米国が台湾に売ることになった「ハープーン・コースタル・ミサイル」は、優秀。

 4軸のトラックから、4連装で発射する。しかも最近のハープーンは射程が220kmある。つまり、台湾の基隆から190km先に浮かぶ魚釣島海面をカバーできるのだ。

 これに対して宮古島から魚釣島海域までは190km以上あるので「12式地対艦ミサイル」では届かない。
 陸自がカバーできないミッションを台湾軍がやってくれる。そして台湾政府は尖閣諸島の領有を主張している。
 情けないとは思わんのか?

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  Patrick Howell O’Neill 記者による2020-12-15記事「How Russian hackers infiltrated the US government for months without being spotted」。
    ロシアによる米政府機関内へのスパイウェアの埋め込みはどうやって成功したのか。
 まず「ソーラーウインズ」という民間ソフトウェア企業のシステムに侵入した。
 そして「オリオン」という同社の製品中にバックドアを埋め込んだ。「オリオン」はイントラネット管理ソフトで、それを諸官衙が使っているのだ。

 ソーラーウインズ社は、諸官衙との契約により、アップデートサービスを不定期に実行する。そのダウンロードがなされたことにより、全官衙のイントラネットがロシアから覘き放題になった。

 ソーラーウインズ社の顧客は全世界に30万法人もある。フォーチュン500に名が載る企業のほとんどと、多くの官公署が含まれる。

 同社によれば、1万8000弱の官衙が、スパイウェア入りのアップデートをダウンロードしてしまったと。
 バックドアは「サンバースト」と呼ばれるものである。
 敵は、イントラネットのあらゆる場所をすぐに覘き回ろうとはしない。それではアクセスが急増して怪しまれるから。
 すこしづつ、セクションを限って、徐々に探索するのである。狡猾である。

 サンバーストは、最初の2週間はまったく挙動しない。そのあと目覚めて、ロシア本国のハッカーに向けて、連絡を開始する。

 盗んだ情報を送る先のIPアドレスは、毎回、変わる。一回かぎりの使い捨て。ぜったいに同じ受信機に対して二度以上報告を繰り返すようなヘマはやらない。犯罪集団が使い捨てのセルフォンを、通話の都度、ゴミ箱に捨てていくようなもので、これなら顧客がネットワーグログを点検しても、不審なパターンはあらわれず、猜疑を招くことはない。

 こうやって敵は3月から10ヶ月間もバレずに情報を漁ることができたのだ。

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 ストラテジーペイジの2020-12-15記事。
    アゼルバイジャンにはパキスタンからも軍事顧問が送り込まれていた。
 インドはアルメニアに3月に4000万ドルの対砲レーダーを売っていたが、それは今次の戦争で機能しなかったと中共メディアが宣伝している。

 これはディスインフォメーションだとインドは反論。インドは訓練用の対砲レーダーを1個売ったのみで、それは実戦に使われていないと。

 インドは1999のカルギル紛争で対砲レーダーがなかったためにパキスタン軍に苦しめられた。パキスタン軍は米国製のAN/TPQ-36 対砲レーダーを装備していたが、インド軍は対砲レーダーを買えないでいた。

 理由のひとつは、インド政府が伝統的にインド陸軍を強くするつもりがない。もうひとつはインドが核武装をやめないことから米国議会が対砲レーダーの対印輸出を禁じた。

 しかし2002にその対印制裁がなくなってようやく07年にインドはAN-TPQ37を12個、発注。
 それが届くとコピーを始めた。「Swathi」という。メーカーは半官のBharatエレクトロニクス社で、市販部品を多数使った。
 08年に「Swathi」は28基、発注された。
 初号機をインド陸軍が手にしたのが2017年のこと。
 そして1機がアルメニアに売られたのだ。

 他方、米陸軍は、AN PQ-36/37「ファイアーファインダー」を、AN/TPQ-53で更新開始した。2012から。しかし誤警報が多く、複数の飛来弾をたてつづけに処理することができず、砲弾とロケット弾の区別ができないなどの不具合が多くて、それが直ったのは2015より後である。

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 Francis P. Sempa 記者による2020-12-13記事「The First Anti-Communist: Halford Mackinder in South Russia 1920」。
     ブライアン・ブルエット教授がマッキンダーの評伝を書いている。

 1919年に南ロシアに派遣されていたハルフォード・マッキンダーは、デニキンの白軍とポーランドを結合させて英国が後ろから支えればボルシェビキをユーラシア北部に封じ込めることができるとロンドン政府に勧告した。それをしなければ次はインドやアジアが共産軍に支配されるだろうと。
 しかしWWIで疲弊し切っていた英政府にはいささか無理な提案だった。
 おかげでそれから70年間、世界はソ連に苦しめられることになった。

 ※コーカサスの原油資源にボルシェビキがアクセスできなかったら、ソ連があそこまで強勢化することはなかった。マッキンダーの最大の謎は、彼の著述の中で、敢えて石油には焦点を当てないようにしているのではないかと疑われること。彼は真に価値ある石油情報を英政府部内限りの秘密の知識として外に出さないようにしていたのか? そこが評伝で開明される日は来るのだろうか?



兵頭二十八の防衛白書2015