旧資料備忘摘録 2020-8-12 Up

▼ディオゲネス・ラエルティオス著、加来彰俊tr.『ギリシャ哲学者列伝(上)』1984 イワブン
 タスいわく。困難なことは、自己自身を知ること。容易なことは、他人に忠告すること。
 ビアスいわく。敵同士を仲裁してやると得をする。すくなくとも一方を味方にするから。

 エピメニデスの経験。ある日、父のいいつけで羊を探しに出た。昼頃、道から逸れてある洞穴の中で寝込んだ。そのまま57年、寝てしまった。起きたときは、ほんの短時間だと思っていた。やっと、いまはもう老人になっている弟をみつけたと。

 アナクシマンドロスは、月は借り物の光で輝いていて、その光源は太陽であるとした。太陽は地球より大きいのだとも。
 アルケラオスは、音は空気の震動によって生ずるのだと最初に主張した。

 ソクラテスは規則正しい生活をしたので、アテナイを幾度も襲った疫病に、彼ひとりだけは、罹らなかった。
 結婚したほうがよいでしょうか、それとも、しないほうがようでしょうかと訊ねられたとき、「どちらにしても、君は後悔するだろう」とソクラステスは答えた。
 若者たちには、たえず鏡にじぶんの姿を映してみて、美しければそれにふさわしい者となるように、また醜ければ教養によってその醜い姿をかくすようにせよと勧めた。※本人は醜かったという。

 クセノポンは哲学者たちのなかで最初に歴史を書いた人である。

 アリスティッポスは、「君には悪口を言う自由があるが、ぼくにはそれを聞かない自由があるからね」と立ち去った。
 またいわく。運動しすぎの人が最高に健康とはかぎらない。読書しすぎの人より、有益な書物を読む人たちの方がすぐれている、と。

 プラトンは体格すぐれていたが、声は弱弱しかった。度を外して笑ったことも一度もなかった。
 クセノポンとプラトンはライバル同士で、ソクラテスを回想するときに、互いのことはどこにも言及しなかった。

 クロノス には おいぼれ の意味もある。

 プラトンいわく。宇宙の動きが時間であり、したがって宇宙というものがなければ時間もない。宇宙が存在することになったのと同時に、時間も生じたと。

 ビオンいわく。美しさは他人にとっての善であると。

▼岩瀬昇『石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか?』2014-9文春新書
 著者は三井物産と三井石油開発で43年間、エネルギー一筋。

 ホルムズ海峡は広い。海流の流れも早く、物理的に封鎖することは不可能に近いと思われるほど。
 浦賀水道の幅10kmに対し、55km。いちばん狭いところでも33km。

 ホルムズ海峡はすべて領海。イランかオマーンかどちらか。中間線が国境である。
 通航するタンカーは、すべてオマーン領海内に設定された航行路を通る。
 イランがそこに機雷を仕掛ければ、ただちに領海侵犯の戦争行為となる。

 タンカー戦争。1983から4年間、この海域で攻撃を受けた313隻のうち、276隻がオイルタンカーだった。
 ペルシャ湾に入るタンカーの運賃レートは高騰。ピーク時の貨物保険料率は、タンカー戦争前の200倍に。

 オクラホマ州クッシングからメキシコ湾までのパイプラインは、輸入原油を内陸に運ぶもので、国産原油を輸出するようにはなっていない。

 日常的にメキシコ湾から日本に航海しているタンカーはない。船腹手配は容易ではない。
 消費地から離れているために商品化できないでとりのこされたガス田を Stranded Gas Field といい、この上に浮体を繋止して、LNGにして、積み出してやる施設が開発されている。

 LNG受け入れ港には、再気化装置が必要。
 有事に自由にLNGタンカーでとりよせられるLNG量は、総生産量の10%ぐらいだろう。基本的にガスはパイプラインで売り買いされているということ。

 原油と違いLNGはどうしてもボイルオフ=自然気化によって減損していく。長期貯蔵になじまない。
 IEAは、石油については加盟国に90日分の備蓄と緊急時の融通を義務付けているが、天然ガスについては何の勧告もしてない。緊急融通は無理だからである。

