※初版はS42
巻頭の資料解説/稲葉正夫。
S16-12-8 大本営陸海軍部発表は、午前6時。
帝国陸海軍は本八日未明西太平洋に於て米英軍と戦闘状態に入れり。
午前11時40分、「帝国は今や自存自衛の為蹶然起って一切の障礙を破砕するの外なきなり……」との詔書が渙発された。
杉山参謀総長は、S19-2まで。
さかのぼると11-5に東條が、御前会議直後、下僚に対し、対米英蘭戦争の終結をいかにして求めるかの腹案研究を命じた。
陸軍は南方の資源のみに興味があった。だから当初、ビルマ作戦には消極的だった。重慶をも放置する方針だった。
いきなりマレー北東岸のシンゴラに上陸するか、それともまず航空撃滅戦をしてから上陸させるか。辻中佐を現地の第25軍に転出させて検討させた。現地海軍の南遣艦隊司令長官の小澤治三郎中将が、艦隊が全滅しても護衛すると約束したので、いきなり上陸と決した。12-3に断案。
11-3に永野軍令部総長は、上京した山本GF長官に対し、空母6隻戦力をもってハワイを空襲するように指示した。
海軍が、開戦劈頭の真珠湾奇襲を研究していると陸軍が知ったのは、S16-8のこと。
S16-12-1に開戦することの聖断。
さらに日時は、12-2に、12-8開戦と決定された。
大本営は、進攻作戦開始命令を発令するとともに、開戦日を示達した。
その電報の発信がおわったのは、12-2の午後2時。
これにより、第一線の陸海軍部隊は、8日零時をもって作戦発動の自由を得た。
8日未明、第二揚陸団長から参謀総長宛、軍機電報。「8日1時30分コタバル東岸に上陸成功す」。時刻は東京時刻。これは真珠湾攻撃の午前3時20分よりも早い。
大本営は、比島の米軍がバターンに立て籠もると思っていなかった。第14軍参謀長の前田少将だけが、その危惧があると言っていた。米西戦争が前例だと。大本営は、首都マニラしか頭になかった。それで、敵もそうだと盲信していた。
※プロイセン式の発想。
S17-5-6、コレヒドール占領。
5-7、ウェーンライト中将がマニラ放送局を通じて米比軍に投降命令。
マックは3月に脱出済み。
ボルネオ東南部のパンジエルマシン、セレベスのマカッサル、ケンダリー、スマトラのパレンバン、タンジョンカランに飛行場があり、これを占領して急速整備する必要があったが、周到に準備していたのでうまくいった。
パレンバンは空挺によって無疵占領。
ジャワ全土の攻略は3-12におわった。予定より早く。
ボルネオには4月にボルネオ守備軍が新編され、前田利為中将が親補された。
3-7の連絡会議で、英を屈服し、米の戦意を喪失させる、という戦争指導の大綱が決定されたが、東條と賀屋蔵相は、趣旨不明確だと指摘した。
海軍は、逐次に攻勢作戦を繰り出すことによって、艦隊決戦を招き寄せようという「連続決戦」の思想。豪州、ハワイ、インドへと。
フィジー、サモア、ニューカレドニア作戦は、5-17に、百武中将の第17軍(歩兵3個大隊の支隊が3個)が編成発令されたにもかかわらず、実行はされず。
陸軍は4月上旬に、畑支那派遣軍総司令官に対し、約10個師団を基幹とする一方面軍をもってする重慶進攻作戦=五号作戦を内示して研究を要望した。
解説者の稲葉正夫いわく、S17春に、豪州ではなくて、インドおよび重慶に対する攻勢を決定するべきだった。そうすれば戦争終結に結びついたはずだ(p.14)。
また、中部太平洋島嶼と、比島を、航空要塞化するべきであった。
ガ島にS17-8に米軍が上陸したのは、寝耳に水で、まったく大本営は予想もしていなかった。S18の中旬でないとエセックス級空母が竣工しないから米軍は前に出てこないという海軍の勝手な決め込みを陸軍もそのまま信じていたのだ。
S18-2にガダルカナル島から撤退。それまでに投入した陸兵は、一木支隊、川口支隊、第二師団、第三十八師団。第17軍の司令部も進出したし、あらたに今村中将の第8方面軍がラバウルにできた。
この方面での徴用輸送船/タンカーの消耗が絶大だった。とうとう大本営陸軍部の田中作戦部長と服部作戦課長は更迭された。
民間用の船舶が壊滅したのを見て、陸軍省は、S17-12-10の御前会議で、政戦略転換を促した。すなわち輸送船全滅により長期持久がなりたたなくなった以上は、もはや対米媾和を模索するときだと。しかし作戦当局(参本と軍令部)は統帥権独立を楯に、耳をかさず、独走し続けた。
杉山メモには欠けている分野がある。戦況上奏や、大命の允裁時には、必ず陛下からの御下問があったのだが、戦争指導や政略と関係ない、純作戦についての御下問が、杉山メモでは省略されている。
これを補える人は、真田穣一郎大佐である。開戦前に陸軍省軍務局の軍事課長。服部大佐にかわって、S17-12-15に参本の第一部(作戦)の作戦課長に。「真田日記」と称せられる業務メモあり。稲葉は真田の生前に北海道に自宅を訪ねて聞き取りをした。
以下、真田情報。
S18-1-9の御下問。
ブナの失陥、将兵はよくやってくれた。敵は戦車十数台を有するとのことだが、此方面の我には戦車無きや?
S18-6-8、北東方面の作戦に関し、〔蓮沼〕武官長に漏らした御言葉。
アリューシャンに敵が来ること、アリューシャンは常に濃霧があること、そんなことは前から分かっているのに、なんで敵が上陸した後から対応措置を1週間も相談したのか。
ガ島いらい、陸海軍は、どうして相互に約束したことを実行しないのか。一方が元気に要求する。他方が無責任に引き受けておいて、実行ができないという。それは約束をしないよりも悪いではないか。
霧があるから行けないという、そんな戦場に、そもそも最初から軍艦や飛行機を持っていくなよ。油の無駄だろう。
アリューシャンがガ島のようなことになれば、中立国、第三国は同様し、「支那は調子に乗り」、影響は甚大である。
ビルマに陸軍が出ていったが、陸軍は海洋に対しては無力だ。
杉山はこれを武官長から聞いて忖度し、支那に進出した米空軍に鉄槌を加える新作戦を、陸軍と海軍の合同空軍によって実行する、その研究を着手させた。
6-9、御下問。
ニューギニア。なんとかして米を叩きつけねばならぬ。
〔ソ連の軍用機が満洲国境を越えて先方から射撃を始めた事件について、〕ソ連政府がやらせたのであろうか。
総長。そんなことはないと思います。
8-5、御下問。
北イタリアに連合軍が上陸したら、ルーマニアの油田も危ないではないか。かかるときは、日本としても〔独ソ間媾和の斡旋を〕考えなければならないのではないか。
この時点で第一部長は真田少将。それから「絶対国防圏」が発想された。
8-8、御下問。
局地的にはよくやっているが、どこかで攻勢をとることはできないのか。
杉山。陸軍は「足」を持っておりませぬ。足さえあれば仰せのことはできます。もし前々から大発等を十分準備していましたならば……。
真田らの分析。米英はやはり豪州から北上するだろう。インドからではなく。日本の受ける脅威も、豪州からの方が大きい。
ボーキサイトと油を日本本土に搬入するには、鍵は、比島を日本軍が押さえていることだ。とすれば、敵も、比島を撃砕しようと殺到する。
マリアナ、カロリンの線で持久しようとすると日本の物資は尽きてしまい、反撃戦力を用意できなくなる。だから一気に比島の線まで後退して防禦に集中するしかない。
