interview with──2010年を振り返る

(2010年に旧兵頭二十八ファンサイト『資料庫』へUPされたものです)

(管理人より)

クリスマスである。
私は京都へ3ヶ月前に引越しした。人事異動でだ。仕事場は滋賀に変わった。
職場近くにショッピングモールがある。クリスマスツリーがあり、七夕のように紙片に願い事を書いてツリーに吊るせるようになっている。大抵は、子供か──学生が恋を願っているものだが、完全に大人の達筆で1枚[民主党の支持率があがりますように]と書いてあって、たまげた。
民主党の支持者は確かに、いる。
かように強固な信念をもって生きているラオウやサウザーなら別に構わないだろうが、普通の人はうつろう世相、師走の空気にふと、一年を振り返ってみたくもなる。振り返った言葉を聴きたくもなる。
そこで兵頭先生へのインタビューである。
なお、京都に住んでいる管理人と、函館在住の兵頭先生が一体どこでインタビューなど行ったのか ── 絶対に詮索してはいけない。


兵=兵頭先生
管=管理人

 

管:今年もいろいろございましたね。

兵:2009年はJSSEOでキリキリ舞いでしたが、2010年の前半にその整理をつけまして、それでとうとう50歳ですからね。まあ、こやつは日本のためにできることはいちおうすべて試みたのだ、という後世へのアリバイくらいにはなってくれますでしょう。わたしは川崎市に住んでいた院生時代に銭湯で、見知らぬ謎のじいさんから声をかけられ、「あんたは50歳になる前にすごい偉いことをするよ」と予言されたのを、これまでずっと心の支えにしてきたんですが、予言は当たらなかった(w)。この予言なくば、わたしはJSEEOもやっていなかったでしょう。ワハハですわ。

管:『大日本国防史』は年内に出ませんでしたね。

兵:5月に本文を脱稿しましたが、その時点でなんと、小生が2007年11月に渡したはずの劇画のシナリオの一部が小松さんに渡っていないことが分かりましてね。けっきょく、戦国時代とハルノートの謎に迫る2篇のシナリオが作画されないことになりました。もう共著はかんべんして欲しいという気持ちです。短いものでもシナリオ1篇書くのにどのくらいの「諸資源」が投じられているものか……。これが最後っす。宣言します。もちろん、この企画をいただきましたことにつきましてはたいへん感謝しております。

管:サワリの部分でもご紹介願えませんか。

兵:最後の方にサラッと書いてありますが、明治天皇は名君じゃないですよ。ロクなことしてません。明治維新は偉大でしたが、明治天皇はただの反動君主です。周囲が偉かったのです。ここがご老人揃いのバカ右翼どもにはなかなか分からぬところだ。それで「教育勅語」なんかを有り難がっているのですよ。教育勅語が明治維新の精神とまったく相容れないことも理解できないような反近代的な団体とはわたしは距離をおきますよ。あ、これ、「新風」のことです。念のため。イニシアチブを発揮して偉かったのはなんといっても昭和天皇ですが、それは「古代南洋天皇制」の理想とは違います。

管:詳しいことは1月のご新著を楽しみにしたいと思います。劇画はむずかしいものなのですね。

兵:この歳になり、ようやく、江藤淳がどうしてマンガ・劇画を拒絶し続けたかが、わかるような気もしてきました。読み手によって、想像力や解釈力には、個人差がありすぎるのです。書き手と読み手の間にある、とてつもない「壁」を、いちばんうまく埋めてくれる――といいますか、橋渡ししてくれますのが、テキストなのです。たとえば読み手が1日の勉強でちょっとだけ利口になれば、同一のテキストから再生できる情報のレベルが、てきめんに上がるのですよ。イデアを伝える信号として、自然言語のテキストが、じつは人が望みうる最上のものだったのです。これ以上のものなど、ありはしなかったのです。たから文体は人格をも越える。感心させられる文章を書く人が、会ってみるとくだらない人物であることがあります。その逆もありますが……。それは不思議なことではないのです。それほど、テキストという道具が凄いのです。

管:尖閣事件を契機に『2011年日中開戦』はバカ売れしませんでしたか?

