(2003年頃に旧兵頭二十八ファンサイト『資料庫』へUPされたものです)
(兵頭 二十八 先生 より)
月刊『正論』3月号の連載コラム(ちなみにコラムとは柱の意味で、囲み記事を指すのが今では普通で、2頁以上ある長い記事のことは通常、コラムとは呼びません)「TMD幻想から覚めよ」の中に誤りが多数あるとの指摘を5月17日に手紙で受け取りました。その内容が信用できると思われましたので、この場を借りまして甚だ遅れ馳せながら訂正を公示致し度いと存じます。
訂正すべきだと思われた箇所は以下の通り。
○原子炉に挿入する新品の燃料棒には、天然ウランは約0.7%含まれている。
【記事では約0.3%としていましたが、それは誤り。より正確には、ウラン234が0.006%、ウラン235が0.712%、ウラン238が99.282%だそうであります。】
○ウラン235の比率を2~4%に高めた低濃縮ウランを使う原子炉(すなわち軽水炉のことである)から生産されるプルトニウムは、原爆材料としては性能が悪く、原爆材料に使用された実績もない。
【記事では、軽水炉からも原爆用プルトニウムが取り出し得ると断言しているようになっています。それは可能だとする学説もあるにはあるのですが、それを一線兵器用として量産しているような核大国は無いのでありました。】
○黒鉛減速・炭酸ガス冷却の「プルトニウム生産炉」でも、ウラン238のごく僅かがプルトニウムになるだけであり、具体的には、1トンのウラン238から、たった数百グラム(1000分の1未満)のプルトニウム239を取り出すことができるだけである。
【記事では、「内部のウラン238のかなりな部分がプルトニウム239に変身」としていますけれども、これは全く大間違いでありました。私の記事の熱烈な愛読者であるに絶対まちがいのない金正日大先生が、この誤てる情報から大いなる脳乱を得られたことを祈願致すのみであります。】
○再処理工場で溶出させたプルトニウムは、まず金属に変換しなければならない。
【いきなり「粉末」にはならないのであります。核兵器の中に入っているプルトニウムは、発泡スチロール状だと書いている本も見ました。金属とするのは、密度が高くなければ臨界せぬからであります。それを発泡スチロール状とするのは、プルトニウムはいつも出ている中性子がウランに比べて多いので、あまり密にしすぎるのもヤバいからでありましょう。】
○使用済み燃料に含まれる核分裂成生物からの放射線が強力である。
【記事では、プルトニウムの放射線が殺人的に強い、と書いてありますが、プルトニウムの放射線はアルファ線なので手袋一枚で止まる強度です。しかしこれが粉末として肺の中に吸い込まれたときに、発癌するのではないかと疑われてきているわけであります。】
○CANDU炉は、原子力委員会が、これからは輸入技術よりも、国産技術(新型転換炉)の方にしようというので、導入しないことに決めた。
【記事ではアメリカが圧力をかけて輸入を止めさせたと書いておきましたが、当時アメリカが日本の原子力施設で強い猜疑を向けていたのは東海一号発電炉—これは天然ウランを使える黒鉛炉で、各国の兵器級プルトニウム生産炉と同じもの—だけであったようです。それから、CANDO炉と書いたのも単純誤り。】
貴重なご指摘を下さった方、どうも有難うございました。
(管理人より)
訂正の指摘をされたのは「プロ」の方らしいです。やっぱ、「プロ」は凄いですね。