サウジが「自衛戦争」を発動したらトランプは止める側に回るのか?

 だんだん分かってきたこと。または、推理できるようになったこと。
 1500km飛んで特定施設に突っ込む自爆無人機などは無かった。イランの航空機技術はまだそこまで行っていないのだ。
 すぐ北のイラク領もしくはイラン領から、レンジ800km未満のオーダーで自爆無人機が飛んで来たと考えると、いろいろと辻褄が合う。
 犯人はIRGC(イラン革命防衛隊)だろうから、米軍は、IRGC関連の施設だけを報復爆撃するための《目標選び》を正確に選別しないといけない立場だ。もしIRGCと無関係なイラン国内の目標を無差別空爆すると、イラン人民はIRGCのもとに団結してしまう。これが米国にとって損になることを米国務省は分かっている。IRGCはイラン大衆の間ではとっくに不人気なのだ。
 米国は、爆撃をサウジ空軍に実行させるのではないか。サウジには自衛権があるから誰もそれに文句は言えない。
 米国が苦心しているのは、サウジ空軍(と人殺し王太子)がイラン空軍を一挙に覆滅したがっているのを阻止する説得であろう。イラン空軍は実は近代人の集まりであって、IRGCとは対峙極にある。ぶっちゃけ、イラン空軍は米空軍のお友達である。心情的には、今も。米空軍は、将来、イラン空軍を利用できると考えている。イラン政府もまた自国の空軍を信用しておらず、ロクな装備を与えていない。優良装備は、すべてIRGCが持っている。
 しかし、サウジはイランが核武装したらただちに空軍力でイランを壊滅させるつもりで、これまで米国から厖大な装備品と需品を買ってきた。それを使わないで我慢するわけにはいかないだろう。イランの核爆弾運搬手段は、好機あらば、すべて潰しておきたいと念願しているはずだ。
 サウジは米国に対する不満を有する。大枚をはたいて買ったPAC-2は、フーシのスカッド迎撃には有能なのだが、自爆無人機を阻止できない。米軍は、これも宥めねばならない。
 小型で低速で超低空の自爆無人機を阻止するのに適当な防空システムを、米国メーカーはすぐには提供ができない。これから開発しましょうかという話になってしまう。西欧メーカーはすでにいくつか近距離SAMシステムを持っているが、西欧はサウジ政体を圧制と看做しているので、ハイテク兵器を売り渡せない。サウジ指導層は憤懣をつのらせているところだろう。
 サウジにとって、現在イエメンに対して続行しているような「低烈度」の長期戦争を、対イランに対してあらためて開始するのは、悪い選択ではない。というのは、それによって国際油価は高止まりする。サウジの財政は好転し、しかも、空襲下のイランには、核兵器やそれを運搬するシステムの開発、量産、配備が難しくなる。
 原油が高止まりすると中共は勝手に沈没してくれるから、トランプ政権(特にナヴァロ氏)にとっても、悪い話ではない。米国内の自動車ユーザーはガソリンが上がって不平を言うが、トランプは、「それは米国のせいではない(イランとサウジのせいだ)」と胸を張って言える。
 イスラエルは、サウジがイランと戦争状態になってくれるのを熱望している。水面下チャンネルで、その意向をトランプに伝達しているはずだ。
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 Liu Zhen 記者による2019-9-16記事「China unveils supersonic spy drone during National Day military parade rehearsal」。
    10月1日の国慶節パレードに、超音速無人偵察機が引き出されることが、SNSに流出したリハーサル写真によって判明した。
 UAVは2種類引き出される。そのうちひとつはDR-8(別名、烏鎮8)、もうひとつは攻撃ドローンの「利剣」だ。
 ※烏鎮は浙江省にある市の名前。
 〔有人U-2にこだわりたかった〕米空軍が40年以上も前にお蔵入りにさせた小型無人偵察機「D-21」を、中共が復活させた形になった。
 D-21は冷戦時代に中共本土に何回も偵察ミッションで送り出された。そのうち何機かは墜落していて、残骸は中共により多数確保されている。
 ひとつの残骸は数年前に北京の軍事博物館で展示された。
 DR-8の用途は、米空母の所在をつきとめて、東風21Dおよび東風26の発射部隊に知らせることだろう。〔いずれも、一度も標的艦に命中させたことのない、ナンチャッテ対艦弾道弾。〕
 北京の一軍事解説者によれば、DR-8は、D-21よりも高速である。ちなみにD-21はマッハ3.3を出すことができた。
 中共はこれまで何度か、グァムまで無人偵察機を到達させている。
 一解説者によるとDR-8は少し前に軍に就役したと。
 パレードには東風17も引き出される。RVに機動力が与えられたもので、迎撃側からは落下弾道が予測できなくなる。