リミックスジュース

 Matt Tuzel 記者による2019-11-28記事「Making the Case for Increased US Basing in the Pacific」。
   米軍は太平洋域に新しい基地をもっと増設して「ハブ&スポーク」を構築しなければならない。軸は、マリアナ諸島~パラオ~比島だろう。

 空軍用の航空基地の性格には、主作戦基地MOBと、それといっしょに並べておく連結作戦基地COBの2種類があると考えるべし。

 一般にハブ基地と呼ばれるものがMOBであり、そこには米空軍が常駐する(既存のものとしては烏山[オサン]、群山[クンサン]、嘉手納、グァムのアンダーセンなど)。

 COBはスポーク基地のことである。ハブ基地の周囲に点在する。

 戦争が始まりそうなくらいに国際情勢が緊張してきたら、MOBからCOBへの分散疎開が行われる。これは冷戦終盤の1986年頃に確立した考え方だ。適時に分散しないと敵の核奇襲でこっちの空軍力が全滅してしまう。

 MOBの資格は、港湾と太い陸上交通で接続されていることである。

 空軍の戦闘機を運用するには滑走路長は8000フィート以上なくてはならず、爆撃機や大型偵察機の運用となったら1万フィートが必要である。

 MOBは大都市から労働力や物資を供給してもらいやすい。

 米軍が西太平洋域にMOBしかもっていなければ、中共の火箭軍の仕事はごく簡単である。
 しかし米空軍がMOBの周囲にCOBを多数維持できていたなら、中共軍は米空軍を開戦劈頭のミサイル奇襲で一掃することはできなくなるだろう。

 DoDが連邦議会に提出した最新の見積もりでは、中共軍は総計570台の陸上発射台(TELを含む)を保有している。そこから、短/中距離の地対地ミサイルや、ICBMまでも発射できる。

 中共軍がグァム島を攻撃できる地対地ミサイルは「東風26」で、80基を指向するだろう。
 他は、マリアナ諸島やパラオ諸島を狙うだろう。

 比島のクラーク基地やスビック湾は、マリアナよりもずっとシナ本土に近い。

 ドゥテルテ大統領は2022年まで任期がある。おそらくそれ以降でないと米軍基地の比島への再展開は無理だろう。

 しかしルソン島内に米空軍基地を設けることができたとして、そこからたとえば台湾防衛作戦のために飛行機を発進させられるかどうかは別問題。2003年のイラク侵攻作戦のとき、トルコはその国内基地の利用を米軍に対して禁じた。それと同じことが起きるだろう。

 パラオ諸島のコロール島には港と飛行場がある。滑走路長は7200フィートである。輸送機ぐらいなら利用できる。
 ペリリュー島とアンガウル島にも米軍基地が置かれている。

 ペリリューの滑走路は長さ6000×巾40フィートだ。今は使えない状態。
 アンガウルの滑走路は7000×150フィート。

 これらの滑走路を8000~1万フィートに拡張工事できれば、有力な基地になる。

 コロール島は観光客の多いダイビングスポットだが、ペリリューとアンガウルはそうでもない。だから基地化させやすい。

 クァムの弱点はスポークをともなっていないことである。サイパンかテニアンに、COBを整備すべきである。

 グァムの中にも、米海軍が「オロテ・フィールド」に4000フィート滑走路を持っている。これも拡張工事することだ。

 北マリアナ諸島はグァム島と違って米領ではないが、米国が指導できる。
 テニアンもサイパンも8000フィート滑走路を有する。テニアンはグァムから120マイル、サイパンは140マイル離れている。

 また、サイパンとテニアンには、「廃滑走路」が複数存在する。それを復活させることもできる。

 テニアンとサイパンにPAC-3を展開すれば、それはグァムもカバーするだろう。※この一行で、この論者が勉強してきたことの底の浅さがわかってしまう。現役の空軍中佐でフーバー研究所にも参加が許されている人材なのに……。おそろし。

 ※馬毛島の基地はまちがいなく米空軍のダイバージョン戦略に資するだろう。