いきいき地獄

 Yuri Lapaiev 記者による2019-11-20記事「Russia’s Black Sea Dominance Strategy?A Blend of Military and Civilian Assets」。
    国際法では黒海で実弾演習するのはどの沿岸国にも自由だが、それには国際海洋機関に公式のリクエストを提出しなければならない。

 しかるにロシアは2019夏、何の事前通告もせずに黒海で演習を実施。ジョージア、ブルガリア、ルーマニア、ウクライナの艦船の自由航行を妨害し、海上封鎖寸前まで追い込んだ。

 ロシアは「タークストリーム」「ブルーストリーム」という2系統の海底パイプラインを黒海に敷設中である。このパイプラインに外国船を近づけさせないために、新型の機雷堰「シェルフ」を黒海艦隊がいつでも構成できるようにする演習を2019-7に実施した。また、平時から他の沿岸国に近寄らせないようにこのパイプラインに沿ってロシア版のA2/D2を既成事実化すべく、あらゆるイヤガラセを他国艦船に対して実施中である。

 ※樺太からパイプラインを引いたりすれば、同じことが北海道沿岸で起きるわけである。

 ウクライナのシンクタンクによれば、やがてロシアは、バルト海でも同じことを始める。そこにロシアは「ノルド・ストリーム2」という新パイプラインを建設中なので。
 バルト海の商船密度は黒海とは比較にならず高い。大混乱が生ずるだろう。

 次。
 Karen Hao 記者による2019-11-20記事「A giant, superfast AI chip is being used to find better cancer drugs」。
       シカゴ郊外にあるアルゴンヌ国立研究所。そこでは、特定の癌を精密攻撃できる新薬を開発するために不可欠な、高性能AIチップの開発に挑んでいる。
 新薬や新型電池に求められる高機能な化学物質の分子構造についてシミュレートするのは、宇宙の歴史をシミュレートするのと同じくらいに、多数の計算を短時間に必要とする。
 いままでのチップでは、計算に何十年もかかってしまい、患者の寿命が尽きてしまう。だから高速AIチップが求められている。

 これを、ベンチャー企業「セレブラス」が試作した。ソフトウェアではない。AIのハードウェアである。

 現況ではAI計算に使われているのは、グラフィカル・プロセシング・ユニット=GPU。並列処理ができるCPUだ。

 しかしGPUはAI計算=ディープラーニングに特化したものではない。AI用としては無駄な設計になっているのだ。だから計算が遅い。早く仕事をさせようとしたら、倉庫のような規模のサーバーを構築する必要があった。莫大な電力をそれは消費する。

 しかし最初からAI用にチップを設計すれば、計算は1000倍の速さになり、電力消費量は現況よりも少なくできる。
 セレブラスのライバルのスタートアップ企業はすくなくも4社ある。競い合っている情況だ。

 セレブラスの試作チップは、アイパッド並の大きさ。詰め込まれているトランジスターは1兆2000億個。
 いままで数週間を要していた計算なら、数時間でできる。

 新薬の候補分子が、特定の腫瘍にどのように作用するかを、短時間の計算で予測できる。
 また、複数の種類の腫瘍に、ひとつの新薬がどのように作用するのかも、予測できる。
 複数種類の薬の投与が、ひとつの腫瘍にどう作用するかも。

 このチップを使えば、リチウムを使わない高性能電池の発見も早くできるだろう。