 緊急融通のアテにできるのは、石油に限られる。

 著者は、2024年までに中共のGDPが米国を抜くと予想している(p.233)。
 ミャンマーから雲南省までのガスパイプライン2500kmは完成。同ルートで原油パイプラインの建設が進行中。
 現在アメリカにはLNGを製造するためのガス液化装置が存在しない。2016年からはできるようになりそうだが。

 40年前からアメリカは原油は輸出しない政策。
 日本が最初にLNGを輸入したのは1969のアラスカ産。東京ガス根岸工場のLNG受け入れ基地に入着した。

 米国はFTA/TPPを締結していない国へはLNGを売らない方針。
 カタールの天然ガスは、ペルシャ湾にあり、イランのガス田とつながっている。
 イランのようにいつ停電になるかわからない国では、オフィスや住居を高層ビルには置くべからず。エレベーターに閉じ込められる。

 米国では地下資源は土地所有者のもので、鉱業権も土地所有者に帰属る。
 海上の資源は、連邦政府や州政府に所有権がある。
 米国とカナダ以外では、陸上鉱区の権利は国家が管理している。

 日本にガスのパイプラインがないのは、大口需要者の発電所のすぐ前までLNGタンカーで運んでくるから。
 LNG受け入れ基地は全国に28箇所ある。
 石油開発会社は、テキサス州のヒューストンに集中。

 世界で最も水平掘削の距離が長い井戸は、サハリンに2005年に掘られたもので、12km強。

 水圧破砕法は職人芸であり、ノウハウ蓄積はアメリカのみ。他の国では、だから、シェール革命は起きない。

 シェールオイルの埋蔵では、アルゼンチンやリビアも有望。
 中国のシェール層は4000m~6000mと深いところにあり、1000~3000mの米国に比べて明らかに不利。しかも近くで水を大量に得られない乾燥地帯にある。ガスの売価は政策でシーリングされていて儲からない。

▼田中修『雑草のはなし』2007-3 中公新書
 与謝蕪村の俳号は、カブの産地だった大坂天王寺にちなむ。
 蕪は、白菜やキャベツと同じ、アブラナ科アブラナ属。
 大根は、アブラナ科ダイコン属なので、属が異なる。

 自然界には「三倍体」、すなわち3セットの染色体をもつ植物ができることがある。三倍体は、卵細胞や精細胞をつくるときに、染色体をきれいに半分にわけられないので、けっきょく、タネができない。それで、タネなしになる。
 たねなしスイカは、人為的にこの三倍体をつくったもの。
 日本のヒガンバナは、自然にできた三倍体なので、球根でしか増えず、しかも、すべて遺伝子的にクローンである。

 1970年、関西地方で、ほとんどすべてのネザサが開花した。その前は、奈良県にて、1850年に大開花が報告されていた。ちょうど120年。
 花を咲かせタネをつくったネザサは、すべて枯死した。種はすぐに発芽をはじめた。
 2005年には、東北地方の一部で、チシマザサが開花した。

 オナモミの実のトゲには、動物に食べられないという役割もあるはず。

▼田中修『植物はすごい』2012-7 中公新書
 ヒイラギは とげがささるので、柊という字がついた。
 栗のスペイン語がカスターニャ。カスタネットは、栗の実を二つに割ったようだから。

 ダイコンは尖った先端が伸びる。そこが虫に食われぬように、先端ほど辛い。
 キウイに含まれるアクチニジンは蛋白質を分解する。だから防禦になる。

 アジサイの葉には青酸が含まれるので、虫害を受けない。人間が食べればもちろん中毒する。

 夾竹桃=オレアンダーをバーベキューの串に使ったことで、フランス兵が数名、死んだことがある。西南戦争中、これを箸に使って官軍の兵士が中毒している。オレアンドリンという毒による。