東條はS19-2-21に杉山参謀総長を勇退させ、みずから参謀総長を兼任するに至った。
これについての証言は、山田教育総監、富永陸軍次官(人事局長兼任)、真田第一部長の手記。
そのうち真田手記は、杉山から聞いた話を記録しているから、いわばもうひとつの杉山メモなのだ。
それによれば、S19-2-19に三長官会議(陸相、参謀総長、教育総監)があり、参謀総長を陸相の東條が兼任すること、参謀本部に次長を2人置き、第一次長が作戦、第二次長が後方を担当することが決定した。根回しは富永がした。
杉山は、後宮[うしろく]淳を後任総長に推した。スターリングラードの例を出し、政治家のヒトラーが統帥部をひきずったからああなったと言った。
東條いわく、ヒトラーは兵卒出身。それと私を一緒にするな。私は大将である。未曾有のこの大戦争。常道を変えてでも、戦争に勝つ道があるならばやらねばならない。
山田は東條に賛成。
杉山はけっきょく折れ、それを部下の3人の部長(筆頭が真田)に口頭で説明した。
真田は、反対の趣旨の内奏案を書き上げ、それを杉山に渡した。
帝国憲法第11条と第12条を分けてあるのはなぜか。行政と統帥輔翼は別人でなければならないからだ。東條の兼任は、幕府時代に逆戻りするものだ。
もし裁可されるのであれば、今次限りの特例、非常の処置であって、決して常道ではない旨を明確にしていただきたい。
※いまひとつ足りぬ。《時限の措置》としてもらうように真田は要求するべきだった。
海軍(島田)も登場に賛成した。じつは開戦前から、永野軍令部総長ではダメだという者があった。たとえば小林躋造大将。
海軍には三長官会議はなく、伝統的に、海相が人事を専裁する。だが伏見宮元帥時代は別で、長老の伏見宮におうかがいを立てる必要があった。
佐藤賢了・軍務局長は、マリアナ放棄と比島決戦を具申していた。
連絡会議は持ち回りで済ませることもある。このときもそう。
当時の憲法解釈上からすれば、実行し得る極限の方式であった。
近衛も、その手記「国務と統帥」でこのときの東條を肯定。
日本には、政戦略を調整し、作戦をコントロールし得る戦争指導機関は存在しなかった。大本営政府連絡会議も、統帥部をコントロールできていない。今次戦争遂行を最も左右した船舶徴傭の問題だけでも、それを証してあまりある。だから東條がすべてを兼ねるしかなくなった。
稲葉はかつて堀場一雄大佐から聞いた。戦争指導の要諦は、戦争目的の確立、進軍限界の規整、終結方策の把握である。作戦指導の要訣は、決戦点の把握に尽きる。
以下、本文ページ。
S17-1-10、連絡会議。
ブラジルで汎米外相会議があるのに対して何か打つ手はないかとの質問に、外相は「ナシ」と。総理は、メルシン上陸を利用できないかと問い、杉山は、まづむずかしい、と。
武藤軍務局長。三国同盟に東亜諸国を参加させないと決定するのは狭量だ。タイは熱心に希望している。米国は南米の幽霊のような小国も味方にしようとしている。
外相。ドイツはタイを三国同盟に入れたがっているが、相当の政治利用も考えている。要注意。
東條。武藤の意見に反対。日本がマネすることはない。ドイツが欧州の指導国であるように、日本は東洋の指導国なのだ。小国が東京に集まって調印するという方式なら、よいだろう。
対インド、豪州の施策に関する陸海軍の申し合わせ。1-15。
米英艦隊のほとんど全部が太平洋に集中したら、独伊はその海軍の一部を太平洋にまわして、日本海軍の作戦に直接協力する。
イタリアは「ファシスト暦」を用いていた。S17=ファシスト暦20年。
1-20、連絡会議。
チモール島には、豪州軍と蘭印軍がいるという。ポルトガル領なのだが。これがクーパン上陸作戦のさいに国際問題にならないかとの御下問に対し、杉山は、敵軍が中立国に所在する場合はその武装解除を求めねばならず、またそこからこっちの作戦を妨害するなら、チモールにも進攻しなくてはならないと奉答した。
1-28、連絡会議。
ドイツの戦況が不利であることを東條は承知している。チモール問題からポルトガルを反枢軸に追いやるとドイツが困るのではないか。
外務省東亜局長。
シナ領内の租界の主権は支那にある。国際法上の権益を実力をもって掌握した日本軍が、南京政府に疎開の行政を移管することは、法的に可能である。
S17-2-4、連絡会議。
東條。シンガポールが陥落したら、総理として国民に戦捷を告げるとともに、あらためて、インド、ビルマ、蘭印、豪州に呼びかけをしたい。
2-9、連絡会議。
シンガポール陥落時の総理演説案について海軍から、「独立の栄誉」という文言は朝鮮人を刺激するからいかんのではないかと。
東條。朝鮮人は真の日本人なるが故に問題とするに足らず。
2-9、作戦関係上奏の際。
杉山の奉答。第10独立守備隊はすぐにはどこへもやらない。先に第65旅団を新編後にすぐに比島へ出したためにひどい結果になり苦い経験をした。新編部隊は、訓練を通じて隊長が部下を掌握する時間が必要。
※比島の治安維持用に送り出したところバターン攻略に投入され、部隊の三分の二が死傷してほぼ全滅状態に。米軍がマニラを捨ててバターンに立て籠もるとは予想外だった。
2-17。連絡会議。
帝国の占領地でドイツ人が種々策動している。
2-23、連絡会議。
外相。陛下から言われた。ポルトガルが気を悪くするとアゾレス諸島を米英に使わせることになると。
タイの中央銀行は、英国銀行が代行していた。
2-25、連絡会議。
生活相談所の受付件数、食料に関するものが12月時点で急上昇。
学童の弁当を持参し得ざるもの、または弁当盗難事件は、童心に与える影響が大きい。
北海道の炭鉱では、コメがないので採掘作業を休止しているところがある。
食料系の流言は関西方面が発信源で、逐次に東京方面に伝播している。
代用食の「薯パン」も足りない。
満洲大豆は現地には十分にあるのだが、それを大連から日本本土へ運ぶ船腹が徴用されてしまって存在しないので、大連に滞貨の山となっている。
漁船用に重油を特配することで、魚介類は増やせるだろう。
ソ連には北樺太利権を返還すると松岡が約束しているが、これはずるずる遷延させるつもり。
2-26、連絡会議。
軍令部次長。米国では主力艦の要否について疑問を持ち始めている。米海軍は、兵学校の卒業者の全部を海軍士官に任官させてしまうのではなく、多数の予備員を民間へ送り出している。要するに米国は軍艦をハイペースで増やしても、乗員プールには余裕がある。
東條。ドイツはコーカサスの石油を取れるのか?
杉山。モスクワを先に攻略し、そのあと、今年の秋にコーカサスを攻略するつもりのようだ。その能力は十分にある。
外務省。ドイツの産油量は、人造石油が年に80~100万トン、ルーマニア産油が年に300~350万トン。その他、現貯蔵油が、400万トンにすぎない。ドイツの消費量は、年に1200万トンなので、今年の秋には欠乏するはず。だからコーカサス油田の占領が必要だ。イタリアは、国民はドイツに協力する気があまりないが、上層部はしっかりしており、本年のうちは脱落しないだろう。欧州で糧食が最も欠乏しているのはギリシャで、それにスペイン、ポルトガルが続く。ドイツはその面倒をみてやれる余裕なし。
杉山。大東亜共栄圏の範囲は?
