トランプポリシーの影響で艦艇ばかりたくさん調達しなければならなくなった米海軍は、予算確保のためP-8の調達を打ち切るという。

 退役米海軍中佐 Brian Dulla 記者による2019-12-2記事「The Moor-pedo: A Strategic Underwater Weapon to Re-shape Naval Conflict」。
   第二次大戦終結後、これまで、世界で最も多数の艦船を撃沈破している兵器は、機雷だ。その総計は、他の兵器による撃沈破数の合計よりも、多いのだ。

 機雷はブロケイド作戦にも使われる。
 機雷の大別。繋維か、沈底か、浮遊か。触発か、感応か。

 米海軍の機雷の在庫。クイックストライク三種の他は、Mk-67潜水艦投射式機雷があるだけ。
 ※2019年時点でもうCAPTORはゼロなのか?

 1907のへーグ「コンヴェンション VIII」が最初の機雷に関する国際法である。その次の機雷関係の準則は、公海は民間船にとって自由であるべきだと強調した1982のUNCLOSである。これは米国は署名していない。しかし「領海12海里」は、このUNCLOSで定まった。

 2016年に国防総省は『Law of War Manual』というガイドライン&ポリシーを定めたが、その中で「機雷は合法的な兵器である。ただしその使用には特別なルールが適用される」としている。この中で準拠されているのは「コンヴェンション VIII」とUNCLOSである。

 同ガイドラインはいう。
 平時に他国の領海や内水に機雷を敷設することはできない。ただしその国の同意があったときは別。

 もしある国がその国の領海や「群島水域」内に、活性化されている機雷を敷設したときは、国際社会にその存在と場所を告示しなければならない。

 活性化されている機雷を、国際海峡や、群島航路帯に、平時において敷設してはならない。

 遠隔管制機雷(視発機雷)を自国の群島水域内や領海内に敷設した場合、それは国際社会に告示する必要はないし、「コンヴェンション VIII」で定められている除去義務の対象にもならない。

 遠隔管制機雷を平時に公海に敷設することもできる。ただし、他国の艦船がその海面を合法的に利用することを理不尽に妨げることがないならば。

 遠隔管制機雷が、航海にっての実質的な障礙とはなっていないのならば、敷設国は、それについて国際社会に告示する必要はない。

 活性化されている機雷を、武力紛争が始まる前から航海に敷設してはならない。

 米海軍は、平時に機雷を敷設することには及び腰だ。信頼できる管制方式が未だ無く、米国の艦船や中立国船を沈めてしまいかねないので。

 もうひとつ。機雷を敷設するプラットフォームは高額で、それらには他にもっと優先したいミッションがある。クイックストライク機雷(500/1000/2000ポンドGP爆弾に減速装置、磁気センサー、尾部信管などをとりつけて沈底機雷にコンバートしたもの)は対潜哨戒機かF/A-18で撒かなければならない。これらの機種には他に仕事がある。
 Mk-67機雷(SSNの魚雷発射管から打ち出し、1本の魚雷から2個の沈底機雷を投下する。魚雷は使い捨てる)の魚雷庫には、他に積んで行きたい兵装がある。

 海軍航空隊の指揮官にとって機雷撒きなどというミッションは二の次、三の次のプライオリティしかない。かといって機雷戦指揮官には、それらプラットフォームの運用権が与えられることはまずない。

 特に攻勢的な航空機雷敷設は、制空権を確保してないうちに敵地沿岸に対して実行させると、海軍航空隊に許容できない損耗を強いてしまう。

 機雷戦のパラドックス。
 攻撃的な、つまり敵地沿岸に対する機雷敷設は、開戦前夜に実行すべきである。ところがその行為は戦争行為そのものであるので、米軍のROEでは当然に禁じられるのである。
 さりとて、いったん戦争が勃発したあとで攻勢的な機雷敷設を試みても、敵の軍港からはすでに潜水艦も水上艦も皆出払っているし、ぎゃくにこっちの機雷撒き用航空機が何機も撃墜されることになってしまいかねない。

