ひさびさにラファールの記事に接した。

  Harsh V. Pant, Angad Singh 記者による2020-8-10記事「Rafale Jets Won’t Save India’s Air Force」。
    7月29日に5機のラファール戦闘機がインド空軍へ納品のため飛来した。これは2016にダッソー社が結んだ契約の履行である。さらに31機がこれから続く予定。

 インド空軍は合計126機の旧い戦闘機の刷新を欲している。その需要を何かが埋めなくてはならない。

 中共空軍は過去20年間に、インド空軍に対していろいろなレベルで優勢に立ってしまった。それがいま、数機の新型戦闘機で逆転することはないだろう。

 インド空軍はげんざい、31個スコードロンしか戦闘機を運用できていない。政府は42個まで承認しているのだが。

 いまだにミグ21からなるスコードロンすら残っている。これは2024年までに全廃される予定。

 ※2004年にスタートしたインドのMMRCAをめぐるうんざりするような兵器取引交渉史を、わたしは2017年2月の『日本の兵器が世界を救う』のなかで詳しくフォローした。その149ページで、《ラファール1号機の引渡しは、2019年9月が予定されている》、としめくくってある。とうとう、初号機が到着したのか! よほど、中共からの圧力が、インド人にはコタえているのだろう。なお、なぜインド政府と国会が、インド空軍を予算面で冷遇し続け、さりとて、精鋭陸軍中心主義でもなく、あくまで「パラミリタリー」中心主義を堅持するのか、その政治史的な背景について知りたい方も、『日本の兵器が世界を救う』を一読すると氷塊するであろう。


 次。
 Michael Hunzeker and Brian Davis 記者による2020-8-10記事「The Defense Reforms Taiwan Needs」。
     6月、米陸軍の特殊部隊が台湾に入って、台湾軍と合同訓練し、その模様は、フェイスブックに投稿された。
 米連邦議会下院では、テッド・ヨホ議員が新しい「台湾侵略阻止法」を提案している。

  ペンタゴンは台湾に長年、中共軍や米軍と同じような装備ではなくて、非対称的な軍備にこころがけた方がよいとアドバイスしてきた。蔡総統はようやくそれを肯定的に公言できるようになった。

 台湾の国防予算は有限であるのに、それをいかにも無駄な一線アイテムに投じようとしている。
 108両のM1戦車を20億ドルで買うとか、8隻のディーゼル潜水艦を国産するだとか。

 その潜水艦計画だけでも50億ドルである。それは台湾の年間軍事費の半分に相当する。いったい何を考えているのか?

 高額装備をわずかな数量ばかり調達する、おかしな政策の結果として、台湾の軍備は、長期継続的な戦争にはとても耐えられない構成になっているのだ。

 台湾の多くの海岸道路や山間道路の幅や規格とくらべてM1戦車は大きすぎ、かつ、重すぎる。しかも、トルコ軍が証明しているように、いまや戦車はドローンの好餌なのである。だから米海兵隊は、戦車を全廃することに決めた。台湾陸軍は、米海兵隊と逆の道に進んでいるのだ。

 台湾軍の前の参謀総長は海軍出身で、2018にODC=包括防衛コンセプト を提言した。これは正真正銘の非対称的な、海空拒否戦力の構築を目指した軍改革案であったが、立ち消えている。

 台湾は予備役・後備役の空疎化の趨勢も逆転させなければならない。それによって潜在的には250万人が動員できるのだから。2年おきに5日間の訓練召集をさせるだけで、予備役兵の技倆が維持できるものか。しかも予備役全員分の小銃がないとか、ふざけているのか。

 台湾防衛の役に立たぬ高額装備を売りつけて米国の防衛産業を儲けさせることが米国の正しい政策か? そんなことはない。台湾政府が国防費を合理的に使って中共の侵略を跳ね返せるように、米政府はアドバイスするべきなのだ。