東條。今占領しており、作戦を実行しある地域にして、ビルマ、マレー、蘭印およびその東方の諸島である。インドや豪州などは、今後の作戦の推移によって、含めるかどうか決める。
2-28、連絡会議。
豪州はもとは英国に依存していた。WWIの頃から、漸次に米国依存が濃厚になっている。
武藤。国防圏をはっきり決定し、その上で、豪州とインドは作戦圏としておいてはどうか。
東條。シベリアを取るのは何のためか?
鈴木貞一。褐炭を採るため。
東條。その前に圏内で賄う工夫をすべし。
農相。朝鮮のコメを700万石、内地へ送り、かわりに満洲の雑穀を20万石、朝鮮に搬入したいが、関東軍が50輛しか貨車を出してくれない。1000輛を要するのに。タイやビルマのコメも、余っているのに、船がなくて内地へ運べない。 ※この「雑穀」には「大豆」は含まれていない。念のため。
逓信大臣。陸海軍の徴傭船が長期修理で使えなくなっても民間からその分の船を回すことはしないという開戦前の計画だったはず。
参謀次長。そんなはずはない。軍の徴傭船が故障したらその分は民間から取る。そうしないと作戦ができない。
東條。船舶の損害は開戦前予想よりもはるかに少ないのに、船不足で輸送が詰まるとはどういうことなんだ。原因をはっきりさせろ。
※船は故障するし定期メンテナンスも必要だという初歩常識を無視した「計画経済」「統制官僚」のお粗末さが開戦後に露呈。
3-2、連絡会議。
船が足りない理由を企画院で調べたら、わかった。軍事秘密の保持のため、船舶の入港時期があらかじめ教えられない。そのため港で荷役の手配をできない。このため港湾荷役が非常に非効率なのだ。
外相。国民の蛋白質が不足している。
鈴木貞一。コメ、塩、大豆のみで行くしかない。
蔵相。大阪出張者の話を聞くと、とにかくコメの不足が人心を不安にしている。
武藤。府県がそのままブロックになって、食料の国内融通が阻害されている。府県より大きな大ブロックにする必要がある。
3-7、連絡会議。
企画院。船というものは進水しただけでは走らない。そこから汽罐を入れ、艤装して、仕上がる。艤装には最低1ヵ月かかる。だから今年1月に進水した新造船が、使用可能状態になるのは、3月なのだ。これはウチで出している数字に反映させている。
杉山。現在、浅間丸、竜田丸、秩父丸などの優秀旅客船は、物資輸送に向かないのと油がないのとで、繋留状態。陸軍の占領地域の油を使って活用してはどうか。
海軍。その油は海軍艦隊の現地補給用にしたい。
発言者不明。船舶はすべて国有にしたらどうか。能率的に運用できるはずだ。
東亜局長。インドにソ連を進入させてもらいたい。※ソ連を枢軸側にとりこむ餌としてインドを使おうという発想か。ドイツがOKするわけがない。
参謀次長。独ソの手打ちなんて、現状でできるわけがない。
外相。そういう調停斡旋に乗り出す第三者は、オレの言う事を聞かねば両者とも叩き潰すぞという決意と準備がないとダメ。日本には独ソを叩き潰せるような実力は無いのでできない。
岡海軍軍務局長。この戦争を人種戦争に転化せざるよう注意せよ。長期戦だからといって「専守防禦」はダメだ。
海相。統帥部は豪州攻略作戦は検討したのか?
参謀次長。豪州もインドもハワイもセイロンもすべて検討済みである。豪州を攻略するには10個師団の兵と300万トンの輸送船が必要。到底実行不可能なり。
3-9、連絡会議。
物資輸送および漁業は、石油の不足のため、閉止状態にあり。だから50万トンを配給する。
3-11、連絡会議。
陸軍機は何故、こんなに多数の損耗があるのか。足が短いため、現地に行く途中で相当損害を生ずるのである。
時局に伴うユダヤ人対策。戦前の五相会議のときは、米英との関係を維持するため、外資待遇を緩和していた。今日は情勢一変した。「元来猶太人は悪い奴等故」、今後これを厳重に取り締まらんとする。
無国籍ユダヤ人は、その取り扱いを厳重にする。
蘭印のオランダ人捕虜の扱いで困っている。オランダ母国が消滅しているので、将来、俘虜交換の材料にできない。さりとてこのまま現地に置いておけば、将来、ドイツが利用するところとなるおそれがある。
決定。日本の占領地へユダヤ人が渡航することは禁ずる。
説明。ドイツは今年の1-1に、海外在住ユダヤ人のドイツ国籍を一斉に剥奪した。
参考。S13-12-6の5相会議。ユダヤ排斥は、帝国が多年主張してきた人種平等の精神に合致しない。
東條演説。今日の蘭印の運命は、明日の豪州の運命。
3-13、今後採るべき戦争指導の大綱に関し、上奏。
S17-3-7の連絡会議決定。
豪州の隘路は、人口が少ないこと。強みは、衣食に関しては、いかなる長期戦にも対処し得る。
対米英戦争が長引くと、日本の弾撥力が失われる。するとソ連は対日参戦してくる算が大である。日本が対ソ開戦するとモスクワが判断すれば、ソ連領の軍事基地を米軍に貸したり、ソ連から先制攻撃してくるだろう。
S17-2-21の連絡会議決定。
インドのタングステンが得られなくなれば、米国はそれをボリビアから得られる。
高級雲母は、カナダ、マダガスカルにもある。米国内には低給雲母が出る。
豪州の鉛が得られなくなれば、英国はそれをカナダ、メキシコから得られる。
クロームは、アフリカから得られる。
豪州は、石油類は米国に依存している。自動車部品も。
アルゼンチンとチリは、実質的に、中立している。
S17-2-21連絡会議決定。
欧米の油田は、今後30年以内に涸渇する。だから新規開発油田として、スマトラ、ビルマ、イラン、イラクが重視されているのである。
褐炭は、人造石油の原料である。日満支の褐炭は、欧米に、とても量で勝てない。だから豪州と東部シベリアを支配する必要があるのだ。
粘結炭は、製鉄原料である。北支の分だけでは長期的に需要増においつかないから、インドを支配する必要がある。
S17-3-7連絡会議決定。
1月未満、普通揮発油は、陸軍が15000キロリッターもっている。
航空原料揮発油は、海軍が16000キロリッターもっている。
取得見込み量は、S16年度の英領ボルネオから1400キロリッター、タラカン地域から2000キロリッター。S17年度の英領ボルネオからは70万キロリッター、タラカン地域からは25万キロリッター、サンガサンガ地域からは30万キロリッター、南部スマトラからは50万キロリッター。
3-14、連絡会議。
ジャワの人口密度は異常に高い。あそこに4000万人もいるのだ。
未開種族としては、ミンダナオ島のモロ族。サラワクのダイヤル族。チモールには最も未開の土族あり。
本問題に関する大東亜建設審議委員会の「空気」につき……。
今回占領した地域の各民族は独立の経験がない。だから独立の必要は絶対的ではない。
某海軍少将。南方のみに夢中になるべからず。帝国と南方との距離は、英米間の距離よりも大なのだから。
まごまごすると、ドイツ人支那人によいところを全部取られる虞れがある。
外務省はジャワだけを独立させたいのかもしれない(p.101)。
山本局長。スマトラとボルネオは日本が取る必要があるので、残りはジャワ島となるわけ。※武藤が説明し直している。そもそもの判断は武藤がしてたのかよ。
蔵相。全域を日本の領土にして、必要に応じて高度の自治を与えては。比島はすぐ独立させてもいいだろう。ジャワはずっと日本の軍政でいい。
鈴木貞一。軍政永続に賛成。過早にインドネシアに独立を約しては、増長してわがままになる。
3-16、連絡会議。
鹵獲文書から米国の建艦計画がわかった。駆逐艦を1942に57隻、1943に90隻量産する。※飛行機と空母については分からない。
3-10にサラモア上陸作戦で日本軍は相当の損害を受けた。原因は、味方の航空部隊が到着する前の日に、敵空母×1から急襲されたため。海軍は特設空母×1と、特設水上機母艦×1を沈められた。敵機×11を撃墜した。
豪州から正式の申し入れがあった。第三国を通じて捕虜に食料と医療材料を送りたいと。
3-18、連絡会議。
武藤。占領地において、陸軍は「軍政部」と自称し、海軍は「民政部」と自称している。海軍もやっていることは軍政に他ならないのだが。違いといえば、海軍は「点」を押さえているだけ。
