旧通産官僚のアタマの中には地政学が無い。国家官僚としてはそれが入り口であるべきなのに。

 Matthew Cox 記者による2020-9-17記事「Special Ops Plan to Buy New Light-Attack Fleet May Get Pushed Back」。
     ことしの前半、SOCOMは75機のライトアタック機を買ってくれと議会に向けて声を上げた。「アームド・オヴァーウォッチ」として必要だと。そのためにFY2021で1億600万ドルの予算をつけて欲しいと。
 しかし、空軍特殊作戦コマンドのスライフ中将は最近語った。議会は「アームド・オヴァーウォッチ」の必要は理解してくれているが、予算は今回は実現しないだろうと。

 この夏の、上院軍事委員会は、2021年度国防予算について、背後に空軍の反対があることを匂わせた。※SOCOM固有のミニ空軍戦隊など持たれては困る、ということか。

 空軍がライトアタック機部隊を整備してアフガニスタンに投入してくれという要望は2016年からあるのだが、空軍はこの話にぜんぜん乗り気ではなく、過去数度の比較テストはしたものの、テスト予算も縮減し、うやむやのうちに話を葬ろうとしているかに見える。そこで業を煮やしたSOCOMが、だったらオレたちが自前でライトアタック機を買おうじゃないかと言い出したわけだが、それにも空軍は反対しているのだ。

 次。
 ストラテジーペイジの2020-9-18記事。
   ロシアは、短距離弾道弾を迎撃する機能に特化したABM「アバカン」を導入した。
 「アンテイ4000」と称していたABMを少し大型化したもの。10×10のラーンチャートラックも、いちだんと大型の「51P6E2」を使う。
 ※名前はガラリと変わっていながら、中身はちょこっとしか違ってない、というかほぼおんなじ――というのは、露軍兵器ではしばしばあるパターンなので、いちおう注意。

 ミサイル本体の系統は「S-500」である。これは「S-400」よりも大型のミサイル。
 アバカンは、型版でいうと、「9M82MDE」となる。
 レンジが350km。
 2人乗りのラーンチャートラック1台の上に、ミサイル2発と誘導レーダーがまとめられている。
 これは「S-300」(ロシア版ペトリオット)とは異なる流儀だ。S-300では、誘導レーダーと発射台車両は分けていた。

 しかしさすがにアバカンも、捜索レーダーは、別車両である。

 背景だが、シリア戦線が念頭にある。
 イスラエルは、航空機から発射する空対地ミサイルながら、攻撃目標のずっと手前でいったん大きく上昇して、弾道弾のように超高空からまっさかさまに落下して着弾する新世代の兵装を導入した。これを、地上から防ぎたいのである。

 シリア政府軍の「S-200」は、これをまったく阻止できないでいる。
 そしてシリア軍ではこのイスラエルの空対地兵装を「弾道弾」だと表現している。
 ロシアはこのシリア政府軍を援助しているが、「アンテイ2500/4000」ではダメだと判断しているのか、じっさいに試用してダメだったので、評判の崩壊をとどめるために、名前を変えたのだろう。

 ※誘導レーダーとSAM発射車両は同一車体上にまとめてしまうべきである――最前線で陣地転換直後に有線や無線でのんびりリンクしている時間などあるわけない――というロシア軍の最新の信念の背後には、ソ連崩壊後のたびかさなる実戦場経験が反映されていることは間違いない。リンクがうまくつながらないとき、どっちを疑うべきか? スパイのサボタージュや、外部からのECMかもわからんのに……。こういうトラブルが頻発しているのだろう。高射部隊の兵隊には原因の診断など即座にできない。問題の可能性の範囲が可視空間を越えているから。しかし、同一車体内の結線の具合なら、クルーがそれを判断できる。問題の可能性が可視的に限定される。だからトラブルの超越方法も、クルーだけでなんとか工夫してしまえる。自滅する前に確信をもって即決ができるのだ。こういう実戦智は、陸自にとっても無視できない貴重な情報ではないのかと思うのだが……。



日韓戦争を自衛隊はどう戦うか


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