八丈島と大東諸島にもSAMが必要だよね。

 ストラテジーペイジの2019-6-23記事。
   イランは6月前半、「ホルダド15」という国産レーダーと射撃統制システムを就役させたと発表。その3週間後に、トライトン無人哨戒機を撃墜した。
 現場には、4発のELINT機も在空。そこには35人が乗っていた。
 この2機が組になって飛ぶことにより、イラン海岸や陸地の動静を偵察していたのである。高度が高いから、かなり内陸まで視察できる。
 ※したがって2機はイラン領空に入る必要はなかった。
 「ホルダド15」はなんとAESAレーダーだという。イランの宣伝によると。
 イラン技師は、もし自由に開発ができたならば、とっくにAESAシステムを実用化できた。しかし科学に無知な宗教独裁政府が、これまで予算を付けなかったようである。
 イランは海外の武器市場へは自由に売り込めない立場なので、こうした新兵器の開発はすべて役所(公務員)でやっている。およそ役所は政府がくれた予算の中で仕事をすることしかできない。
 ハッキング情報だけではAESAは完成できない。真に有能でやる気のあるチームが長期間取り組んだ結果である。今回、やっと彼らの実力を証明することができた。
 「サヤード3」ミサイルと射統システムは、基本的に、ロシアの古い「S-200」の模倣だろう。
 シリア政府軍が「S-200」の現役ユーザーだが、イスラエル空軍機はまったく気にしていない。低空から攻撃を仕掛けるので。
 しかし「S-200」は、高空を無防備で飛行している航空機に対しては、強い。
 この前、シリア軍が、間違ってロシアの四発哨戒機を撃墜してしまったが、あのとき発射されたのが「S-200」なのである。
 イランの防空体制は独特である。宗教専制政府は、地対空ミサイル部隊を、空軍から組織図の上で切り離した。そして「防空軍」を独立させている。西側諸国は、この変化を2009年に察知した。
 ※イラン空軍の将校たちは、シャー・パーレヴィ時代にすっかり頭の中身がアメリカナイズされてしまっていて、心の中がまったく西側近代人であり、そのため、イスラム専制指導者層は空軍をぜんぜん信用していないし評価もしない。それで、戦闘機にはロクに予算をつけてもらっていないのである。その代わりに、SAM部隊が優遇されていることが、今回、ハッキリした。
 ハメネイは2018-8に防空軍の司令官を更迭している。それは2018年において5人目の、軍隊指揮官の更迭だった。危機意識が反映されている。
 2017年に、イランの防空体制は無力だという研究報告が軍事雑誌上に公開されている。イランの内外の誰でもそれを読むことができる。
 そのリポートでは、米空軍が、発送電施設を機能停止させるための良導体カーボンファイバーを飛散させる爆弾や、EMP爆弾を使用してくることまでが想定されていた。
 ※公海上空の無人機に対する海賊行為に対する返礼としては、砂漠の中のパイプラインや送電施設に対する攻撃があり得ただろう。オプションとしてそれを示さなかった統幕は、ボルトンに対して内心で反対なのだろう。
 最高指導者ハメネイは、IRGC(イラン革命防衛隊)が頻繁に発信するフェイクな《大本営発表》にも怒っている。代表的なのが、2018にマスコミ発表された「イラン国産ステルス戦闘機」の写真だ。
 国外にあるペルシャ語の諸メディアが、その馬鹿馬鹿しさを嘲弄した。それらの批評は、イラン国内でもインターネット経由でアクセスできる。
 イランの最新鋭の防空システムは、ロシア製の「S-300 PMU2」である。別名SA-20C。2016年前半に搬入され、その2年後に、4個高射大隊が実戦配備されたとの発表があった。
 するとそのすぐあと、2018-5にロシアは、「S-300」をシリア国内の誰にも納品するつもりがないことを、そっと、世界に知らせた。
 これはイスラエルが公然とロシアに求めていた措置であった。
 シリアは結局S-300を手にしている。ただしロシア人の教官・アドバイザーがつきっきりなので、イスラエル軍機に対しては発射されないだろう。
 ※イスラエル国内にはおびただしい数の「元ロシア人」が暮らしているので、あらゆるレベルにおいて同じロシア語で機微な相談がすぐにできることは非常な強みである。
 S-300はペトリ相当。レーダーのレンジは300km。1個大隊にランチャーが4両。各ランチャーにはミサイルが4発。その水平射程は200km。
 水平射程40km内なら、落ちてくる短距離弾道弾にも対応できる。
 イランは1980年代の技術が使われている「S-300PT」という古いモデルをベラルーシから2008年に買った。4個大隊分。
 PTの最大射程は75kmにとどまる。
 IRGCは新型S-300をイランが受領する前に、国産の「バヴァー273」という長射程SAMを国産化したと大本営発表したものだが、そのような現物は存在しない。
 2011年には米国製ホークを独自に改良した「シャヒン」という低層防空ミサイルを国産化したとも発表している。
 また中共の「紅旗2」SAM、ホーク、およびスタンダードミサイルの要素を組み合わせたと思しい「サヤド2」という防空システムを2013年に製造中であるとも発表されている。
 このミサイルは二段式で、高度2万mまで届く。水平射程は80km。
 「ホルダド15」レーダーは覆域150kmだろう。
 「サヤド3」の水平射距離は75kmだろう。
 次。
 Kyle Mizokami 記者による2019-6-20記事「A Closer Look at the MQ-4 Triton, the Recon Drone Iran Just Shot Down」。
      ペンタゴンは20日、「MQ-4 トライトン」が撃墜されたと発表。
 セントコムの発表によると、撃墜された時刻はGMTで2019-6-19午後11時35分。
 トライトンは最大5万6000フィートまで行ける。
 エンジンはロールズロイスAE3007H。これはビジネスジェットによく使われている。それによる最大速度は368マイル/時。
 トライトンは、ロサンゼルスからワシントンDCまでの2668マイルを8時間かけて翔破し、DC上空で8時間のロイタリングをし、ふたたびロサンゼルスに8時間かけて戻ることができる。その間、無給油で。
 MQ-4に搭載されている「AN/ZPY-3」マルチファンクションアクティヴセンサー(MFAS)は、360度の海面を捜索する。
 ESMも搭載していて、低周波から高周波までキャッチし、その発信源を分析できる。
 また、自律的に他機との空中衝突を回避するソフトウェアも組み込まれている。
 過去、「RQ-4 グローバルホーク」を受け入れているUAEのアルダフラ基地を、「MQ-4 トライトン」も利用しているのだろう。
 1969-3に北鮮の戦闘機が米海軍のEC-121M偵察機を公海上で撃墜したことがある。31名が殉職したが、米政府は報復をしなかった。