規原発は無しでもよい。
 福島第一原発事故の北京への衝撃は水爆級だった。類似の事故がもし中共内の原発で起きれば、中共体制は全人民から見限られ、易姓革命につながると真剣に惧れられた。
 福島事故のわずか数日後、全中国の原発建設を、すべて凍結することが命じられた。そして、数ヶ月かけて安全対策が審査された。結果、将来の新プラントは、より安全面で進化した設計にしなくてはならなくなった。
 だが人民は納得しない。
 香港の東に位置する「南?」市に建設予定だった新原発は、2013に住民の反対運動で計画が取りやめられた。
 連雲港に建設予定であった核燃料再処理プラントも、地元民の大反対により、2016に初期工事が中断されたままだ。
 中共中央は、原発施設の建設の前にパブリックヒアリングをしろよと指導した。
 2018-6に米国設計の新原発AP1000が中国内で運開した。福島第一原発は発電機が津波で冠水して電源喪失し、冷却水ポンプが動かなくなってメルトダウンしたのだが、この新原発は炉心よりも高いところに水プールが置かれている。重力によって給水が可能なので、電源なしでも冷却は続くという売り文句である。
 そのかわり、建設コストが高い。AP1000×2基で76億ドルもかかってしまった。これは中国におけるそれまでの原発の建設コストの2倍である。
 このAP1000をてがけたCGN社ですら、同時にリニューアブル発電システムに巨額の投資をして、ヘッジをかけている。安全で安価な新原発ができるのかどうか、中共の原発メーカーも自信が持てないのだ。
 ※「なぜ艦船自前の発電機をすべて水線下の低い層に置く必要がある?」……ナショナルジオグラフィックのサルベージ番組を視ていて沸いた疑問だ。発電機室が冠水すれば発電機は使えなくなる。発電機が使えなければ排水ポンプが動かない。照明も真っ暗のまま。……ダメじゃん? それじゃ浸水からの自力回復不可能でしょ? 福島第一原発事故の再現でしょう。最初から設計思想に欠陥があるんじゃないの? バルクヘッドがあるから発電機室には浸水しない? 近年誰がそんなセールストークを信じるんだっつーの。最低1基の発電機は、上甲板近くに据えておくべきでしょう。
 次。
 ストラテジーペイジの2018-12-12記事。
   露軍は「オルラン10」UAVの新型バージョンに、最大100kmの携帯電話を不通にしてやれる電波妨害装置を搭載した新システムを使い始めた。「RB-341V」または「Leer-3」という。
 ウクライナ軍は、部隊通信として携帯電話がとても便利だと思っている。中継塔がたくさんある戦場では、確かにそうなのだ。が、露軍の電波妨害があると、話は別となる。
 「オルラン10」は自重15kgだが、固定翼機なので、最大6kgのペイロードを載せられる。
 ガソリンエンジンで、空荷ならば16時間滞空可能。
 3機で1システム。その1システムの値段は50万ドルくらい。
 発進はカタパルトにより、回収はパラシュートによる。露軍では2012年から使われ始め、着実に性能を向上させつつある。
 次。
 Roger McDermott 記者による2018-12-12記事「Moscow Deploys Latest Electronic Warfare Systems in Kaliningrad」。
      ロシアは「サマルカンド」という名の強力な通信妨害システムをカリニングラードに持ち込んだ。
※孟晩舟の逮捕をトランプが知らなかったなどという与太記事を散見するが、一瞬でもその記載を信じたあなたは外交官には向いていない。米支の要人会談時には必ず、双方が何か「奇襲いやがらせ」を発動せしめて臨むのが、普通のことなのである。米ソ冷戦時代からの長い伝統ある「作法」のようなものともいえる。それはたとえば核実験であったり、新型戦略ミサイルの発射であったり、秘密のステルス機のデビューフライトであったり、スパイの一斉摘発であったり、会見場に2時間遅れて現れることだったり、あるいは一切報道されない何かだったりするが、とにかく会談している相手の困惑する顔を見て楽しもうというゲームなのだ。そこで困惑した顔をした側が、貫目が下がるという次第である。