部族世界では「見栄」がすべて。

  John Coyne 記者による2020-10-10記事「Exmouth Base Needed to Plug Naval Gap Between Perth and Darwin」。
       豪州大陸の最西端のちょっと北側に「ノースウェスト岬」があり、その岬が形成している北向きの湾に「エクスマウス」町がある。
 ここに新しい軍事基地を建設してインド洋作戦の拠点にしたいという話。

 ※中共本土からエクスマウスを攻撃できる地対地弾道弾を製造すると、それはそのまま、内蒙古からモスクワに届くIRBMにもなってしまう。中共はBMを核にするか非核にするかハッキリさせないポリシー。かならずや、ロシアとのいさかいの種になるだろう。まあ、それを誘導しているわけではないだろうが。

 エクスマウスの北25km〔岬の突端近く?〕には、すでに豪州海軍の通信基地「ハロルド・E・ホルト」がある。超長波によって、米海軍の原潜に信号を送る施設だ。
 またエクスマウスの南35kmには、豪州空軍の「リーアマウス」航空基地がある。

 エクスマウスは荒蕪地のようなものだけれども、地域住民も地域政府もそこに軍事基地がつくられることを歓迎していないようだ。

 基地ができると燃料補給が問題になる。豪州の西半分には、航空燃料を精製している精油プラントが1箇所しかない。それはフリーマントルの南郊のクイナナというところ。そこから大型タンクトレーラーで運んでくる。
 リーアマウスには航空燃料が600万リッター貯蔵されている。それはトレーラータンカーで1300kmも遠くから陸送してきたものなのだ。

 また海軍通信所では発電のために年に800万リッターの軽油を燃やす。その燃料は海外から買い付け、タンカーは基地隣接の「ムラート岬」の埠頭で荷揚げするのだが、不都合なことに、その一帯は「ニンガルー海岸」という世界遺産なのだ。

 豪州海軍は、フリーマントル港に補給艦『スターリング』を置いている。北岸のダーウィン港にも大基地が整備された。だが現状では、その中間の西海岸沖において、多数の軍艦に燃料を給油してやるのは容易ではない。上述のような、兵站軍港の空白があるからだ。『スターリング』は、頻繁にフリーマントル港まで戻ることを強いられるだろう。

 エクソマウスで軍艦に給油してやることができるようになれば、たとえば『コリンズ』級の潜水艦がインド洋を2週間パトロールするのに困難がなくなる。

 民間主導でエクソマウス港に複数の突堤を新築する計画がされている。その水深は12m確保できるので、ほとんどの軍艦が利用できるようになるだろう。

 地元を説得するときに、《半永久にこの基地を活用します》と軍としては約束はできないことが、話の前進を阻止する。政府がそれを請け合う仕組みが必要なのだ。何年かしたらバッサリと投資を絶ってしまうという変化が起きないことを、政府が地元に保証してやる仕組みが、特に軍事基地の自然保護地区への建設に関しては、求められる。

 次。
 Bilal Y. Saab 記者による2020-10-8記事「The Coming F-35 Fiasco」。
     UAEがF-35を買うとなったら、他の湾岸諸国も手を挙げるのは時間の問題だった。とうとう、カタールが買いたいと言い出した。イスラエルとしては、この流れは、大困りである。

 米国はカタールを、非NATOの主要同盟者だと語った。UAEにF-35売却をみとめたら、どうしてそのカタールに対して売却を拒否できる? イスラエルのために、米国はF-35の対UAE売却を拒否するべきだ。

 UAEとカタールがF-35を買ったら、次はサウジ、エジプト、ヨルダンだろう。米国は断りようがない。

 米政府はF-35の湾岸諸国への売却を、突然、全部止める、と言うべきである。
 ジョー・バイデンさんが次の大統領になったら、そうしてくれるだろう。なぜならバイデン氏はUAEには何の恩義も負うていないし、彼が政権をとったら湾岸諸国に対するアメリカの政策を見直すと公言しているからだ。

 イランを空軍だけで抑止できないことは2019の油田攻撃で立証されている。
 湾岸同盟国に必要なのはむしろ海軍力だ。イエメンのフーシに対するイランからの武器輸送を止められない現状の方が問題だろう。米政府はF-35のかわりに、小型艇や駆逐艦を湾岸政府に売ったらいい。

 ※韓国が軍事機密を中共へ漏らすリスクがいくらあっても、隣国の日本がF-35を装備したら、見栄として韓国もF-35を手にしないでは済まされない。これが部族レベルの世界の現実で、F-35はそれに対応したソフトウェアをさいしょから組み込んであるのである。それにしても「バイラクタルTB2」のデザインはすばらしい。プッシャープロペラが地上整備員を傷つけないように逆V字形尾翼ですっかりとりかこみ、ストール対策ともした。しかもそこにカメラを仕込んで機体の全況を後方斜め上から俯瞰モニターできるようにしてある。中央部から前はブレンデッドウイングボディのモノコック。「震電」がステルス無人機として転生したら、かくもあろうかという姿。主脚は割り切って引っ込めず、前脚だけ引込める。エンジンだけが謎で、おそらくASMをいちどに1発吊下するのがギリギリではないかと疑えるが、これを2007年から設計したとは、トルコ人を見直した。ていうか、日本メーカーは何やってだ?



空母を持って自衛隊は何をするのか: 朝鮮半島危機後の安全保障を再考する (一般書)