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 ストラテジーペイジの2020-10-26記事。
  8月の空戦。
 トルコ空軍のF-16が、ギリシャ領空に侵入し、演習中のギリシャ空軍のF-16×2機を追いかけた。

 ギリシャ側パイロットは応戦し、高機動格闘になった。
 トルコ空軍機側は燃料切れが近づいたのでトルコ領空に戻った。しかし1機は着陸直前に燃料がゼロになり、滑走路端の溝に突っ込んで機体は全損した。

 燃料マネジメントのできないレベルのパイロットだった。

 背景事情。トルコ空軍のパイロットの腕は2016以降、急激に劣化している。それまでは空軍に10年奉職したあとでないと民航パイロットには転職ができなかったのに、その規制も緩められている。

 2016-7にトルコではクーデター未遂があった。エルドアンはそのあと、数千人の公務員を馘にした。その中には空軍の幹部多数も含まれていた。自主退職とあわせて274人も。
 空軍はトルコの中でも世俗化の尖端を行く存在なので、宗教派のエルドアンとしては応援する気はゼロなのである。どんどん退職を促すわけだ。

 結果、トルコ空軍のF-16×1機あたり、かつては操縦士が1.25人スタンバイしていたのが、いまでは0.4人にまで減ってしまっているという。ちなみに同国にはF-16が240機ある。

 有事の激しい空戦を持続するためには、戦闘機1機あたりパイロットが1.25人いないとダメだと米軍では計算をしている。理想的には1.5倍が欲しい。それで米空母の中には、戦闘機数の1.4倍の搭乗員がちゃんと乗組んでいる。もしこの比率が1.25を割り込むと、その空軍部隊は、実戦で急速に戦闘力を衰えさせてしまうのだという。

 トルコ空軍のF-16パイロットはかつては年に150時間飛行していた。2016以降の数値は不明。

 作戦から帰投した戦闘機を最短の15分で点検・給油・給弾してふたたび発進させる「サージ」を持続するためには、たとえば12機のスコードロンであれば、総勢120人の地上整備員が、12時間交替シフトを続ける必要がある。その整備の中核は37人の下士官。

 北部イラクのPKK(分離主義クルド人)ゲリラをトルコが有人のF-16で攻撃させると、腕の劣化したパイロットが民間人や他国軍を誤爆して外交問題をひきおこす。それで、使える下士官に操縦させることのできる無人攻撃機が、最近のトルコでは頼りにされている。

 ※もともとプレデターの輸入をトルコ政府が望んだのに、それを対PKK用に使わせたくないオバマ政権が拒んだので、バイラクターが自主開発された次第。ほんらいバイラクターは対PKK専用の無人攻撃機だったのだ。それが偶然にアゼルバイジャンで大活躍することになっている。



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