ケーブルじたいをコンピュータにしちゃ いかんのか?

 Kyle Mizokami 記者による2019-3-5記事「DARPA Wants to Turn Sea Life Into a Giant Submarine Detection Network」。
        DARPAの新しい研究テーマ。
 海中における、魚、エビ、顕微鏡サイズの植物プランクトン等の動静をモニターすることにより、敵潜水艦を探知できてしまうのではないか?
 宿存水中生物センサー=PALS と称する。
 たとえば、巨大魚のタマカイ(ハタ科)。大きな声を発して警告する魚である。もし近くを潜航艇が通過したなら、やはり、啼くであろう。そのときの特徴的な音声をパッシヴ・ソナーで収集して解析したら、特定海域の潜水艦の存否を察する手掛りとなる筈。
 開発チームを率いているレイセオン社が注目するのは、テッポウエビ(スナッピング・シュリンプ。よりふさわしい訳語は「ピストル海老」かも……)。
 テッポウエビはごく小さな海老だが、そのハサミを、撃鉄のカラ打ちのように機能させることによって、ピーク1ミリセコンド未満の爆発的なキャビテーション泡を発生させる。その衝撃波と音圧によって捕食者は怯まされ、獲物は気絶する。近くのガラス瓶を割るほどの威力あり。
 おまけに仲間とのコミュニケーションにもこのスナップ音を使うものだから、海軍のASW担当者にはとても耳障り。広い海でもいちばん騒々しいノイズ源なのだ。
 しかしこれを利用することも昔からあった。WWII中に米潜が、日本軍の港湾に侵入するさいに、テッポウエビの群落を隠れ蓑に役立てたという。
 海中のサウンドスケープをモニターし続けてデータを集め、マシンラーニングによって、潜水艦の通過がそれをどう変化させるのかを調べておけば、将来は、生物ノイズをそのまま、ASWの一手段に利用し得るわけである。
 問題は、テッポウエビは広く分布しているが、タマカイの分布域は限られており、しかも絶滅危惧種であること。やはり無法な乱獲国を許してはいけないのである。