Celia Jones 記者による 2020-7-27記事「How the world’s smelliest fruit could power your phone」。
リチウムイオン電池を初めて商品に組み込んだのはソニーで、1991年のハンディカム用だった。
リチウム電池にはしかし、経年劣化がある。また、寒暖のいずれにあっても、パフォーマンスは低下する。
つくりが粗悪だと、爆燃する。資源として稀少かつ偏在でもある。
アルゼンチン、ボリビア、チリが囲むアンデス山地は、リチウム三角地帯とよばれ、世界の同資源の半分以上を産出する。
ただし鉱区の溶液中からリチウムを析出するプロセスでは大量の水を使う。900kgのリチウムを得るのに、チリの某所では、100万トンの淡水が消費される。
チリの環境団体は、それら鉱業用水の量が、地域の年間降水量を上回っていると警告する。
コバルトもリチウムと組み合わされて電池の正極材になる。
コンゴ民主主義共和国は世界のコバルトの過半を産出するが、鉱山で児童を働かせているというので非難轟々だ。コンゴ産のコバルトを使うことで児童を殺しているという訴えが、アップル、テスラ、マイクロソフト社に対して起こされている。
廃品リチウム電池の回収率は、5%しかない。残りは捨てられ、埋め立てられたりして、世界中の土壌を汚染しているはずだ。
シドニー大学の研究チームは、臭い果物で有名なドリアン、および、世界最大のくだものであるジャックフルーツ〔=パラミツ/ナンカ。インド原産。重さ40kg〕をスーパーキャパシター〔=コンデンサー〕に使えないかと模索中。
利用するのはそれらの果物の、たべられない部分。それをフリーズドライ法によってまず炭素のエアロゾルにする。それを1500℃以上で成型焼成すると、グラフェンよりもはるかに安価に、グラフェン類似の多孔質の電極材が得られる。
このスーパーキャパシターをスマホに使うと、満充電時間は30秒とかからなくなる。
放射性同位元素の崩壊を利用した半永久電池もブリストル大学で開発中である。人造ダイヤモンドで格子構造をつくって、その中に放射性同位体を閉じ込める。格子の外へは、放射線があまり飛び出さないので、安全な電池にできるという。「ダイヤモンド・バッテリー」と称する。
プロトタイプでは、同位体「ニッケル63」を採用した。
しかしチームの目標はそこにはない。彼らは、英国型原子炉に使われていた黒鉛ブロックを、電池として再利用できないかと考えている。すなわち「カーボン14」の崩壊現象を、「ダイヤ電池」のエネルギー源にすることで、厄介な放射性廃棄物を、永久電池に転換しようというのだ。
ダイヤモンド電池は、極限環境でも性能が安定しているから、宇宙や深海の装置の電源として適している。その場合、半永久に、電池交換の必要は無い。ちなみに「炭素14」の半減期は5730年だ。
試作品は、1.8ボルトを安定して取り出せている。ただし電流は乾電池よりもずっと少ないが。
おそらく、テレビのリモコン、住居の煙検知警報器、補聴器やワイヤレスイヤホン、心臓ペースメーカの電源として、ダイヤ電池は最適だろう。