 そこで今、ハイテクの管制機雷が研究されている。これができあがれば、法的な問題がクリアされるのだ。

 南北戦争中の1864年、モビル湾にて、北軍艦隊のデイヴィッド・ファラガット提督は「南軍の仕掛けた機雷原がなんだってんだ。全速前進!」と命じた。当時、繋維機雷のことを「トーピードー」と呼んだのだが、その後、トーピードーは魚形水雷の意味で通用するようになった。
 それから150年、繋維機雷と魚雷の機能はUUVの中に統合可能になった。「繋維魚雷=ムーア・ピードー」と呼ぼう。

 この新型スマート繋維魚雷を敵軍港のある海岸から12海里強離れた公海に平時から敷設しておき、無線で活性化させられるようにしておけば、国際法上、なんの問題もない。

 魚雷を内蔵した小型UUVにアンカーとアンテナをとりつけて、海中に繋維しておくのである。

 アンテナはブイによって海面に達し、イリジウム通信衛星との間で信号を送受する。
 その信号によって活性化したり安全化する。

 アンカーはUUVに内臓されており、プリプログラムされた座標まで自航すると、じぶんで繰り出して投錨する。アンカーは一回きりの使い捨てだ。

 感応センサーは敵の艦船の特性を識別する。磁気、音響、水圧で。触発でも起爆する。
 UUVには成形炸薬の実用頭部がついている。

 UUVが自己位置を知る方法として、衛星航法電波の受信、内臓INS、そして海底地図と照合ができるサイドスキャンソナーがある。

 「ムーア・ピードー」は、敵軍港外の一点で、出入りする敵艦船を待ち受ける機雷であるとともに、軍港内に碇泊している敵軍艦にみずから低速で忍び寄って自爆する「微速駛走魚雷」にも変身できる。その場合はUUVは自分で錨鎖を切断するのである。

 遠隔管制指令式だから、開戦前の、たとえば中共政府と交渉中に仕掛けてもよい。

 自航で敷設されるから、開戦後に仕掛けるのにも、プラットフォームの損失を気にしないでよい。
 敵艦船が補給や修理のために軍港に戻ることも、このムーア・ピードーのために、できなくなる。

 長時間の低速遊泳ができるUUVは、艦艇やヘリコプターから夜間こっそりと海中に投じられ、敵軍港前の公海中を遊弋する(いきなりアンカーをおろさない)。
 そして中共との関係が緊張してきたところで衛星経由の信号を送って、アンカーをおろさせる。だが、まだ活性化はしない(休眠状態)。よってそこは公海だけれども国際法上の問題は生じない。

 投錨した状態ではUUVは、電池の節約モードに入ることができる。

 開戦に至らず、中共政府と米国政府の話がつけば、イリジウム経由で回収コマンドを送る。するとUUVは錨鎖を切り捨てて、あらかじめプログラムされている、公海上の揚収用のポイントまで、自力で戻ってくる。
 それが不可能な場合は、その場で自爆/自沈し、無害化する。

 無線連絡に依拠せず、海中の音響信号だけで活性化や回収を命ずることもできるだろう。その場合、信号を伝令するための専用のUUVを放てばよい。

 このUUVは、浅海面では、感応式(非触発式)の沈底機雷になる。その場合、アンカーは必要ない。

 碇泊中の敵艦艇に対する微速自走魚雷になる場合には、あらかじめ、衛星経由で、目標の精密な座標を知らされる。
 さらに現場では、小型のUUVで敵巨艦の艦尾を確実に破壊する、といった細かい芸当が可能。

 次。
 ストラテジーペイジの2019-12-3記事。
     タイ海軍は、7箇所ある軍港を敵UAVから守るため、イスラエル製の「スカイロック」を440万ドル分、発注した。このシステムはレーザーなどを使ってクォッドコプターレベルの小型UAVも探知し、飛行進入を妨害する。