これについて外相が、統帥が軍政を行なうのはおかしくないかと突っ込み。その場の全員に反駁されて沈黙。
4-11、連絡会議。
インド人は独伊をよく思っていない。
海軍軍務局長。香港のジャンク(戎克)200隻を満人の民間海運会社に与えて、大連から朝鮮西海岸まで大豆を運ばせるつもり。
香港と上海ではジャンクがすべて禁足されているので住民は大迷惑。
4-24、連絡会議。
総理。アジアの仏領はヴィシーから引き離す。しかしこの方針は文書化しない。
4-27、連絡会議。
米機〔ドゥーリトル隊の1機〕がソ連に遁入したことについて、対ソ申し入れの内容を承認。
永野軍令部長が、総理、杉山、外相に対してFS作戦を通告した(p.117)。※FSの初出。
外相。仏領であるN〔ニューカレドニアか?〕の主権はどうなるや。それにつき、永野は何も考えていなかった。ニッケル資源にだけ、関心があって。
5-6、連絡会議。
杉山。第三部長の報告によれば、大阪、神戸、門司等の埠頭が滞貨の山になっていて、そこに南方から物資をとどけてきた陸軍徴傭船が入港しても荷物を卸下できない。荷役ができないから、貴重な船がそのまま港で何日も待たされているというたいへんな無駄である。これは政府と企画院の怠慢だろう。
5-9、連絡会議。
タイ軍がビルマに進撃することについての措置決定。
杉山から東條へ。最近ラングーン方面に優秀な敵機による空襲があるから、雨季前に対抗爆撃するつもり。無辜の住民、病院、学校は爆撃しないように注意する。
ビルマ方面の作戦が好調だったことから、支那でも昆明まで行けや、という希望が生じてきた。東條も《統帥に干渉するものではないが》と前置きして、それを杉山に促した。研究しようと返事して承りおく。
5-18、情報交換。
外相。在京のポルトガル公使から、チモールに上陸した日本軍が、非友誼的行為を厳重処断すると布告したのは、総督の統治権の侵害だと抗議あり。外務省は、該地方は綫条であるので日本軍が自衛上必要な措置を講ずるのは当然だと応酬した。
5-20、連絡会議。
海軍が油槽船が足らなくなってきて焦っている。油槽船は「陸海軍石油委員会」で配分を決めることになっていたが、それでは困る、と伊藤軍令部次長。岡海軍軍務局長は政府寄りなので、伊藤と激論に。
内閣書記官長。南方占領地につける地名が陸海軍で不統一なのは法制上、困る。教科書にも載るものだし。たとえばグアム島の名前を陸海軍だけで相談して決めているが、それはまずい。
総理。B-25のクルーを陸軍は勝手に「厳重処分」する気か。そう簡単に処分せられては困る。
外相。故意にやったものと判明すれば当然、戦時の重罪として処断して一向にさしつかえはない。
海軍は、7月以降、徴傭油槽船(捕鯨工船を含む)の既定超過量を解傭し、南方石油輸送に充当する。
S17-6-3、連絡会議。
東條。「ヤナギ」船によるドイツへの物資輸送。向こうが欲するだけ送ってやったらいいのではないか。海軍はシンガポールへのドイツ船の入港を認めていないが、昭南港を中継ぎポイントにして向こうから取りに来てもらうこともできるのではないか。
東條。南方で押収した敵の資産。日本人で国債を買っている者は、その額に応じて南方の株式を購入できるようにしたらよいのではないか。
S17-6-10、連絡会議。
海軍から、ミッドウェー海戦の戦果につき、報告があった。
米空母1撃沈、1大破。巡洋艦数隻、大破。
我が空母1喪失、1大破。巡洋艦1、大破。
※政府および陸軍に対して公式に嘘情報を捏造して伝えるという、終わっている帝国海軍。そしてその嘘を独自にチェックできない、陸軍と政府の情報無能力。
東條。この結果はなるべく速やかに公表して欲しい。
7-1、連絡会議。
東條(陸相として)。船舶輸送司令官の報告によれば、内地から南方へ石炭を3万トンも輸送するという話だが、海軍の一士官によれば、ボルネオには大量の石炭が積みっ放しになっているそうではないか。
杉山。陸海軍が蘭印を2分割して占領しているために物的連繋が不十分だし、精神的な連繋も不十分だ。(永野に)よくやっていこうではないか。
7-25、連絡会議。
蔵相。英屈服作戦とはインド作戦のことか。具体的にどうするのか。
岡海軍省軍務局長。大綱のみ。これから研究する。
※この時点で陸軍省の軍務局長はサトケン。
東條。大島大使伝によると、このまま行けば独ソが単独講和する恐れがあると。これはチャンスでもある。日本はドイツとは同盟関係、ソ連とは友好関係にあるから。
話者不明。日本からドイツへの連絡船を柳船、ドイツから日本への連絡船を逆柳船と秘匿呼称しているのに、民間の船会社が皆正体を知っている。16隻のうち3隻沈没したことまで知れ渡っている。オットー駐日大使が商社に洩らしているのではないか。
海軍情報。米国の雑誌に予備少将が寄稿し、ガス使用を強調していると。
8-24、連絡会議。
ブラジルが22日に対独宣戦布告した。日本については何もなし。
元来ブラジルはドイツに対して著しく厳しい態度。イタリアに対しては緩やか。日本に対してはその中間。最近は日系人に第五列的な言動は無いと公認している。
※WWI中にブラジルから欧州に向けた穀物商船がおびただしくUボートに沈められた歴史があって、それいらい反独なのである。
軍令部の中堂大佐から教えられた。在欧の海軍武官が会議した上での報告あり。それによると、通商破壊(ドイツの今次大戦でのUボート作戦)のみで敵国を屈服させることは無理だと。
8-26、連絡会議。
外相。ドイツはゴム、錫、油脂を欲している。またドイツは、大東亜共栄圏の南方地域において経済活動したいという希望が相当強い。
東條。ドイツに供給した物資がそのまま対ソ戦に使用されると、ソ連から日本が憎まれるので、そうならないように、ドイツに注文をつけてもらいたい。
9-10、連絡会議。
商船、鉄、液体燃料の増産が期待はずれの低調。
鈴木貞一。民間重役は高給をとっているのに陣頭指揮の熱意が足りない。
9-19、連絡会議。
サトケン。タイ人が帝国軍人に対して侮辱的行為を頻発させている。
9-21、連絡会議。
青木一男(大東亜大臣予定)を本日から連絡会議に出席させる。
9-28、連絡会議。
占領地にある敵の国有不動産は没収することはできない。これはヘーグ陸戦条規の第55条に定められている。
敵の私有動産を、直接軍事上の用途に充てるときには、後日の還付や賠償を条件として、押収することができる。しかしその場合でも没収はできない。
10-3、連絡会議。
独伊の日本大使および武官たちに、こちらから「連絡使」を派遣する。「開戦の経緯」も口頭で説明させる。
S17-10-29、連絡会議。
東條。ドイツが北アフリカで旗色がわるいこのときに海軍が戦果〔11日のサボ島沖夜戦~15日の第三次ソロモン海戦か?〕を上げてくれたのはすばらしい。南米諸国の態度にも好い影響があるだろう。陸軍の〔ガダルカナル島での〕戦果は期待に沿っていないが、三回にわたる〔ヘンダーソン飛行場への〕強襲により「敵陣地の要塞化せる事実を確認したる次第にして」、陸軍としても必ず作戦目的を達成すべく、またその自信あり。
※大本営はこの2日後にガ島撤退を決定する。統帥情報が得られない陸相の東條は、とんだピエロ発言をしてしまったわけだ。しかし3回総攻撃してすべて全滅。分かったことは「敵の陣地は強い」であった――という岡目の総括は、適切そのものじゃないか。
東條内閣が近く総辞職するという不愉快なデマあり。
東條。枢密院の古い外交官の頭のまったく時代遅れなのに驚いた。今の外務省の仕事は、英米大使館がなくなったので、9割は大東亜関係の仕事である。その大東亜関係の仕事を「大東亜省」に取られるなんて許さん、というのだ。
谷外務大臣。南京政府をして対米英宣戦させるために、香港を返還して海南島を取ったらどうか。
東條。国民政府が参戦しても却って足手まといになるだけだが、汪精衛が参戦を希望する理由は、それによって国民の心を一つにしたいというのだ。
11-7、連絡会議。
