働かなくともすむ未来をめざして

 Robert Farley 記者による2019-8-18記事「Last Battleship: The Royal Navy’s Final Battleship Was a Real Navy-Killer」。
       第一次大戦が始まると、海軍卿フィッシャーは考えた。浅吃水の大型軽巡に、上陸作戦を支援できる火砲を持たせる。それによってポメラニア(ポーランドのバルト沿海地方)に英軍を上陸させることができれば、ベルリンが脅かされるから、ドイツは西部戦線から兵力を引き抜くしかなくなるだろう……。
 かくして建造された『カレジアス』『グロリアス』は、15インチ連装砲塔×2基となり、続く『フュリアス』は18インチ単装砲塔×2基になった。
 英政府はフィッシャーに対し、巡洋戦艦の新造は許さんぞとタガを嵌めていたのだが、この計画艦は、その禁制を迂回するカテゴリーだった。
 特急工事で艦はできたものの、さすがにバルト海の上陸作戦は、WWI中にはとうてい実行不可能だった。
 ベルサイユ媾和後、3艦ともに主砲を撤去して空母に改装された。これはワシントン海軍軍縮条約に基づく。そのうちWWII後までも生き残ったのは『フュリアス』だけだ。
 ところで撤去された4基の15インチ連装砲塔(砲身は38口径長)は、軍艦の中でも最も建造コストのかかるパーツである。これをただ倉庫に置いておくのは勿体無いのだが、華府条約の決まりにより、それを新造艦に載せることは許されなかった。
 やがて、ロンドン海軍軍縮条約が失効すると、縛りは無くなった。
 無条約時代の第七番目の新造戦艦として計画された『ヴァンガード』は、もしこの余剰砲塔がなかったら、完成はもっと遅れていただろう。というのはWWIIはすでに戦艦の時代ではなく、空母と対潜システムに英海軍の資源を優先配当すべきことはハッキリしていたからだ。
 英海軍は『ヴァンガード』を太平洋で使おうと考えた。『金剛』級の巡戦に、それは対抗できるはずだった。
 1941年、造船所に竜骨が据えられた。
 だが新戦訓が次々と得られたために設計も二転三転。1944年に進水はしたものの、とうとうWWII中には竣工はしなかった(この進水式が、現エリザベス女王が立ち会った最初の進水式である)。
 1946年後半、「最後の英戦艦」は完成。ちなみにフランスの『ジャン・バール』がその1時間後に完成し、世界最後の戦艦だとされている。
 『ヴァンガード』は英国がかつて建造した最大の戦艦(4万4500トン)で、これよりデカいのは『アイオワ』級と『大和』級しかなかった。
 WWII後の英国財政は危機的であった。大緊縮政策により、『ウォースパイト』『ロドニー』など、かつての戦艦は次々とスクラップ業者に売られた。
 『キングジョージ』級の4隻も、ついに1958にスクラップにされ、その時点で『ヴァンガード』が、ただ1隻の、英国戦艦(ただし1956から予備艦登録)になった。
 残念ながら同艦は、防錆のための予算を十分につけてもらえなかった。WWIIで大活躍でもしていれば、扱いは違ったのだだろうが……。そのためついに1960年に、スクラップ化が決定している。
 次。
 ストラテジーペイジの2019-8-19記事。
   2018年に米陸軍は、7万6500人の新兵を募集したが、その目標の達成に失敗した。計画未達におわったのは、2005年度いらいである。
 ただちに米陸軍は手を打っている。基準能力以上の新兵が6年間勤めてくれるなら、4万ドルのボーナスを与えよう、と言い出した。
 また、特科の隊員が歩兵科に転科してくれるなら、報奨金を出そう、とも言っている。
 ※けっきょく対テロは歩兵の仕事だからな。
 2005年はどういう年だったか。失業率は今よりも高かったが、徐々に減りつつあった。そして中東での戦死傷者は、今よりも多かった。
 また2005年に足りなかったのは歩兵ではなく、特科だった。歩兵は充足できていた。
 2018年の米陸軍は、歩兵が足りなくなっている。他方で戦場ではあまり歩兵の死傷は発生しなくなっている。戦闘自体が下火であり、むしろ交通事故で兵隊が多く死んでいる。
 2018の米陸軍は、海外派兵する兵隊の資質基準を高く設定している。その基準に満たない者は、軍隊にいてくれなくてよいというスタンスだ。
 不思議な現象のようだが理由がある。米国の若者は、国家が危機にあると思うと、軍隊に志願したくなるのだ。2005年から2007年にかけては、まさにそんな感じだった。
 しかし今は、米国が「対イスラム戦争」のさなかにあるとは、米国市民は感じてない。だから志願率が低調なのだ。
 対テロ戦争中は、中東最前線からの帰還兵の存在が、銃後米国社会に対する宣伝役にもなっていた。
 しかし今の米国社会にはその影も薄い。
 ※この変化はアメドラのキャラ設定を長い目でフォローすると確認できるだろう。「元軍人」とは言わなくなっている。
 米陸軍は、電気系のスキルのある新兵の募集のために、ボーナス予算を使わねばならない。良い歩兵をボーナスで釣ろうとするのは無駄である。というのも、米国内には、最良の歩兵分隊長だった者を高額で雇ってくれる民間警備会社がたくさんあるからだ。