今年いちばんの強雨か?

 ストラテジーペイジの2020-7-26記事。
    2011年のアラブの春いらい、シリアからは人口の三分の一が国を捨てている。
 おかげでアサド一族についての情報を集めたいイスラエルは仕事が楽である。カネで情報を提供する者がたくさんみつかるので。

 シリアには「211支部」という公案組織があり、専ら、イスラエルの諜報に対抗する任務を帯びている。盗聴器を発見する仕事が多い。デバイスは、家具、コンクリートに仕込まれ、さらには路傍の「石」がまるごと人工の盗聴器ということもある。

 有名なスパイ、エリ・コーヘンは、シリア政府からすっかり信用され、ゴラン高原の築城工事をつぶさに現地視察することができた。コーヘンの正体は1965にバレたが、1967の六日戦争でイスラエル軍は、隠蔽されていた地下陣地の位置まで承知していたのである。

 コーヘン逮捕のきっかけが、盗聴器バスターだった。その専門家たちがソ連から派遣されていたのだ。
 スパイは、その知りえた情報を、なんとかして本国政府に通報しなければならない。そのために巧妙極まる無線機材を、コーヘンは使っていたのだが、それを、ソ連チームが暴いた。

 この経験から「211支部」が創設された。
 彼らが発見したイスラエルの盗聴器や通信機材について公表されることは決してない。その情報が逆にイスラエルにいろいろな手がかりを与えてしまうからだ。ただし「211支部」の存在そのものはしきりに宣伝されている。

 今のアサドの親父がシリアの権力を握ったのは1970年だった。

 1995にダマスカス郊外で地下に埋設されたケーブルが発見された。「211支部」が調査したところ、シリアの地対地ミサイル発射施設を監視するカメラが見つかった。もちろんイスラエルの工作員が仕掛けたものだ。

 その装置はもう5年以上も、定期的に写真を撮影して、イスラエルに無線電送していた。電源の電池は、ときどき、誰かが交換していた。

 2001年には、複数のシリア高官のオフィスの高級木製デスクや家具が調査された。隠しマイクが、10日分の人の会話を録音しておき、それをイスラエルの通信衛星に向けて深夜の2時に電送する、ドイツ製のデバイスが、材木の中から見つかったためだ。

 2004年にはシリアの空軍基地で通信機材の一斉捜索。発見された装置は、3年間も稼働していたものだった。2つの空軍基地間での交信が録音されていた。

 2008年には、シリアの某戦闘旅団の司令部ビルの構造物内からイスラエルの盗聴装置が見つかった。このビルを建設するときに埋め込まれたもので、発見至難なものであった。
 ひとつの盗聴器は、旅団長の部屋の天井から見つかった。

 2014年には国連平和維持軍が、イスラエルとレバノンの国境で、ヘブライ語が印刷された電子機器を発見している。

 2013年にヒズボラが、鷲鷹科の野鳥にとりつけられた電子機器を発見し、スパイをとらまえたと発表した。それは、稀少動物の保護のための調査用デバイスだったのだが、アラブ人には、そんな区別はつかないのである。
 2010年にはエジプト人が、イスラエルがサメを訓練してアラブ人を襲わせている、と騒いだ。

 大型猛禽類にタグがついているだけで、彼らは大騒ぎする。サウジアラビアで2011にその話あり。2012にはエジプトでも。エジプト人は、コウノトリについても同様の騒ぎを見せた。

 トルコ人も、とらまえたチョウゲンボウ(隼)をX線で撮影して、スパイ装置が隠されていないか、確かめることがある。

 2012年にはイランのウラン濃縮施設の近くで、イスラエル製の「監視石」が発見された。岩石のような外見だが、すべて人工的に造られている。定期的に人工衛星に対して、偵察結果をリポートする。そして、誰か人が近づくと、自爆する。

 動物や虫にスパイ装置を仕込んでも動物を期待通りに働かせることが容易ではない。だから現実には岩石類に模造したデバイスが多用される。