 ヒガンバナの球根の毒は、モグラやネズミを害する。だから墓地や畦に意図的に植えられた。毒抜きをすれば、救荒食物になる。

 ギンナンは大人でも20個以上食べれば毒にあたる。10歳未満の子どもには特に毒。

 三十数億年前に、光合成植物が海中で誕生した。
 四億年前に、それが陸地に上がってきた。

 多くの植物の葉は、昼間の太陽光の三分の一くらいで利用限界に達している。つまり光量の三分の二は無益有害。

 スイカやカボチャの厚い皮は、乾燥対策。
 純粋な液体は、揮発しない物質が溶け込めば溶け込むほど、固体になる温度が低くなる。つまり、凍りにくくなる。冬の野菜が糖分を増す理由。凝固点降下。

 江戸川はむかしは小松川といった。そこで栽培されていたのでコマツナ。
 イタドリの侵略に困った英国は、天敵である「イタドリマダラキジラミ」を2010年から持ち込むことに……。
▼『講座 日本映画4 戦争と日本映画』1987 岩波書店
 対日戦がはじまると、国防省がフランク・キャプラに、啓蒙宣伝映画を製作せしめた。
 押収した日本のフィルムを素材にしようとしたが、まるで反戦映画であるかのように、兵士の苦労ばかり描かれているのでキャプラは驚いた。

 記録映画のことは昔は「実写」と呼んだ。北清事変や日露戦争が、実写に撮られた。

 1937以降、ニュース映画の順番。まず皇室対軍の関係。その最初に「脱帽」という字幕が出る。ついで、戦争と政治がらみの報道。「陸軍省検閲済」というマークがつく。
 死体は絶対に写さなかった。
 最後に、市民生活のスナップや、季節ネタ。

 藍より青き大空に は1942『空の神兵』の映画主題歌だった。
 メナド降下のニュース映画では、ワルキューレ前奏曲が鳴り響いた。
 映画史上では、1940の独軍のパリ入場で初めて使われた曲だという。

 ロンドンの戦争博物館に集められている英、独、ソの戦時ニュース映画を1年がかりで観た山本明いわく。欧米人は戦争報道には死体シーンや捕虜シーンが欠かせないと考えているようだと。

 敗北報道でも死体をクロースアップする。それによって復讐心を煽り立てるのだ。

 藤田進のS15-5-22公開の『海軍爆撃隊』(北村小松原作、木村荘十二監督)。片発の中攻が7人の乗員とともに生還する話を見せた。
 同年9-25には『燃ゆる大空』公開。

 ベルリンのウーファ撮影所は、ソ連が進駐する前に、ナチズム宣伝のフィルムをすべて焼却した。
 東宝も8-16に『アメリカようそろ』というヤバい映画のネガを焼いている。
 当時は可燃性フィルム。ひどい悪臭と黒煙が出た。

▼橋爪・大澤・宮台 共著『おどろきの中国』2013-2 講談社新書
 中国人の張静華が奥さんである橋爪大三郎はネイティヴなみに北京語を使いこなす。じつは中国スペシャリスト。
 中国では、政治的統合とその安定が為政者の至高目的なので、宗教も思想も、すべてその目的のための道具としてとっかえひっかえされる。始皇帝は法家を採って儒家を斥けた。漢は儒家を採って、法家を隠し味にした。唐は仏教と道教を贔屓して儒教を相対化させた。宋は儒教に純化した。民国は、儒教を捨てて三民主義。中共は、三民主義を捨ててマルクス主義。それらはただオプションにすぎないのである。

 法家の路線は、家族や親族を解体せんとする。儒家は、父への服従を絶対視する。
 あわせて科挙になった。支配は血縁カリスマによってはならず、民衆からリクルートした行政官僚がするべきなのだという。

 中国では中間集団(トクヴィルの言う米国民主主義の基盤)は政府よりえらくなってはいけない。行政官僚の指導に従うべし。さらに、中間集団が血縁を凌駕することもゆるされない。

 皇帝とその継承者がまちがいなく純血だと保証されるためには、後宮を厳密に結界して牢獄化する必要があった。そこには皇帝と宦官しか出入りができないようにしなくてはならない。このシステムがなければ、皇帝の血にはカリスマなどなくなってしまう。
 日本には、このシステムは入らなかった。※卑母の子を見下すしきたりが、その代用。

 シナでは官職は世襲されない。行政官僚の世界に血縁はもちこまれない。しかし日本は律令制いらい今日まで、その逆である。

 宦官は、行政官僚が力をもちすぎないように、裏口入学の枠を残したものともいえる。だから宦官と官僚は、常に天敵。

 人びとが漢字の何に呪縛されているかを解明した白川静は偉人だ。
 漢字の種類が増えないということは、この世界が変化しないという世界観に結びつく。
 ※簡体字になって英語直輸入新語も増えて、呪いは解けつつあるのでは?

