三菱重工と旧通産官僚たちが「身の程」を知っていれば、大きなシステムではなく、枢要なパーツに投資する上策戦略が見えた筈。惜しい。

 Loren Thompson記者による2020-12-2記事「Pratt & Whitney’s Geared Turbofan Is Poised To Emerge From The Pandemic In Great Shape」。
   プラット&ウィットニーは今ではレイセオン・テクノロジーズ社の傘下部門である。
 中国風邪の蔓延で世界の航空旅行需要が激減したことから、航空エンジンメーカーも、大量の一時解雇を余儀なくされている。

 レイセオンは総体として民需ではなく軍需に軸足があるため、新コロの打撃を受け流すことができている。
 たとえばF-35のためのエンジン需要はちっとも減っていない。

 だがプラット社の場合、民需でも先行きは薔薇色である。というのは民航旅客機用の新型GTF(ギヤードターボファン)エンジンで革新的な低燃費を実現したため。このエンジンの将来については新コロは逆に追い風になってくれる。

 今、「エアバス320」のためのGTF発送率は99.98%である。したがって、すくなくともエンジンの供給ネックからエアバスの新旅客機の生産が停滞することはない。

 このGTFエンジンを搭載すれば、旅客機が1時間飛行するごとに100ガロンの燃料を節約でき、1時間あたりの二酸化炭素排出を1トン減らすことができるのである。しかも騒音は旧来エンジンの75%……。どうしてこれが争って買われないはずがあろうか。

 武漢ウィルスによる旅客の足止めが解除されたとき、最初に航空会社が飛ばそうと思うのも、GTF搭載の「A220(以前のボンバルCシリーズ)」と「A320」に決まっているのだ。

 なぜGTFエンジンだけ、パフォーマンスが時別にすぐれるのか?
 従来のターボファンエンジンは、軸の回転スピードは、前端から後端まで、まったく同じであった。
 しかし、前端のファンを回す最適スピードと、中間部以降の圧縮ブレードの最適回転速度は、おのずから別だったのである。理想的には、前端の送風ファンは、プロペラのようなものなので、タービンブレードよりも三分の一くらいの低速で、力強く空気を掻かせたいところだったのだ。
 従来エンジンは、それらを無理やりにワンスピードにまとめるしかなかった。だからファンの外縁は音速を超えてしまって、これが騒音源にもなっていた。効率という点でも妥協を強いられてきたのだ。
 GTFエンジンは、軸を二重の年輪状にして、前端のファンを回す軸に減速ギアを介在させて、送風ファンとしては最適の回転スピードで回せるようにした。最外縁が音速を超えることはなくなり、理想の推進効率を実現できるようになった。

 エンジンが静かになると、早朝や深更に空港を利用しても文句を言われなくなる。市街地上空を低空アプローチして時間と燃料を節約できる。
 燃費がよくなれば、路線の足も、もっと伸ばせる。

 プラット社のウェブサイトによると、GTF搭載のA320だけは、世界中でいちはやく、すでに8割が運航を再開しているという。

 GTFのおそろしさは、そのパテントのほとんどはP&W社が押さえていること。いまさら他社が同じようなものをこしらえようとしても、ぜったいにかなわない。PW社は、GTF開発のために25年の時間と100億ドルの研究費を投じてきた。それがこれから回収される。
 GTFを搭載した旅客機と、それを搭載していない旅客機とでは、今後の石油価格の変動がどうなろうと、まったく勝負にはならない。

 次。
 Greg Waldron 記者による2020-12-2記事「BEmbraer defence boss eyes KC-390, Super Tucano opportunities」。
   エンブラエル社の国防部門、2020年の業績は好調であった。

 KC-390戦術輸送&給油機の世界販売網を梃入れしようと思って進めていたボーイング社とのJV話は4月に決裂したが。
 ハンガリー軍は、旧式化したアントノフ26×3機を、同数のKC-390でリプレイスすると決めてくれた。

 その前には比島空軍が6機の「A-29スーパーツカノ」の購入を決めてくれた。
 最初の機体をブラジル工場からフェリーで納品したが、ほとんど地球一周の旅だった。まず大西洋を横断してカナリア諸島、ついでポルトガル、マルタ島、エジプト、UAE、インド、バングラデシュ、タイ、ヴェトナムに、次々立ち寄ったのである。新コロの最中ゆえ、諸手続きが面倒だったが。

 ※さっそく陸自は比島空軍との合同演習を申し込むべきだ。先島群島の防衛戦に、比島から「A-29」のエアカバーをさしかけてもらえるんだから。それを中共に見せつけよう!

 フィリピンは追加でさらに6機買う可能性がある。尤も比島国防相は何の確約もしない。
 ※これが米国工場の製品だったら、議会が邪魔してフィリピンには売れなくされた可能性がある。エンジンがカナダ製だったのも幸いした。

 なおブラジル空軍が「F-39」として採用したグリペンは、当初はスウェーデンで製造されるが、同時にエンブラエルへの技術移転を進め、逐次に内製化する。すでにサンパウロ州の工場内で、製造ラインの準備にかかっている。

 エンブラエル社は、隣国コロムビアが、セスナA-37およびIAIのクフィールのリプレイスとしてグリペンを買うように勧奨している。



並べてみりゃ分る第二次大戦の空軍戦力―600機の1/72模型による世界初の立体的比較!