エンジェルズ・カースト

 Miranda Summers Lowe 記者による『Naval History Magazine』の記事「Praise from Above: The American Tradition of the Military Flyover」。
 ※記者は州兵の少佐。
  曲技飛行隊である海軍のブルーエンジェルスと空軍のサンダーバーズは、新コロと戦っている人々を声援するため、4月に合同で「フライオーバー」してみせた。

 セレモニー上空を編隊で航過してみせる「フライオーバー」のパフォーミングは、WWI中にその起源がある。
 いちばん最初は、何か航空作戦を実施した後、味方の地上兵たちに対し、味方航空部隊には損耗機がない(あるいは少ない)ことを示して鼓舞する意図があった。
 また友軍機パイロットが墜死した現場に、編隊で花輪を投下するというパフォーマンスも、自然に発生した。

 今日、「ミッシング・マン」という、メモリアル・セレモニー用のフォーメーションが、航空部隊には定まっているのだが、その濫觴である。

 1931年までには、「ミッシング・マン」という編隊飛行があることが新聞記事に書かれるようになっている。ただしそれは今日の「フィンガー・4」とは異なる。「フィンガー・4」はWWII中に定着したのだ。

 米陸軍航空隊のオスカー・ウェストオーバー少将が1938にアーリントンに葬られたとき、60機以上の軍用機が「ブランク・コラム」の編隊でフライオーバーした。 ※黒枠状か?

 空軍大将ホイト・ヴァンデンバーグの1954葬儀のさいには、通例もちいられる野砲の「弾薬車」の代わりを、B-47×6機、F-84×16機、F-86×16機のフライオーバーに務めさせた。

 1918年、ワールドシリーズの第一戦が行なわれたシカゴのコミスキー・パーク球場の上空を、60機以上の軍用機がフライオーバー。このときベーブ・ルースが投手として完封した〔?〕。

 2001-9-11以降、フライオーバーのリクエストが爆発的に増えた。だから軍の航空隊では、多数の要請のうちのどれに応えるか、選ばなくてはならなくなっている。

 WWIIの終了後、チェスター・ニミッツ海軍大将が、大衆の関心が海軍航空から離れてしまうことに危機感を抱いて、海軍航空隊内に、専用のエキシビション・チームを編成するように命じた。

 1946-8-25にその最初のパフォーマンスが行なわれた。機体はF6Fヘルキャット。報道したアナウンサーがが「ブルー・エンジェルズ」と呼んだ。彼は雑誌の『ザ・ニューヨーカー』の記事で知ったナイトクラブの名前を思い出したのだという。この呼称が気に入られた。

 空軍が「サンダーバーズ」でそれに追随したのは1953年である。

 元海軍パイロットで元大統領のジョージ・H・W・ブッシュが埋葬されるとき、海軍航空隊は、前例の無い21機による「ミッシング・マン」隊形のフライオーバーを実施した。

 1954年にワーナーブラザースは『ザ・マコネル・ストーリー』という映画を作って、F-86による「ミッシング・マン」フォーメーションを人々に教えている。
 WWI当時の地上兵たちとおなじく、WWII後のソ連との冷戦中も、米国民は、じぶんたちの頭上が味方の軍用機によって守られているという実感に、満足するのである。

 フライオーバーの起源については英国が自分たちだと主張するであろう。WWIの西部戦線で、RAFがよくやっていたのである。

 次。
 Tim Kelly 記者による2020-5-21記事「U.S. masses planes at Japan base to show foes and allies it can handle coronavirus」。
   ヨコタ基地では、新コロ騒ぎが米軍の有事の弾撥力を少しも損ねていないことを敵どもに見せつけるため、輸送訓練を実施。

 次。
 Robert Owen 記者による2020-5記事「Bring Back a True Gunboat」。
      「それで十分」という見識がないと「パーフェクト」を求めて組織は大失敗する。米海軍のLCSはその見本になった。
 「砲艦」という、既に「それで十分」な見本があったのだ。なのに、それを使うことを考えないで、わざわざ「車輪を再発明する」ような馬鹿なことをして、LCSに期待されたすべての目的の達成に失敗した。

 WWII中に英海軍が使った「フェアマイル D」型魚雷艇も、立派な「砲艦」だった。
 全長115フィート、巾20.1フィート。パッカード・エンジン×3基で29ノット。排水量は95トンから120トンの間であった。乗員30名を載せ、吃水は僅か5フィート。「レベル4」の荒海も航行できた。
 LCSも、「これで十分」ではないか。

 このコンセプトのまま、要素を現代の「オフザシェルフ」で置き換える。船体はファイバーグラスにする。推進装置はウォータージェットにする。軍用通信機や、漁船用のレーダーとソナーを追加したところで、幾らにもなるまい。
 その値段ならば、1隻7億ドルもするLCSと違い、船体の破損は苦にもならない。だから積極的な沿岸運用が可能になる。イランの高速艇スウォームや中共の海上民兵に直面しても、逃げ腰にならなくてよい。

 この船体にだって、機雷戦用の装備を載せることもできるし、対艦ミサイルを載せることもできる。LCSと違いはないだろう。
 またLCSとは違い、この「現代の魚雷艇」は、官/民の警備艇としても市販・輸出が可能だろう。

 この現代版魚雷艇は、『Whidbey Island』級のLSDによって遠隔地まで運ばれる。現地ではそのLSDが、魚雷艇6隻の臨時の基地となってくれる。
 ウェル・デッキが長さ440フィートあるから、縦に3隻、横に2隻並べて、収容ができるわけだ。

 ウェル・デッキ内では、特殊なアームによって繋止すればよい。

 次。
 ストラテジーペイジの2020-5-22記事。
  米海軍の次のフリゲート艦のデザイン。
  LCSの代わりである。5000トンから7000トンになる。全長は132m~142m。乗員は132人~145人。
 イタリアのフィンカンティエリ社が米国内の造船所で1番艦を造る。契約金額は7億9500万ドル。

 次。
 Joseph Trevithick 記者による2020-5-21記事「Northrop Grumman Reveals New Mini Torpedo Aimed At Arming And Defending Navy Submarines」。
      超軽量魚雷VLWT。
 この魚雷、単にサイズが小さいというだけじゃない。推進方式も新式。
 リチウムの塊があり、それを6弗化硫黄のガスに浸す。すると化学反応が起きるので、その熱で蒸気をつくってタービンを回す。魚雷のスクリューはシングルである。蓄積化学エネルギー推進システム=SCEPSという。
 すでに通常サイズの魚雷でこのサイクルを採用している製品も存在している。

 ノースロップグラマン社は、プライマリー・サプライヤーとして、米海軍に長魚雷の「Mk48」、そして短魚雷の「Mk54」を納品してきた。

 潜水艦から発射される「マーク48」の最新バージョンは、径21インチ、全長228インチ、全重3700ポンド。
 それに比してVLWTは、径が「6と3/4」インチ、全長85インチ、全重220ポンドしかない。つまり「マーク48」の16分の1未満。これをヴァジニア級原潜に搭載しようというのだ。

 かつて米海軍は、正規空母に向かってくる敵潜の魚雷を、ミニ魚雷で迎撃するべく、超軽量魚雷を模索した。
 しかしこのシステムは満足に機能せず、2019-2には空母への実装が取り止められた。

 VLWTは、『コロムビア』級の新SSBNにも防御用に搭載されるだろう。
 また、将来型の、「魚雷の機能を発揮する、仕掛け水雷」――つまり今の機雷を更新する新式海中待敵ロボット兵器――の要素ともなるだろう。