世界情勢判断。海軍側より執拗に、南太平洋方面の現戦況を重視し、海軍作戦に重点を置かせようとする修文意見あり。
谷の考え。独ソが和平に動くと、英はそれに先んじて対独講和を企図するかもしれない。
重慶の抗戦能力は、300個師団=200万人 である。
インドの反英運動は、鎮圧されてしまうだろう。
綜合判断。ここ一両年、万難を排して、自彊不敗の政戦態勢を確立し、独伊と提携して、今後の米英の対日反攻に対応。随時随所に敵の戦力を撃滅することで、米英の戦意を喪失せしめる。
米軍はパレンバンを空襲してくるだろう。その対策が必要だ。
爆撃機の航続距離が延びているから、アリューシャンやミッドウェーから直接日本本土を空襲するようになる日が必ず来る(p.170)。
米英は「治外法権」を撤廃することで蒋介石を懐柔している。
英独講和が実現すると、英軍の全力が太平洋に来るから、容易ならざる事態となる。
米ソの軍事提携を防がなければならない。対ソ戦は避けなくてはならない。
11-21、連絡会議。
ヴィシー政権は、米英軍がアルジェリアとモロッコに侵入したので、対米英断交している。
青木。支那から何でもとりあげたままにしておくのはよくない。租界は返すが、倉庫、家屋、物資はみんな日本が貰う、ではダメだ。万一大東亜戦争に敗れれば、ことごとく米英にとられてしまうのである。現地の統制経済は現地人(支那人)にさせねばダメだ。現状、日本人が結託して組合をつくってボロ儲けをしている。
サトケンの反論。なんでも取り込み主義というなら、いちばんひどいのは、もとの興亜院、今の大東亜省の高級官僚どもだ。そもそも下僚たる事務屋〔エリート官僚〕の分際で、中央上層の政策を左右しようとするのだ。
S17-12-10、御前における大本営政府連絡会議。
※従来の「御前会議」よりも気軽に頻繁に開けることになった。この改革はS17-12-10に決定し、即日裁可を得ていた。
島田。造船を増やすために、自動車工場を造船に転換させろという意見があるが、薄い鉄板を電気熔接しても、外洋の荒波には耐えられない。大型船はその方法では建造できない。
自動車用エンジンを10個並べて舶用にするといった思いつきも、現実にはうまくいかない。
長崎の川南造船所で実行しつつある新工法。船体はそれでいいだろうが、エンジンや機械類はそうはいかない。つまり造機がネックになる。
寺田逓信大臣。
商船は平時には船齢30~40年として設計する。だが戦時はこの設計寿命を極度に短くしてもよいはずだ。それで増産が可能になる。「組立式造船方式」〔ブロック工法のこと〕も考慮するべきだ。
※こいつらWWI の米国のリバティエンジンから何も学んでいなかったのか。長期戦になるだろうと事前に認識していた大戦争の開戦から1年たって漸くこんな議論をスタートしているとは……無能すぎる!
標準型五種類というのを計画していたが、これをさらに三種類に限定し、経始については曲線・曲面の部分をなくし、直線・平面だけとすることで、素人職工でも加工・組み立てが手伝えるようにする。
敵潜対策としてコンボイ運用が必要になっているため、船舶の稼行率が低下している。隻数が揃うまで港で待機しなければならないため。
商船の喫水線を7分、ひきあげることで、増積することも考える。
井野農林大臣。搗精でコメは2%減る。これは無駄だから、玄米食を励行させる。
朝鮮では400万石不足するので外米を輸入する必要がある。
満洲からは内地に雑穀20万トン、大豆80万トン輸入するはずだが、実績は43万トン〔船が無いため〕。内地に以って来られない分は、朝鮮に廻すことにしたい。
大豆不足が意味することは、18年度の味噌と醤油の配給の2割カットである。
砂糖は台湾で豊作なのにもかかわらず、32万トン分しか持って来る船がないために、18年度は、家庭用の配給を維持するに足るレベル。業務用は4割減らすしかない。台湾には53万3000トンが積み出せずに余る。これを貯蔵するための倉庫を建築しなければならない。
東條。海運を陸運に転嫁することはできないのか?
八田鉄道大臣。海陸連絡点での搭載卸下設備を建設しなければならない。※開戦1年後にそんなことを言い始めてももう遅いということ。
小運送の増強には自動貨車(トラック)が頼みだが、そのためには燃料を増配する他に、運転手の養成が必要だ。
岸商工大臣。内地での鋼材生産の計画達成のため、屑鉄回収を強行する。小型熔鉱炉も増設させたい。
S17-12-10の参謀総長の御前説明。
ガダルカナルには8月上旬に米軍が上陸し、飛行場を占領した。その飛行場が急速に整備され、近海の制空権を確立したので、日本の艦船は昼間には近寄れなくなり、月明ある夜間も無理となり、暗夜に鼠輸送するしかなくなった。
これに対して敵は昼間から大量の資材を堂々と揚陸して陣地を迅速に構築。「我が屡次に亘る攻勢も奏効せず」、部隊は目下、ガ島西部で粘り、次の攻勢を準備している。
島田の御前説明。8月~10月の海軍の重油消費実績は、30~34万キロリッターになった。この調子では17年度末には在庫量が消費し尽くされる。今後、毎月すくなくとも35万キロリッターの内地還送が必要だ。しかるに、現有の油槽船をぜんぶ使って運航しても、かろうじて毎月20万キロリッターを還送することしかできない。
企画院総裁・国務大臣鈴木貞一の説明資料。支那では「土法銑」という非工場式の小型熔鉱炉があって、これを動員すると18年度には1.5万トンの銑鉄が得られるはず。 ※鈴木や岸は、毛沢東と同じ妄想を10年以上も先取りしていたのか。きわめて品質の劣る粗鋼しか得られず、しかも燃料はおびただしく無駄になる方式。
統帥部の説明。11月中旬に輸送船11隻でガ島へ補給しようとしたところ、敵機10機が現われれ、4隻は沈没、3隻は行方不明、残余の4隻は泊地まで辿り着いたところで敵機および巡洋艦等の攻撃を受けて全部炎上してしもうた。
それでわかったこと。制空権を確保しないで艦船を運行させることはできない。艦船を運行させないと所要兵力も軍需品も届けられない。駆逐艦と潜水艦でも少量の輸送はできるが、それでは攻勢に必要な兵力も軍需品も揚陸できない。どうしても輸送船で輸送しなければ戦争には勝てない。
18年度に内地や外地の食糧がどうなるかを詳細にスプレッドシート化した企画院作製の資料が添えられている。略す。
S17-12-18、連絡会議。
鈴木。香港を南京政府に返すかどうかは、国民政府の立場のみを考えてはいかぬ。占領したときの日本国民の気持ちを考えろ。
12-21、御前会議。
陛下御風気にわたらせらるるゆえをもってご説明は大綱のみにとどめ、細部は書類をもって上覧に供することとなる。
原枢密院議長。もともとシナには排英が起った。それがあっというまに排日に転じ、支那全土を風靡した。日本に原因があるからだろう。干渉とか独占とか、日本側の態度がひどすぎたのだ。
説明資料。日本が専管中の日本租界は、天津、杭州、蘇州、漢口、沙市、重慶、廈門、福州。これを支那側(汪精衛)にいまだに還付していない。
日支媾和条約案の一部。
支那は満洲国を正式承認する。
内蒙古には防共自治政府を設立する。国際的地位は今の外蒙に同じ。
支那は帝国に対し賠償する。
媾和と同時に「梅津何応欽協定」「塘沽停戦協定」「土肥原泰徳純協定」「上海停戦協定」は廃棄する。
また、従来日本が有した治外法権、租界、駐兵権などの特殊権益は廃棄する。
日支防共軍事同盟を締結する。
秘密交換文の案。
中華民国政府は海南島および付近の諸島嶼を省域とする一省を設くること。※つまり日本が占領している海南島、パラセル諸島に日本の特殊権益を設定させる。
在支の日本軍は、治安が確立されてから2年以内に撤兵する。
S18-1-4、連絡会議。
満洲国は参戦させない。
駐日ドイツ大使が更迭され、スターマーが着任する。リッベントロップの懐刀と言われている。着任したらすぐに、日本が独ソ和平斡旋を希望していることを耳に入れること。
敵国側をして、大東亜戦争を人種戦とし、枢軸陣営撹乱を企図せしむるが如き間隙をつくらないこと。
※アジア民族の解放と強調すれば、アーリア人種第一主義のドイツとは相容れなくなる。そういう意味か?
