空軍のフライトジャケットを着て戦闘機のコクピットの中で写真を撮らせるぐらい、文民の国防大臣を尊敬させなくする方法はないってことに、河野氏は早く気がついて欲しい。

 一回だけならともかく、二度以上やっているところを見ると、ほんとうに分かっていないらしい。

 空軍基地は、ヘリで東京から往来し易く、高官が誰でもいつでも短時間移動にて訪問し得る、至ってめぐまれた自衛隊の勤務地である。

 訪問を受けた基地の司令と空軍サークルはさぞ嬉しいだろう。地ージスを切ってF-35を買い増してくれたことに礼を言いたい空幕の気持ちも分かる。が、全国の他の無数の基地の勤務者たちは、内心で僻んでいる。『なんだ、このレベルのオッサンか』と思ってニヤケ顔の写真を眺めている。そこに皮膚感覚でピンと来ないようでは、全軍を束ねる長として、いささか情けない。

 国防大臣は、メジャーな航空基地などへ繰り返し臨場している暇があったら、同じ空自でも、いままで国防相の視察を受けたことが一度もないような僻地のレーダーサイト等をこそ訪問してやるべきである。
 防衛省トップの来駕を待ち望んでいる最前線の中小基地は、何十もあるのだ。

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 Gabriel da Silva 記者による2020-8-6記事「What Is Ammonium Nitrate, the Chemical That Exploded in Beirut?」。
      ベイルートの港湾倉庫で2700トンが爆発したという硝酸アンモニウムは、窒素、水素、酸素から成る化合物で、1分子ごとに酸素原子が3つ、くっついている。

 硝安剤は、アンモニアからつくられる液体酸化窒素と、ガス状のアンモニアとを化合させることによって、製造されている。
 ノズルから落下させて小球(プリル)状に成形され、製品は、光沢ある半透明の粒塊状。世界で最もよく使われている肥料のひとつだ。
 多孔性なので吸湿する。

 軽油/重油と混合すれば爆薬になる。それは安価なうえ、「あとガス」も悪くないので、鉱山用発破薬「アンフォ爆薬」の主成分としても多用される。起爆には工業用雷管が必要だ。

 硝酸アンモニウムは、それだけでは燃焼することはない。
 だが硝酸アンモニウムは、酸素供給剤になる。燃える物質(たとえば油)と混合されたときに、その燃焼をいちじるしく助けるのだ。

 硝酸アンモニウムが高温にさらされると、急激な化学分解が起きる。その過程で酸化窒素と水蒸気が爆発的に生成される。

 2015年に天津で起きた爆発事故は、化学工場が、硝酸アンモニウムと可燃性の化学物質を一箇所に貯蔵していたために、近火が引き金となって起きた。173人死亡。

 8-4にベイルートで起きた爆発も、火災が引き金だろう。

 硝酸アンモニウムの爆発を、雷管なしで起こすのは、簡単ではない。粒状の硝安のすぐ近くで焔を持続させ、かつ、閉じ込める必要がある。
 しかも、その硝安剤が汚染されている=油が滲みこんでいたり、可燃物質と混ざっていたり――という状態でないと、ダメなのだ。

 今回のベイルート港の倉庫の場合、長年にわたり、硝安剤が大量に積まれたままだったらしいから、そのあいだに「汚染」が進行していたのかもしれない。

 硝安爆薬が轟爆すると、大量の各種の酸化窒素分子ができる。二酸化窒素(ダイオキシン)は、赤い煙として視認される。ベイルートの画像でそれを確認できる。
 二酸化窒素ガスは、人の呼吸器系を障害する都市大気汚染の元凶物質である。ベイルート市民は1週間くらいはこの残留ガスに気をつけた方がよい。

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  John Hannah 記者による2020-8-6記事「Destruction of Iranian Nuclear Facility Should Remind Democrats of Israel’s Unique Value as an Ally」。
        7月2日にイランのナタンツで起きた工場爆発は、衛星写真でほぼ確認できるように、爆薬を仕掛けられたものだろう。高性能の遠心分離機×数千台によるウラン濃縮が、そこでは行われていた。

 『NYT』紙は、これをやったのはイスラエルだとほのめかす記事を載せた。モサドのヨッシ・コーヘン長官だとしか思われない人物が、《イスラエルがやった》と語っているのだ。