 戦後の日本で、「武士」に相当する存在は、アメリカになった。
 中国共産党はいつも新しいことを言い出す。過去に言ったことには束縛されない。人民はそのつど、新方針にしたがわなければいけない。
 共産党の言うことが変われば、一斉に方向転換できる。ソ連にはこれが無理だった。

 都市の職場を、共産党の単位(ワーキング・ユニット)にしてある。単位にはかならず共産党支部が設けられ、書記が指導する。すなわち市長よりも書記が偉い。工場長よりも書記が偉い。学校長よりも書記が偉い。そういう世界。

 中共の社宅団地は職場とほとんど隣接。そして、退職したあともずっとそこに住み続けてよい。本人が死ねば、配偶者や子孫がそのまま住み続ける。だから単位は、運命共同体ともなる。

 都市戸籍のシナ人が大学に入ると、「個人档案」(オフィシャル・ドキュメント)が教務課でつくられ、成績が書き込まれる。素行まですべて書き込まれる。就職すると、大学の教務課から、工場の人事課に、その档案が申し送られる。档案は、本人は見ることはできない。上司だけがそれを見ることができる。その上司も、じぶんの档案は閲覧ができない。したがって、全シナ人の档案を見ることができるのは、中共のナンバーワン、ただひとり、というシステムになっている。
 中共の党員の、組織や地域をまたいだ抜擢人事は、この档案によって可能になる。
 档案にはネガティヴな人事評価も書かれている。文化大革命のとき、その情報が紅衛兵にリークされ、紅衛兵がその役人の自宅へ押しかけた。
 档案によって全個人情報を支配できているので、ソ連や東欧のように、中共の独裁がゆらぐことはないのである。

 民間単位の書記にあたるものが、軍隊の政治委員。これは国民党時代からあった。
 だから国民党でも共産党でも、一回もクーデタは起きていない。

 文革のユニークな特徴。秘密警察は動員されなかった。警察も軍も傍観者だった。中共においては、粛清は、中共党の中での幹部相互の「検査」によらねばならないのだ。各人が警察なのである。

 蒋介石は、息子がモスクワで人質になっていた。しかし毛沢東は、家族を意に介さなかった。毛は、じぶんの父に敬意を抱かなかった。世襲王朝を残さなかった。

 グロチウスは、領土的な野心がなければ侵略とはいわない、と定義した。

 軍隊の階級や官職のランクを「級別」という。これによっていろいろな待遇に差がつく。

 改革開放の大前提は、アメリカだった。アメリカが、中国の安全を保障し、共産党の支配が続いてもいいと容認し、資本と技術を与え、アメリカの市場を開いてやったから、改革開放が成功した。すなわち、今の中共は、アメリカが作った。

 FT記者として滞支歴の長い、リチャード・マグレガーの『中国共産党』は良著。シナの大企業のトップの机上には、共産党幹部に直通している赤い電話機が置いてある。このベルが鳴ったときには、なにがなんでも出なくてはならない。用件のほとんどは、党の上層部からの私的な頼みごとだが。

 橋爪「GDPだけで測れば、アメリカを超えることは間違いないですね。それもごく近いうちに。実質GDPだったらもう追い抜いていると思う」(p.336)。

▼多田将『ミリタリーテクノロジーの物理学〈核兵器〉』2015-7
 原研には、NPTに加盟していない国の人は入れない。
 陽子と中性子を繋ぎとめているのが「〔電磁力より〕強い力」。

