6633という数字は、緯度66度33分のことで、そこから上は両極圏である。

  Bill Bray 記者による2021-1-5記事「Professional Military Writing and the English Language」。
      ジョージ・オーウェルは1946年に「政治と英語」というエッセイを雑誌に寄稿した。
 このエッセイは米国の高校と大学の作文の授業の教材に、よく使用される。

 彼はその前年に小説『動物農場』を発表している。
 平易に、クリアーに書こうじゃないかとオーウェルは主張した。
  ※『アニマルファーム』は、子供が理解できる単語だけを用いて、共産主義を批判してみせた寓話。

 記者は『海軍協会雑誌』の編集に携わり、150年近く前からの寄稿を点検しているが、概して、1センテンスが長ったらしく、5語で足りるところを10語使うといった、オーウェルの反対方向の流儀の文体ばかりだ。

 たとえば、1909年に『海軍協会雑誌』から章を与えられた、アーネスト・キング中尉の寄稿エッセイの最初の2センテンスも、(韜晦ではないのだが)やたらに長い。

 それでも1930年代から1980年代にかけては、『海軍協会雑誌』への投稿の文体は、短くわかりやすくなる傾向が見られる。
 米国の中にも、簡易でわかりやすく書く運動は1920年代からあった。
 1センテンスの短い、ジャーナリズム文体を、小説にもちこんで成功したヘミングウェイは、WWI直後に成功した。

 この米海軍の美風が1990年代に壊れた。原因は、誉めそやされた経済系の有名著述者たちがリリースしたマネジメント指南書からの悪影響である。
 米国社会が大成功しているとみなした業種業界の経営の秘伝の呪文に似せて軍事論文を書けば、若い軍人にはえらく箔がついた。

 指揮官・幕僚が読むべき書籍のリストに、そうしたビジネス理論書が加えられるようになった。
 経営工学を軍隊組織にあてはめれば、軍隊組織も効率化できるかに思われた。
 会社を経営するように軍隊を経営すればいい――がスローガンになった。

 しかし『アトラックティック』誌2006年6月号にマシュー・スチュワートが「マネジメント都市伝説」を寄稿して見事に曝いてくれたように、それらの経営指南書は、学問を装った、ただの俗流自己啓発本だった。

 統合参謀本部の戦略文書である「統合ビジョン2020」……。すこぶる付きの悪文だ。オーウェルが、するなといったことを、ここでは、ぜんぶやっている。

 『国家問題』誌の2020年春号にアダム・ガーフィンクルが「ディープ・リテラシーの侵蝕」という記事を寄稿し、米国の民主主義がリテラシー劣化によって崩壊しかねないと警告している。
 軍隊の作る文書についても同じである。

 流行思想は言語を壊す。流行言語も思想を壊す。――これもオーウェルが鳴らした警鐘だ。

 米海軍のドクトリンをあらわした『海上戦闘 2020年版』は、『海上戦闘 2010年版』よりもずっと平易な文によって書かれている。これを編纂したのは、記者の同僚だ。
 指揮官が問題を把握できたならば、直す方法はあるのだ。

 オーウェルから学ぶ、軍人作文鉄則。
 暗喩を使うな。短文で表現できることを長文で表現するな。ある一文を削除しても意味が通じるなら、その一文は削除せよ。能動態で言えるときに受動態は使うな。最先端のジャーゴンを使うな(たとえば、かつて流行った「シナジー」)。むきだしの野蛮表現を避けるためになら、以上の鉄則に反しても可いぞ。

 次。
 ストラテジーペイジの2021-1-5記事。
   2020-12-31にギリシャのタンカーがイラク沖で仕掛けられた1個のリムペット機雷は、イランの高速艇から夜間に飛び込んだダイバーが仕掛けたものである。
 この水中工作兵は、別な高速艇によって揚収された。

 2020-11-29に、イスラエルの無人機が、深夜、シリアとイラクの国境を通過しようとしたIRGC(イラン革命防衛隊)の幹部1名を、車両ごと吹き飛ばした。同乗していたIRGCの下っ端3名も死亡。

 げんざい、中共は軍用機を3200機もっていて、これは世界第三位である。
 ところが、日本、韓国、台湾の軍用機を合計すると、3200機を越えてしまう。このことに中共は焦っている。
 つまり米軍がちょっと手を貸すだけで、中共軍は空を支配できなくなるからだ。
 数字の上で米空軍が冠絶しているのは、じつは、戦闘機や爆撃機よりも、支援用の軍用機である。全世界の輸送機・偵察機の38%は米軍が持っている。さらに空中給油機になると、米軍の保有機が世界の76%を占めている。



米中「AI大戦」