むしろ集合住宅に住みたくなる日が来るとは……。

 Charles Dunst & Shahn Savino 記者による2020-5-28記事「Another Pearl in China’s String?」。
      カンボジアのシアヌークヴィル市、およびその沖(フェリーで2時間)にあるコーロン島。いまや中共資本のカジノがあらゆるところに建ち並ぶ、猥雑なギャンブルのメッカに変貌している。

 カンボディア全土には反支感情が募っている。しかしフン・セン首相は意に介さない。

 シアヌークヴィル港にはすでに中共海軍の寄港権が与えられている。そしてコーコン県に近いダラサコルというところに、あらたに空港と近代港湾が中共の手で建設されるかもしれない。
 中共の政策の中では、民間と軍事の境目など、すぐに溶けて無くなる。ジブチに中共軍の基地を開所する直前までも、中共は海外に基地などは持たぬと公言していたのだ。

 異常な兆候。コーロンには6000人の宿泊施設が整えられているが、いつも観光客はそんなに多くない。そして、シアヌークビルにはすでに空港があるのに、なんでその目と鼻の先にもうひとつ飛行場が必要なのか? 
 中共はコーロン島を、シャム湾に面する支那軍の一大基地に変えようとしているのだろう。

 2008年にコーロン島は香港の不動産会社に99年リースされた。すぐにこの会社は消え、代わって、中共国営の「ロイヤルギャラクシーグループ」が利権を買い取った。経営者はシンセンの大物中共幹部。

 6000人のホテル収容力と空港の計画は、2019に発表された。滑走路長は2650mという。ちなみにプノンペン国際空港のR/Wは3000mだ。
 コーロン島の住民は1400人である。
 タイ湾にはすでにタイ領土のコーサムイというリゾート島がある。コーロンが観光開発されれば、そのライバルにもなる。

 中共はすでに、パキスタン、スリランカ、ミャンマーに、中共軍艦が自由に利用できる港湾を確保した。それに、こんどはカンボジアが、続くのであろう。

 次。
 Mark Kramer 記者による記事「Lessons From Operation “Denver,” the KGB’s Massive AIDS Disinformation Campaign」。
     1985年9月7日、ソ連のKGBは、ワルシャワ条約機構加盟のブルガリア(東欧衛星国のひとつ)に対して、《これからディスインフォメーション・キャンペーンを始める》と通知した。
 すなわち、合衆国内で流行中の「AIDS(後天的免疫不全症)」は、実は米国の秘密機関とペンタゴンが開発した生物兵器が洩れて制御不能になったものである――という意見が全世界に広まるようにさせる、というのだ。

 西側情報部は、KGBがエイズに関する偽情報キャンペーンを1983年からスタートしたと疑っている。このたび、元ブルガリアの秘密警察の公文書館から、1985-9-7付けの電報紙という鉄板証拠が発掘された。
 他の東欧諸国機関も、モスクワからこういう命令を受けていたのであろう。

 KGBと東独の秘密警察シュタージが協働し、HIVウイルスが、アフリカの動物由来ではなく、《メリーランド州フォートデトリックの米軍生物戦争研究所で開発された》という、利用できる専門家たちからの都合のよい証言を引き出して、もっともらしい文書を量産した。

 シュタージは、この作戦に「デンヴァー」というコード名を与えた。
 とうじ、『ダイナスティ』というアメドラが西ドイツで放映されていて、そのTV電波は東独内でも受信できた。ドイツ語吹き替え版のタイトルが「デンヴァー・クラン」。だからシュタージは、馴染みのないデトリックではなく、デンヴァーというコードネームを選んだのだと推定される。

 この嘘宣伝は、KGBの期待を上回る、大きな波及効果を示した。
 米国人までが、この噂を信じた。

 欧州では、東独やチェコやブルガリアの機関員が、NATO軍基地を擁する地域で、《米兵たちのエイズ罹患率が異常に高い》という嘘のルーモアを流して歩き、住民とNATO軍の離間を策謀した。
 南米では、キューバの機関員が同様の活動に従事した。