 ヨウ素131は、ベータ線を出す同位体。ベータ線は、内部被曝の影響が大きい放射線。しかも沃素は、その化学的な性質として、甲状腺に溜まり易い。
 天然に存在する、非放射性の沃素127を先に摂取してしまえばよい。

 硼素、ハフニウム、カドミウムは中性子を吸収し易い。
 原子炉の停止過程で発生しやすいキセノン135が原子炉内に蓄積すると、中性子が吸収されて減少し、核分裂反応が低下し、再稼働させにくくなる。このような物質を「毒物質」とよぶ。
 この毒物質に対抗しようと制御棒を抜きすぎたことから、チェルノブイリは暴走した。

 地熱の発生源の半分ていどは、地中の放射性物質の崩壊熱。

 ウラン235を濃度3~5%まで濃縮した燃料で運転を開始し、その濃度が1%まで下がったら燃料を交換する。
 交換回数を減らしたくば、濃縮度を20%以上に上げる。
 米海軍の最新空母は90%以上の濃縮燃料を用いる。

 重水は中性子を吸収しにくいが、とにかく高価。
 中性子ビームをもっとも減速させてしまう物質は、液体水素。

 液体金属の冷却材は、中性子を減速させる効果が小さい。
 ナトリウムは密度が水とほぼ同じ。液状のとき、粘度は水より小さい。

 かつてロシアの原潜2隻が、鉛・ビスマス合金を冷却材に用いていたが、ダメとわかって、現在では軽水炉のみになった。
 米海軍も1隻だけ、液体金属冷却路を原潜に搭載したことがある。今はすべて軽水炉。

 核爆弾の中性子発生装置=イニシエイターは、ポロニウム210とベリリウムを隣接させ、薄い金属箔で遮蔽しておく。これでポロニウムが発するα線は阻止される。あるいは4センチ以上離しておくのでもよい。

 ベリリウムは軽いのだが毒なので、さいきんはF1エンジンへの使用が禁ぜられた。
 六弗化ウランの沸点は57度。したがって容易に気化させることができ、そこから濃縮がスタートする。

 遠心分離機は、高速回転であるほど高性能。
 荒勝文策は広島被爆地の土壌を4日後に調べて、反応したウラン235の量は1kgだったと突き止めた。
 インプロージョン型原爆ではプルトニウム240の濃度を10%以下にする必要がある。
 プルトニウム239製造の観点からは、減速材は重水か黒鉛がいちばんよい。逆に、この減速材にこだわっている国は、あやしいわけである。

 リトルボーイの実験をしなかったのは、それくらいウランが貴重だったため。
 濃縮ウラン50kgのうち1kgだけが反応。あとは飛び散った。
 TNT換算で15キロトン。すなわち1万5000トンに相当。

 マンハッタン計画では、プルトニウムをコアに使用したガンバレル型原爆も開発されていた。マーク2、コードネームは「Thin Man」だった。じっさい、とても細長い外形。

 ナガサキ型は普通の電気雷管ではどうしても誤差が出るので、電熱線に一気に大電流を流して電熱線そのものを爆発させるようにした。Exploding Bridge Wire detonator という。誤差、千万分の1秒以下。そのかわり電源部の重さが1トンに。爆弾全体は4670kg。アルミ合金のプッシャーが120kg。タンパーが120kg。コアは6.2kg。
 TNT換算で22キロトン発生した。コアの五分の一ぐらいが反応した。タンパーの一部も核分裂した。

 三重水素は半減期12年なので、使わないで保存しておくと、ベータ崩壊してヘリウム3に変わってしまう。
 そこで米国の今の水爆弾頭は、重水ガスとトリチウムガスの混合ガスを、使用直前に注入する。

 核分裂から出てくる中性子より、核融合から出てくる中性子の方が高速で、毀害力も高い。だから中性子爆弾は、水爆からこしらえる。

 史上最大のICBM(ソ連製)でもペイロードは8.8トンだった。

 W88は、爆縮レンズを長楕円体にすることに成功し、RVの容積を有効活用できるようになった。
 「僕が合衆国大統領であるならば、〔トライデントII以外の〕他の核兵器は全て退役させてしまうでしょう」(p.188)。そのくらいの究極性を誇る。