1-7、連絡会議。
日支共同宣言の発表は、裁可後ならば、御批准前でも差し支え無し。日泰条約のときの先例があるから。
1-8、連絡会議。
帝国政府声明案を了解した。「中華民国国民政府は本日米英両国に対して戦ひを宣せり」。「……画期的発展を期待すると共に中国の自主独立と国民党政府の政治力発揮とを……」「惟ふに日華両国の提携は自然の大道にして米英は両国共同の宿敵なり」。
1-11、連絡会議。
外務省政務局長。国民政府が参戦しても、日本は、在仏重慶側外交機関の退去は求めない。
杉山。ドイツが北部仏印に関して勝手なことを始めれば、広州湾方面や仏印に重慶軍が進攻するかもしれない。そうなるのは困る。
1-14、連絡会議。
東條。フィリピンを独立させるときに、ミンダナオ島はどうするつもりか。
両総長。マニラ政府の主権・宗主権を認めるが、実質、日本が支配し続ける。※海軍がダバオ港を手放したくないのか?
米国は1946-7-4に比島を独立させると既に約束している。※米独立記念日と一致させる気だったのか。
日本が直接統治を続けるのは煩累を著しく増す。
ミンダナオは軍事的、経済的に重要なので、手放さない。
1-23、連絡会議。
「簡易造船所」を3箇所つくる。
東京の石川島造船所を中心とするもの。年度内に60隻建造。
播磨相生造船所。年度内に70隻建造。
若松長崎造船所をして建設せしむるもの。年度内に70隻建造。
その他に、川南工業にも実施させたいが、計画は確立していない。
いわゆる「改E型」は、総トン数890トンだが、いろいろ附加するので、1000トンになる。載貨トン数は1570トン。ディーゼル機関で速力7ノット。航続距離2000海里。
杉山。在満の航空部隊の「九七式旧型戦闘機」は、最大時速300km。これに対して敵は600km/時の戦闘機を装備しあり。改良を急ぎたい。つまり自分としては造船優先ではなく航空優先にしてもらいたい。また陸軍としては、決戦兵器として「大口径の火砲」も造らねばならない。※96式15榴のことか?
海軍軍務局長。航空優先といっても、船舶が不足していてはその原料が運べない。したがって生産できないのである。
※日本の参謀総長には、国家総力戦の重要性のプライオリティーを割り切る能力が欠けていた。
S18-1-30、連絡会議。
重慶軍が出てくる前に、広州湾にあるフランス租界に進駐する。仏印政府が事前に同意しなければ、単独強行する。
中華民国国旗には「反共和平」という文字を表示した黄地の三角ペナントがついていたが、その布片を今後は除去する。
2-17、連絡会議。
北清事変に関する最終議定書にもとづく公使館区域の行政権は、すべて支那側において回収する。
これまで租界の警察のために日本が支那人巡補を雇っていたが、これからは支那側で警察する。
租界内で「支那人及第三国人」より徴収していた民団民会の課金は、廃止。
2-20、連絡会議。
遣独伊連絡使は、ドイツ政府やイタリア政府と直接に折衝してはならない。折衝は、大島、日高大使を経由すること。
機密に亘る重要書類は携行せざるものとす。
出張期間はおおむね、5ヶ月。
2-24、連絡会議。
在支の大使館や公使館の下っ端が権益主義を脱せず、政府の大精神を弁えていない。
租界の関係第三国は、イタリア、フランス、スペイン、ポルトガル、デンマーク、スウェーデン、スイスである。これらの国には、支那が共同租界を回収することを承認させる。
2-27、連絡会議。
東條。まず英国を屈服させるという戦争指導方針は見直しだな。
軍令部次長。同意。
ドイツの英上陸作戦の可能性は極めて小さくなった。
外相。米国には精神的な弱点がある。労働問題、選挙問題。案外脆く、戦争意志を放棄するだろう。ゆえにむしろ、米国の精神的破綻を誘導することを重視しよう。英国屈服よりも。ゲッペルスは、ドイツの陸海空軍が一体にならなければ英本土上陸は不可能だと前から言っていた。
東條。前に「判断」を上奏したとき、連合軍の北アフリカ上陸作戦は、船舶が足りないので不可能ですと申し上げた直後、北阿作戦が開始され、面目を失した。次に意表を衝いて上陸しそうなところはどこか。
サトケン。イベリア半島とか、ノルウェーはあり得る。米ソ間の連絡連繋について。空中連絡は前から単機でやっていた。が、昨今は編隊でやっている。米国の地上勤務員や気象関係者が逐次にソ連に入っている。いざというときはソ連領から日本を爆撃する気だろう。
永野。北洋で日ソの商船が遭遇すると、ソ連船が活発に無線を打つ。おそらく米国に知らせているのではないか。
東條。米国の人的資源はどうか。
永野。最近前線でぶつかる敵の飛行士は、飛行時間200時間程度の、大学、中学〔旧制中学。今の高校に相当〕を卒業した者が多い。学校においてすでに〔ROTCで〕基礎教育を受けているので、技倆は良い。こっちは時間とともに技倆が低下して、いまや日米のパイロット技倆は伯仲している。
ドイツは来年以後の行動の自由をえられるぐらいの対ソ痛撃は、加えられないだろう。
独ソ関係が大変化しないかぎり、ドイツの英本土上陸もあり得ない。
米軍は、戦時に700万人を維持できるだろう。
米の海軍力は、昭和21年頃まで上昇し続けるだろう。
在支の米航空部隊は、今は90機。逐次増加中。
S18-3-1の大本営陸海軍部の了解。
こちらから対ソ戦は開始しない。
もし日本から対ソ開戦しても、地勢上、こっちはモスクワを攻略できない。必然的に長期持久戦争になってしまうから。
よってドイツに呼応することはしない。だがもしドイツから聴かれても、こっちの詳しい内情は話さないこと。
S18-3-31、連絡会議。
バーモを呼ぶことを、絶対に他に漏洩せざるように。
バーモに陸海軍の施設と軍需工場を見学させて、こっちの国力を知らせること。
青木。とかく日本人は干渉に陥り易い。ビルマのことはビルマ人に任せろ。
杉山。ビルマからこれから作戦するので、委譲なんてできない。
S18-3-10、連絡会議。
ビルマは、独立に際して米英に宣戦させる。
戦争中のビルマ軍は帝国陸海軍最高指揮官が指揮する。
3-19、連絡会議。
ビルマ民衆は一千余万人である。
※あんなに広いのに人口扶養力が少ない。とても現地自活はできないわけだ。
国家承認の上は、大使を交換したい。
S18-4-28、連絡会議。
ドイツはソ連に1600万人の損害を与えたと言っている。しかしこっちの調べでは880万人だ。
サトケンは、ドイツに反省を促すという直球を投げ込みたかったが、参本が阻止した。
ドイツと運命を共にする定刻の協力誠意を示す。
5-17、連絡会議。
大東亜戦争開戦後、引致したソ連船。これは海軍がやったのだが、対ソ交渉を外務省に丸投げした。杉山所見。海軍の責任回避。だったら最初から兵力を行使して抑留するんじゃねーよ。