 1986年にジンバブエで開催された非同盟諸国会議の周辺にもシュタージは念入りなパンフレット工作を仕掛けた。エイズはアフリカ発ではなく米国が人工合成したのだという学術報告書のフォトコピーだった。
 それによるとHIVウィルスは、羊から取り出された危険なウィルスに他のウィルスを合成したもので、それがフォートデトリックから洩れたのだという。

 アフリカ諸国は、エイズがアフリカ発症だと言われるのを聞くのが厭だったので、皆、この偽情報にとびついて、ルーモアを歓迎したのである。
 アフリカ諸国のメディアがとりあげ、それがインドにひろがり、全世界にひろがった。

 シュタージは嘘情報を広めるため、西ドイツのドキュメンテリー番組にも制作費を提供した。この番組は1989に西ドイツで3回放映され、英国のチャンネル4でも1990に放送された。

 番組の中では「専門家」が、エイズをアフリカの風土病だと言う者はレイシストだ、と糾弾した。
 西ドイツの番組スタッフは、制作費が東独の秘密警察から出ていたとは知らなかった、と言い張っている。
 この番組(のおそらくは拡散意図にもとづくブートレッグ・バージョン)は、ユーチューブで視聴可能である。

 現在、米国内の新コロについて、黒人だけが罹病率が高いという陰謀論が蔓延している。

 タスキーギ大学(アラバマ州の黒人解放大学)は、米国保健省が長年――1932年から40年間にわたり――、黒人の小作人のあいだの梅毒感染を意図的に放置した(その間に特効薬のペニシリンが開発されているのに)という研究をまとめたものだ。
 米国には、この陰謀説がうけいれられる風土があるのだ。

 大統領選挙に何回か出馬した右翼候補のリンドン・ラロッシュは、《エイズはソ連の第五列がフォートデトリックの国立癌研究所において創出した》との逆偽情報を配信した。

 ロシアのディスインフォメーション工作機関は、こうした米国内の陰謀説論者たちを利用する。彼らも「フォートデトリックから出た」と言っているのだから、まことに都合がよい。
 まったく同じパターンの偽情報工作が、今の新コロをめぐっても展開している。スプートニク・ニュースとRT(旧・ロシア・トゥデイ)が、ツイッターとフェイスブックに何を投稿しているか、見るがよい。

 2013年から16年にかけて猖獗をきわめた西アフリカのエボラ出血熱。この騒ぎに乗じてロシアのプロパガンダ機関=スプートニクおよびRTは、《エボラは、米英そして南アフリカ政府が、アフリカの黒人を殺すために共同で開発したものだ》と宣伝しまくった。

 冷戦時代、レーガン政権は、「アクティヴ・ミージャーズ・ワーキング・グループ」を立ち上げて、ソ連発の偽情報がいかにデタラメであるかを逆宣伝によって米国内外に証明し続けた。その活動は実り、ソ連発の情報というだけで世界的に信用が失墜し、ソ連の工作は行き詰った。
 おなじことを今NATO(特にエストニア)がやっているが、かんじんの米国が休んでいるのはよくない。偽情報は放置してはならないのである。

 今日の西側自由主義世界では、小学生のうちから、「事実報道」と「個人の意見」の見分け方、そして「プロパガンダ技術」について、しっかりと教えていく必要もあるだろう。
 それは純然たる論理学とは別な実用知だ。

 エイズに関するいかがわしい偽情報をすべて信じてしまった悲惨な実例が、1999から2008年まで続いた南ア政権だ。インターネット上のあらゆるインチキ治療法が同国では施術され、正しい対策は斥けられた。結果、同国では、エイズと危険な民間療法の双方の攻撃により30万人近くが死亡した。まさに人災となった。

 次。
 David Pilling 記者による記事「No lockdown, few ventilators, but Ethiopia is beating Covid-19」。
    エチオピアには1億1000万人が住むが、新コロ患者は731人。新コロ死者は6人だという。

 エチオピアには中共からは新コロは入っておらず、最初は日本から入り、ついでヨーロッパから入ったと。
 エチオピアは今のWHOのテドロスから、公衆衛生について学んでいた。そのおかげであると。

 アフリカ全体で、人口は12億人あるが、新コロ死者は3600人しかいないという。アフリカ住民の平均年齢が、19.4歳であることに、理由のひとつがあるかもしれない。