アマビエ vs プレデター vs エイリアン

 新コロの受容体が呼吸器系の細胞と心筋細胞にあるという話が本当で、且つ、新コロから恢復しても細胞にはダメージが残るのだとすると、これはスポーツ選手は、ぜったいに罹っては困る病気ということになるだろう。

 つまり過去に新コロに罹っていた選手は、激しい競技中に心臓麻痺で倒れてしまう危険率が高まるかもしれないからだ。

 もしそうなったら、新コロ罹患歴のある選手は、通常の競技会にはエントリーを認められず、「パラリンピック」に出場することになるのだろうか?

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 Antonio Regalado 記者による2020-4-10記事「The race to find a covid-19 drug in the blood of survivors」。
        新コロから恢復した人の血液を採取し、その中から抗体を見つけようという試みが全米の大小の企業によって進められている。

 中共では、「回復期患者の血清」を使う治療法が1月からもう試みられている。新コロから立ち直った患者から血漿を取り、それを重症患者に輸血するのだ。結果は佳良であるという。

 だがこの方法は大数の患者には適用できない。血漿の中には、新コロ抑制とは無関係のおびただしい抗体も混じっているはずだから、効率が悪い。もちろん、そのままの成分で工業的に量産することも無理だ。

 鍵になる抗体を、その中から、見極めなくてはならないのだ。しかし製薬化には時間がかかる。おそらく、新コロの第二次流行時(今年の秋)までには、大量生産は間に合わない。

 必要時間は、ワクチンと同様なのだ。新型インフルエンザ用の新しいワクチンが量産されるまでには、最短でも1年以上は普通にかかっている。
 SARSのワクチンは、初流行から17年も経ったけれども、いまだに公認薬は、ひとつもできていない。そういう世界なのだ。

 新コロに有効な新薬ができあがれば、人命についてだけでなく、世界経済についても救世主になるはずだ。

 西アフリカでウィルス病のエボラ出血熱が流行りだしたのが2013-12のことだった。初期には死亡率65%だったが、米政府が抗体開発を支援することにして、巨費を投じ、メーカーは2014後半に抗体量産にこぎつけた。こちらは生存者の血漿ではなく、大量のネズミに感染させることで手がかりを得た。

 エボラ出血熱は、それからいったんおさまったが、2018年にまたコンゴ民主共和国(旧ザイール)で流行し始めた。〔別ソースで補足すると、2020-3末にほぼ終息。かわりに3月初旬から新コロ患者が現れているようだ。〕

 『ダイヤモンドプリンセス』は偶然にも、新コロに関する頼れるデータを提供した。すなわち、感染した人のうち死ぬのは1.7%である。そして、70歳以上の患者は、死亡率が5倍から10倍となる。

 特急で実行されたエボラ対策の経験から推定ができること。新コロの新薬の開発のための投資を10倍にすれば、新薬ができるまでの時間は半分にすることができる。

 エボラ出血熱の治療薬(抗体)は、患者の体重1kgあたり、150ミリグラムの投与が必要だった(成人ひとりだと10グラムほど)。これを新コロにあてはめるなら、トン単位の量産が求められるだろう。それには、マンハッタン計画にも匹敵するような大規模な設備投資が必要になる。

 世界最大級の抗体製造工場だと、フル稼働したときに、年産100万人分の薬を量産できる。
 しかしアウトブレークが放置され、患者が数十億人になったら、1箇所の設備投資に10億ドルかかるようなそうした世界最大級の製薬ラインがいくつできたとしても、なかなか薬が足りることにはなるまいと思われる。

 そうなる前に、なんとかしたい。

 抗体は、罹患してすぐの患者にはよく効くが、重症者に投与しても手遅れのことが多い。だから、抗体の新薬が完成しても、その生産の初期段階では、重症患者には投与しないという選択が、病院や医師によってなされるだろう。
 初期には、医療従事者たちだけに、まず予防的に投与しようという気にもなるはずだ。