ソ連汽船『イングル』、『カメネッツ』『ホドエスク』。もともと米国船なのだが、米国は、開戦後に、船籍をソ連に変更した。それを拿捕した。この3隻は、解放する。
5-26、連絡会議。
岡軍務局長と永野。対支の和平という言葉が気に入らぬ。
鈴木。正々堂々和平と標榜しなくては重慶に何の魅力もない。
サトケン。国民政府も和平に賛成だ。
海軍。ニューギニアを領土に入れることが必要だ。
外相。大東亜会議には、独立国だけを召集する。各地域の民族代表は、別に会議をさせるのがよい。大東亜同盟条約はできないか。
秦次長。ビルマや比島のような小国と対等に扱われることを支那、満洲は望まないから、結局日本と個別に条約締結する以外にないのである。
5-30、御前会議。
終了後、関係書類はすべて回収した。これは東條が、枢密院議長を経て重慶工作が外に漏れるのを恐れたため。
以前に「対支処理根本方針」で、重慶を対手とする一切の和平工作を行わないと定めてある。これを変更する。
仏印を本国から離脱させることはしない。
比島は10月に独立させる。
マレー、スマトラ、ジャワ、ボルネオ、セレベスは民度が低く、独立の能力に乏しく、こっちは資源も欲しいので、帝国の領土としてしまう。しかしこれは対外的には公表をしない。敵の宣伝に利用されるので。
5-31、質疑応答参考資料。
蒋介石はこう考えている。米英は絶対に負けない。世界大戦が最悪の展開になっても大きな影響力を保持する。だから米英と結託し続ける。
蒋介石と汪精衛の和解は不可能に近い。
南京政府は人的資源に乏しく、重慶側より全般的に一段低級にして、大物無し。支那人は伝統と格式を重視するから、南京側は蔑視されている。
5-29時点の比島情勢。
北部ミンダナオ、イリガン、スリガオ付近の敵匪の蠢動は活発。こちらの討伐に頑強に抵抗している。
敵匪は、豪州や米本土と無線連絡をとっている。
敵潜が、ゲリラのために戦闘指導員、武器、無線機を送り届けている。
6-9、連絡会議。
重光外相。対ソ静謐の保持をひきつづき方針にするなら、小さなことを問題視するな。
杉山が、7日のソ連機の国境侵犯撃墜事件について語ったら、東條もサトケンも知らなかった。下僚のところでストップしていたのだ。杉山いわく「陸軍省の下僚はあまりにインテリすぎる」。
S18-6-12、東條の帝国議会演説。
私は最近、中華民国、満洲、比島を訪問した。
「中国人の中国の理想は着々として、達成せられつつあるのであります」。
ビルマ独立準備委員会は5-8に結成された。
比島には今年じゅうに独立を与える。
米英は、「悪魔の如く」平和を撹乱している。
米英は、他国を誘って、矢面に立て、一度、利あらざれば、弊履のごとく棄てて顧みず、かつての宣言、約束の如きは、唯、一片の反古として、葬り去っているのであります。
今回政府は、府県会議員の選挙も行なわないことにした。法律をつくって。
S18-6-12、連絡会議報告。
南方では、なるべく現地住民に経済活動の分野を与える。
パーム油、マニラ麻、コプラ油の生産を戦前水準まで復旧させる。
沈船の引き揚げと修理を極力促進。
6-19、連絡会議決定。
北樺太石油と石炭の利権は、ソ連側に有償で移譲する。
6-26、連絡会議決定。
比島は独立させたら適時に米英に宣戦せしむ。
6-29、連絡会議。
東條は、飛行機が500機減産になったが統帥は大丈夫かと質問。サトケンは、500機ではなく1000機だと発言。
杉山の返答。あらかじめ覚悟していたこと。減産については、空船を利用し、回復に協力したい。
東條。現在の戦線は国力以上に延びすぎている。
海軍軍務局長。商船の直接護衛、一貫護衛を強化しているところ。来年3月までに、海防艦30隻、19年度以降は年間100隻建造する。陸軍機にも哨戒をしてもらう。
S18-7-19、連絡会議。
日緬条約案の「互恵」という字句に統帥部が文句をつけている。
外相。互恵という表現が弱小民族の気持ちにぴたりとはまるのだ。
杉山。共存共栄にあらためろ。
外相。あらためない。統帥部が外務大臣の自筆草案に異議を申されるのならば辞職する。
東條。これは外相に一任したい。
けっきょく、「共栄」と書き変えることになった。
7-31、領土問題に関する日タイ間の交換公文。
日本軍の戦跡、日本兵の墳墓、記念営造物の設置や保存に便宜をタイは提供する。
8-2、連絡会議。
抑留ソ連船『ノーギン』について。
海軍軍務局長。佐藤大使の対ソ折衝は粘りがない。餌のみ取られている。
海相。大型輸送機なんて急速整備できるもんじゃないから、19年度の国家動員計画から削除したい。
乙地域よりの食糧輸入はしないことにしたい。日満支は食糧を増産自給すべし。
S18-9-9、連絡会議。
イタリアは今後、敵国として扱う。
9-15、連絡会議。
日独共同声明。
統帥部としては、戦後経営に関する深遠崇高な政治目標を中外に宣揚したかったのだが、ドイツを説得するのに時日を要して好機を逸することを考え、おざなりな声明で妥協した。
9-18、連絡会議。
日華基本条約改定条約締結要綱。
青木。大東亜戦争完遂のための共同宣言を条文中で再確認するなんておかしい。削除せよ。この宣言は枢密院会議を経ているから、条約に等しいものである。
外相。その共同宣言は条約ではない。
青木。官報にも条約第一号とある。
外相。条約第一号という型式は知らず。
北清事変最終議定書に基づく駐兵権は、之を抛棄す。
9-20、連絡会議。
大東亜大臣と企画院総裁は、新条約を「基本条約」と命名させたがった。
重光は、一人でそれに猛反対。
議場はシーンとして空気が険悪化した。
軍令部総長。同盟条約といおうが、基本条約といおうが、どっちにしても重慶は転んでこない。
これで一同哄笑。
東條。日華同盟条約は、支那事変のみを対象とするもので、大東亜戦争は共同宣言にて律する。
9-21、連絡会議。
重慶政府に対し、対米英宣戦までは要求しない。
9-24、連絡会議。
世界情勢判断で紛糾。海相いわく、これじゃ敗戦必然論ではないか。
東條。ソ連は本戦争を利用して世界赤化を謀っている、と挿入しろ。
蔵相。米国は戦後の日本を防共に利用する意思はないのか。
サトケン。たといそれがあるとしてもそんなことを情勢判断に明示するもんじゃない。
国民政府を指導して対重慶工作をさせる役目。大東亜省と外務省のどっちが仕切るかだが、青木vs.重光の対立が深刻なので、東條が担任することになった。
9-25、連絡会議。
海相。今後採るべき戦争指導の大綱で、「帝国は独力戦争完遂の決意」としているのは、あたかもドイツが脱落することを予期しているようなので、削除せよ。
9-27、連絡会議決定。
