(2010年に旧兵頭二十八ファンサイト『資料庫』で公開されたものです)
(管理人より)
昨今のコンテンツ[兵頭二十八の放送形式]における衝撃のタイトル群──缶詰、乾パンの喜捨募集。
まさにショッキングである。しかし、大半の人が[兵頭二十八先生の冗談ではないか?]と考えた筈だ。
真相を明らかにするための、インタビューである。
結論からいえば──冗談ではなかった。
兵=兵頭先生
管=管理人
管:久々に近況インタビューをやろうと思います。調子はどうっすか?
兵:町に大勢の失業者が溢れている中、カップラーメンと袋ラーメンとカロリーメイトとスパゲッティと缶詰をめぐんでくれる人がいたので大助かりです。乾パンが届かなかったのは遺憾ですが……贅沢は言えません。
管:生活にお困りなのでしょうか?
兵:著述を主とする自由業は、常に綱渡りなのですよ。じつは、『たんたんたたた』と『グリーンミリテク』の印税が4月末に入るだろうと予期していたら、5月中旬だというので、困った事態に陥りました。それしき、一人暮らしなら何でもなかったところですが、40歳過ぎの夫婦は年金保険料が莫大ですから、冬の灯油代も重なって、急激にピンチに陥ったのです。ホント、GWというのは有害ですよ。多くの自由業者と日銭稼ぎの労務者を現実に不幸にしている悪制度ですよ。この際、国定の祭日は、正月元旦と、天皇誕生日だけに減らすべきでしょう。その分、月曜の午前をぜんぶ休みにすればいいんですよ。もちろん市役所は逆に「24-7-365無休」としてね。
管:文庫の『たんたんたたた』は発売が半年以上も前ではなかったですか?
兵:まあ世の中には半年後とか1年後に売り掛けを回収してやっと従業員の給与を払ってやれるのだという事業所も多いでしょう。製造業や建設業の下請け、孫請けなどでは、よく聞く話じゃないですか。そういう人たちのことを思えば……。
管:印税って前借りできないものなのですか?
兵:駆け出しの頃に、編集者さんに頼んで前借りしたことがありました。中公の『軍学考』です。しかしその編集者さんはもうこの世の人ではありません。最近は世知辛いので、前借りなんてこっちからは言い出せません。そこでネット乞食を考えたのです。
管:なるほどネット乞食……それはうまくいったでしょうか?
兵:わたしは5月10日くらいまで生存するに足るラーメンと乾パンと魚の缶詰をお願いしようと思いついたのですが、なんと郵便受けに1万円を投入してくださった方がいたので恐縮いたしました。これで名実共に「オレは乞食だぜ!」と胸を張る資格を得たものと申せましょう。
管:現金は募集してないのですね?
兵:していません。わたしは袋ラーメンがあれば十分に生存できる人間なのです。スパゲッティならば御の字です。ところがウチの女房は「毎日麺だと飽きてダメだわ」とか贅沢を言いやがるのです。情け無い! なんというとんでもない不心得であることか……。
管:インターネット・ラジオ局のコンテンツが増えない理由は何でしょう?
兵:宝くじを拾ってそれが当たり、貯金が100万円くらいにせめて増えたら、気楽にあっちにもご奉仕できるのですが……。ホント申し訳ないです。小松さんがボーナス章を追加した『イッテイ』増補版CDの商材化作業を進めてもらいますので、ご注目ください。それから、お宝動画のオークションをしようかと思っています。
管:オークション?
兵:売り食いをする資産はないかと探していたら、出てきたのです。わたしが高校3年くらいのときから、自衛隊現役時代まで、光学8mmフィルムで撮影し、さらに編集し、アフレコの音までついたものまであるという、この世で1つしか存在しない、幻の映像です。内容は、1980年代のプラスチック製のモデルガンを発火させまくっているもの、自衛官時代に道東を単独旅行したときに撮影したものなど。当時、じつにくだらない「戦争映画」も作ったはずなのですが、それが入っているかどうかは未確認です。長尺な上に編集機や映写機などはとっくに捨ててしまいましたので、中味をすぐに確認できない状態なのです。しかし大小のリール2巻、全部で15分以上はありましょう。第二戦車大隊時代のわたしが山の中の演習中に自分撮りした映像や、長野市郊外の山の中で対磁性地雷コーティングを施されたタイガーI戦車を仕掛け花火で吹き飛ばしている「バルジの戦い」の映像などが含まれている可能性もあるのです。これを誰かが買ってデジタル化してくだされば嬉しいです。ただし、シングル・エイトとスーパー・エイトがツギハギになっていますから、これをデジタル化する時には注意深くピントを微調整して行く必要がありましょう(フィルムの厚さが微妙に異なっている)。詳しくは、インターネット・ラジオ局のお知らせ等をご注目ください。
管:次の出版のご予定などは?
兵:『大日本国防史』の前編は脱稿。発売日は並木書房さんにお問い合わせください。後篇は今、書き進めているところです。鎌倉時代末から室町時代中期までは、年表的に混み入ってくるので、さすがに疲労しますな。しかしやっと戦国時代の入り口まで来ましたよ。あとは一気呵成に行きたいと思っています。まあ、この後篇をとにかく書き上げないことには、新しい別な企画には着手できません。まる一日、ヒキコモリ状態で書いています。
管:『大日本国防史』の最初の予告はかなり前に出ていましたよね?
兵:わたしが劇画部分のシナリオを5つばかり提出したのが2007年でしたよ。その作画がまだ2つくらい残っているようですな。こういうめんどうな企画は、もう戦艦の造船所とおんなじで……。戦艦はキールを据えてから進水するまで4年かかる。その間、急に空母を造りたくなっても、乾ドックが塞がっていて工事は頼めない。そして、得られる印税は単著の場合の半分なのです。それが分かっているから急かすわけにもいきません。急いでもらった代わりの見返りなんて、何も無いのですからな。
管:放送形式の量も増えていますが……?
A:吉田兼好はひとつだけ感心することを言いました。それは、〈物をくれる友だちが、一番よい友だちだ〉というのです。これ以上の金言があろうか! わたしがインスタントラーメンをもらってしみじみありがたいなぁと感ずるように、皆さんが無料の軍事系の英文ニュース・ダイジェストを享受してくれることを希望しています。勝手な抄訳な上、間借りのブログなのですから、じつにお安いご用だ。こういうのが、わたしが無料で貧乏な読者の方々に差し上げられるモノではないかと、最近、気が付いたのです。マザー・テレサと同じ気持ちです。
管:しかし外国の軍事ニュースは充実していますよね。
兵:豊饒さが桁違いですよね。あれらの上に、有料のクローズドな媒体もたくさん存在しているのですから……。有名なのは『ジェーン』でしょう。わたしは乞食の分際ですから、有料媒体は購読してはいません。しかし朝の1時間~2時間くらいを使ってナナメ読みしようと思ったら、量的にはあれで一杯です。
管:有難うございました。ご活躍を期待します。
兵:おありがとうござい。
おしまい