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 Dr. Andrew B. Reisman 記者による2020-4-8記事「America’s Doctors Are Facing a Financial Crisis」。
      米政府は、するかしないか選ぶことができる=緊要でない手術 の予定はぜんぶキャンセルしろ――と、全国の病院に命じた。
 つまり、いやしくも医療従事者ならば、総員で新コロに当たれ、と。

 これにより、これまで、健康診断、緊要でない手術、予防ケア等の仕事から収入を得ていた多くの医師・看護師・ヘルスケアプロバイダーたちに、生計の危機が訪れている。

 救急医療部局の人たちは、それならば今、収入が増えているか? それが、減っているのだ。
 新コロが続く限り、やり手の外科医たちもまた貧乏に向かうという、未曾有の事態になっている。

 新コロ患者の治療には、米国の病院基準では、たいへんな人手間と時間がかかる。

 新コロらしき症状で病院に来る人の多くは、私的健康保険には加入しておらず、「メディケア」制度や「メディケイド」制度で保険カバーされている非富裕層である。救急外来のスタッフたちは、そういう患者ひとりあたり、かなりの長時間のケアをしなければならないために、量はこなせず、かたわら、私的保険を運営する医療プロバイダーの会社からは高額報酬が貰えなくなるから、結果として、腕の良いER医師なのにもかかわらず、所得がガックリと減るという仕組みになっている。
 この状態が、いつまで続くか、わからないのだ。

 もし連邦議会がこれを放置するなら、いまの新コロの流行が終わったあと、米国のヘルスケアシステムはガタガタになっているだろう。病院のいくつかは潰れ、外科医たちの腕も、すっかり鈍ってしまっているはずだ。

 米国家庭医学会が、最近、ひとつの試算を公表した。なんとこの6月末までに、6万人の家庭医が、廃業するだろうというのだ。この6万軒の医院に雇用されている80万人の医務関連従事者たちも、失職する。

 ボストン郊外の1医院の例だが、非緊要の治療をすべて停止したことによって、収入は半減したという。
 そしてその医院が雇用していた看護師、医療事務員ら35人は、フルタイムからパートタイムへ、もしくは無給停職状態になったという。

 全米で、病院の外来は半減した。マサチューセッツ州の病院に限れば、先月の外来は75%に減った。
 ユタ州の大手の医療プロバイダー会社は、ER勤務の医療従事者への報酬を削減した。
 ケンタッキー州の地方病院は、仕事が30%減ったため、500人の病院勤務者を一時解雇した。

 乳房X線検査や前立腺検査が滞ることで、癌の早期発見率は下がってしまう。

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 ストラテジーペイジの2020-4-10記事。
   海外に展開している将兵の87%は、18歳~39歳である。軍艦乗り組みだと、9割は、18歳から39歳である。

 新コロの脅威は、むしろ、海外赴任軍人の家族と、軍に雇用されている民間人において、大きい。
 というのは、これらの人々は現役軍人ほど頑健でなく、年齢も高かったりするからだ。

 現役部隊の将兵の10%~15%は、新コロに罹患すると予期しなくてはならない。
 しかし死者は少ないだろう。

 症状を自覚しない伝染病キャリアが多人数に感染させることがあるのだと、最初に世のマスコミに騒がれたのは、ニューヨークの調理人、マリー・マロン(1869-1938)のケースであった。
 彼女は腸チフスを51人にうつし、そのうち3人が死亡した。

 1907年に彼女は逮捕され、それから26年間、隔離者用の島に住まねばならなかった。

  ※チフス菌はウィルスではないのに原文にはウイルスと書いてある。だから以下の話も眉に唾を付けて読むべし。

 空母『セオドアローズヴェルト』の5000人に新コロ検査した結果、陽性と認められたのはそのうちの7%だった。

 『TR』は、艦内で最初の患者数名が発見されるやすぐに、最寄りの軍港があるグァム島へ向かった。軍港内に碇泊したから、その後の患者の隔離と搬出は速やかにできたのである。

 ただし、その数週間前、すでに新コロが流行しはじめていたベトナムへ寄港したのはまずかった。今のところ、ベトナム政府は、新コロ患者は同国内に244人しかおらず、そのほとんどが恢復していると発表しているが……。