帝国はムソリーニを首班とするファシスト共和政府をイタリー国の正当政府として承認する。
9-29、連絡会議。
統帥部、特に海軍は、19年度の航空機の生産目標を5万機にしろという。しかし現実的には4万機。生産の責任大臣(企画院総裁)が奏上するとき、無責任な数字は出せない。
比島側は、独立と同時に海外派兵を命じられるのではないかとおそれている。
9-30、御前会議。
外相。ソ連はポーランドを復活させたくない。米英は、赤化干渉地帯として復活させたい。
枢密院議長。ソ連に参戦させないように、樺太利権や漁業問題は譲歩してくれ。※原は実質、昭和帝の代弁者になっていると想像できる。宮中がソ連参戦を特に恐れるようになってきた。
原。絶対確保すべき圏域とはどこか。4万期あれば絶対確保圏を確保できるのか。
軍令部総長。今後どうなるかわからぬ戦局の前途を確言することはできぬ。(議場にわかに緊張す。)
杉山。作戦上は5万5000機欲しい。しかし国力を賭してもできないときは、やむをえないから、機動力を利用して数の不足を補うつもり。
原。セレベス島でマラリアが流行しているが、海軍にキニーネがなく、陸軍がおさえていて海軍にくれないという。
海相。セレベス島のことは昨年聞いたがそれは噂である。軍需省の発注の統一はむずかしい。海軍内部でも、艦政本部だけの発注統一ができないのだ。
世界情勢判断。
米の戦争目的は、米国中心の世界体制を確立することと、日独、特に日本の完全屈服にある。※大勘違い。日本など眼中にないのに。
米国はソ連を対日戦に導入するように努めるだろう。
英の戦争目的は、独を完全屈服させて戦前勢力を維持することにある。
しかし、ドイツを生かしておいてソ連に対する防波堤に利用する策もあり得るだろう。
米国の生産力は1943末にピークに達した。この水準がこれからも維持されるだろう。食糧は、他国に廻す分としては、中南米に頼るはずだ。
S20には、米海軍の戦艦は23隻、空母は37隻になるだろう。
独ソ戦の最前線は逐次に西へ移動している。ドイツは英米にもソ連にも決戦を強要することができず、大規模空爆を受けつつある。
米英ソは、明年春夏に、決戦をしかけてくるだろう。
ドイツの弱点は、空襲を受ける立場となったときに、国防圏か狭いこと。
東條。進んで対ソ関係の好転を図らねばならぬ。
軍令部総長の説明。帝国自衛のための戦争は、東亜地域における国家民族の解放、自衛を目的とする。
ソ連を刺激して、中立条約廃棄の口実を与えてはいけない。
独ソを和平させ、ソ連が地中海(イタリア領)やトルコに進出するように誘導するのが良い策ではないか。
ソ連の攻勢は食糧不足から挫折するだろう。しかしソ連と英米の関係を簡単には分離できないだろう。
ソ連はボスフォラス海峡に関して米英に譲歩を強要せんとしている。
鈴木貞一&岸。船舶の実情からしてとうてい増産は無理だから、戦域を小さくせよ。あるいは統制を強化すれば増産の可能性もあるから軍需省に船舶も仕切らせろ。
S18-9-25、連絡会議。
本年末には、保有船腹量は、底をつく。
開戦以降、S18-9-20までに、敵潜によって290隻の商船が沈められた。飛行機によっては75隻。機雷によっては29隻。海難でも51隻を喪失した。
米ソを離間させるような宣伝を強化する。
10-9、連絡会議。
タイのピプン首相は、大東亜会議には、職を賭しても参加しないと言っている。
主任課。タイは東洋におけるイタリアになる虞れがある。
10-13、連絡会議。
昭南において抑留したイタリアの3隻の潜水艦は、ドイツに無償譲渡す。『アキラ』2号、3号、6号。独海軍が日本への連絡輸送のために使っていた。
遣独伊連絡使は、現地において之を解散す。
10-21、連絡会議。
青木がまとめた大東亜共同宣言案が袋叩きに。主務者の面目失墜す。
東條。文章がダラダラしていてピリッとしてない。
海相。理屈っぽすぎる。
サトケン。人種的差別の撤廃を謳え。
S18-10-23、連絡会議。
第八十三回帝国議会では総理は次のように演説する。
国論分裂の虞ある者に対しては、断乎たる処置に出る。
農商省、軍需省、運輸通信省を設置する。
学生等に対する一般徴集猶予を停止する。
さる10-21にインド仮政府が樹立した。23日に同政府を承認すると表明した。
10-27、連絡会議。
30日に「日本国中華民国同盟条約」を締結する。S15-11-30調印の日本国中華民国間基本関係に関する条約は、その一切の附属文書とともに、本条約実施の日より、効力を失う。
本条約は署名の日より実施される。
S18-11-6、持廻連絡会議。
ボースが上京して東條と会談した際、アンダマン諸島とニコバル諸島をインド仮政府にくれというので、大至急そうすることに決め、上奏御裁可を経た。
12-3、連絡会議。
カイロ会談について。独は黙殺するだろう。
杉山。病院船『ブエノスアイレス』丸が撃沈された。その他にも、敵の攻撃を受けた病院船は、陸軍のものだけでも8隻ある。単に新聞で書き立てるだけでなくて、国際法に照らして厳重抗議せよ。これについては復讐攻撃をしたい。
東條。その実行はさしひかえられたい。米国は毒ガスを使いたくて「ぞくぞく」しているので。宣伝の程度にとどめてくれ。
12-4、連絡会議。
カイロでスタが初めてFDRに会ったということは、米英は第二戦線を開くことをスタに約束したと考えられる。
対日問題について米英ソの意見一致はまだ無いだろう。
蒋介石をまじえた四者会談をしていないから、ソ連の対日態度はさしあたり変わるまい。
S19-1-17、連絡会議。
第八十四回帝国議会での総理大臣演説を決める。
最後の勝敗のわかれめは、真に紙一重であります。
闘志を一歩でも早く、失った方が、参る。
最近、タラワとマキンで、我が勇士は、数倍、十数倍の敵を殪して玉砕している。
米英は、大東亜各地域で、都市の非軍事施設を盲爆し、無辜の民衆を、殺傷致して居るのであります。
米の説く理想や人道が空虚であることは、米人の支配下にある黒人を見ればわかる。
1-25、連絡会議。
準備と実行を明瞭に区別せよ。準備したるがゆえに実行す、との錯覚にとらわれざること必要なり。
S19-2-5、連絡会議。
ポルトガル政府のチモール視察のとき、平文電報は好意的にサービスしてやれ。
2-9、連絡会議。
20総トン以上の機帆船の徴傭は、自今は、大本営政府連絡会議の議を経ること。
2-19時点の海軍側の空気。
本年の上半期に一切の力を出してのるかそるかの決戦を企図しているようだ。中堅以下の将校は必勝の信念が揺らいでいる。生気がなく、自棄的態度を見せる。こうなるとこれからは陸軍が海軍の士気振作の役を引き受けるしかないかも。軍需省や運輸省も、また陸海軍が計画を破って船舶を徴傭するというので動揺。