兵:してないですね。どうも時代から2歩以上先を行ってしまうと、商売的にはダメですね。

管:NHKの『坂の上の雲』はいかがですか。

兵:わたしは最初から1本も視聴していません。日本のドラマはもうNHKだろうと学芸会レベルでしょ。しかし女房はよく視てるようです。わたしは早寝をするため、居間を通りすがりにそれを覗くことがあるんですが、『ひでぇもんだ…』と確認するのみです。NHKは司馬の墓前に詫びるべきだね。遺言に背いてあんなもの作ってるんだから。

管:日露戦争にはもう謎は残っていないでしょうか。

兵:「伊集院信管」が最後の謎だと思いますよ。まあ、史料はどこにもないでしょうけどね。弾底信管でありながら、空中線のワイヤーにかすっただけでも起爆したといわれるのは本当だろうか? たぶんそれは大口径の戦艦の砲弾ではなくて、慣性質量の小さい副砲弾だったろうと想像しますが……。大口径の砲弾でそこまで瞬発だったとしますと、普通の「水柱」が立たぬだろうと思うのです。

管:2011年はどんな年になるでしょうか。

兵:一寸先は闇ですね。それに尽きます。しかし、暖冬になるんじゃないかという予感だけは、救いですかね。日本一国だけ暖冬っていう……。

管:ラジオのポッドキャストが足踏み状態のようですが……。

兵:JSEEOが終わってしまったのと、同時に体力が尽きてしまったので、もうダメです。すいません。宝籤で2億円くらい当たれば、時間と気分の余裕も出るのかもしれませんが……。

管:「ネット乞食」作戦の調子はいかがでしょうか。

兵:それをわたしが言うとポッドキャストの管理人さんが怒るんですよね。だから不本意ながら自粛を余儀なくされてしまいましたよ。あ、いつもいろいろモノをくださっている方々、この場を借りまして、篤く御礼を申し上げます。貰っていちばん感心致しましたのが、「フリーズドライのアマノフーズ」の即席かゆでした。広島県の天野実業(株)製。これがもし戦時中にあったなら日本兵百万人が救われただろうなと考えつつ、かみしめた次第です。マグカップにお湯を入れるだけで、いろいろなお粥ができてしまう……。まあこの地球には、イスラエルみたいに国家ぐるみの乞食まであるわけですから。NGOなんて早い話、みんな乞食じゃないですか。それを恥じるのはおかしい。世の中はすべて分業です。仏教僧にとっては乞食こそ修行でしょ。それはなぜかを考えてみてください。ケチなプライドを捨ててみろってことですよ。とるにも足らん世間の悪口に一喜一憂するのは餓鬼ですよ。

管:この頃は、夜に走ってトレーニングとかは……?

兵:ぜんぜんしてません。ひきこもり状態に近いですな。しかし老人らしく朝の3時台には目が醒めますので、夜明け前に散歩をしてますよ。これは、毎朝コースを決めたらダメです。カントのようにボケてしまうでしょう。毎朝、コースを変えるのが、じじいの精神の緊張には良いと思っています。あと、犯罪者に間違われないよう、風体にもそれなりの気を遣うべきでしょうなあ。

管:「ソラ玉」報告は打ち止めでしょうか。

兵:アッと驚く新製品が2010年は出ませんでした。これこそ驚くべきことじゃないでしょうか。ぜんぜん進歩してないってことですよ。進歩が止まっているんです。だから買ってません。ソーラーは、工事用の点滅標識を除きますと、当分、見込みがないかもしれません。それと、安価な製品は、紫外線対策ができていないので、落下したりするとすぐに割れるようになりますね。その点、例のインド製のは、凄い。ポリカーボネイトなのに、何年経っても紫外線では変質しないようです。ピカイチですが、市販電池で交換すると、パフォーマンスが劣化してしまうんですよね。しかも最近、通販でも売ってないみたいだし……。

管:来年がより明るい年になると良いですね。

兵:みなさまの御多幸を、心より、お祈りします。今年一年、どうもありがとうございました。

おしまい