飛行船の時代が ふたたび やって来そう?

 Alan H. Epstein 記者による2021-1-13記事「Opinion: Leave Hydrogen For Dirigibles」。
   長距離を運航する大型旅客機。これが、いま世界じゅうの航空機が出している二酸化炭素の90%以上の排出源となっている。
 これを、ゼロエミッションエンジン、すなわち電池駆動モーターもしくは SAJF=サステイナブルな代替ジェット燃料――たとえば合成炭化水素やナタネ油など 簡単に互換ができる液体燃料を燃焼させるエンジンか、燃料電池で駆動する電動モーターによって飛ぶ新式の大型旅客機 によって 2050年までに置き換えられるか――2050年までに世界の航空会社に採用させられるか――といえば、まったく不可能である。

 まず過去10年のリチウム電池に関する知見にもとづき、2050年までに大型旅客機をこうした蓄電池で飛ばすことが、重量とエネルギーの比率の限度から、そもそも不可能であろうと計算されている。これに関して技術界の結論はとっくに出ている。

 したがって残った可能性としてはSAJFを使うエンジンだけとなる。
 マスコミ的には水素に未来があるようにもてはやされている。

 しかし事実が隠されている。現在得られる水素のほとんどは、天然ガスか、石炭から得られる。そのプロセスは「グリーン」ではないのだ。

 水素をもてはやす人々は、その水素が「グリーン電力」〔=太陽や風力により発生した電気。人によってはそれに原子力発電を加える〕によって得られるだろうということを前提にしている。

 2019年に世界の航空業界が消費したジェット燃料を電力に換算すれば、同じ年に全世界で発電された電力の14%にも相当するのだ。
 つまりグリーン電力へのとてつもない投資がまず全世界で先行しないと、グリーン旅客機に必要な水素もぜんぜん得られはしない。

 グリーン旅客機は液体水素を搭載しなければならないだろう。そして、もっかの技術では、水素を電気分解してさらにそれを液化すると、その液体水素の価格は、投入したエネルギー価格(電気代)の半額となる。

 さらにその液体水素を、工場から、全世界の飛行場まで、おびただしく輸送しなければならない。その輸送にもエネルギーが消費されねばならず、その輸送手段(船や鉄道や車両、あるいはパイプライン)の動力もまた「グリーン」でなければならない……とすると……?
 その水素はとうてい「安価」ではなくなるはずだ。さもないと供給業者が採算割れする。

 別な問題。同じエネルギーを貯蔵するのに、液化水素は、旧来のジェット燃料の約3倍の容量のタンクを必要とするのである。1機の航空機が抱える燃料タンクスペースは、旧来の3倍、必要になるのだ。

 水素を液体に保つためには、マイナス240度でなくてはならない。その容器は非常に高い断熱性が求めらるから、必然的に球形または小型の円筒の形状になる。それが旅客機の外形設計をいままでよりもやりにくくするだろう。

 ※おそらく「ドロップタンク式」になるんじゃないか? 空中で棄てるためではなく、地上ですばやく交換できるようにするために、胴体真下のリセスに嵌め込み式に装着するようになるのでは? そこなら日陰だし……。

 極低温でしかも発火性の水素を客室のすぐ近くに大量に貯蔵するなんてことが安全思想上、ゆるされるわけがない。しかし飛行機デザイナーたちは、それをしたがっている。

 内燃機関そのものは、水素用の特別なものは要らない。今のジェットエンジンは、そのままで水素燃焼エンジンにして大丈夫だ。

 燃料電池(fuel cell)を推奨する人たちには悪いが、燃料電池+電動モーター+プロペラによっては、今の大型旅客機の高度と航続力と速力を、同じシステム重量で達成することはできない。まったく不可能な話。

 小型コミューター機の「エンジン効率」は、そもそも、大型旅客機よりも悪い。倍くらい、悪い。だから、9人乗りくらいの小型ローカル旅客機であるならば、維持費の高額な 燃料電池+電気モーター+プロペラ によっても、採算が取れる可能性があるのだ。

 そして忘れてはならないが、水素燃焼エンジンによって小型機を飛ばすことだって、当然にできる。また、ナタネ油だとか、回収食用油も、小型機用エンジンになら、使えそうだ。SAJFなら小型ジェットエンジンで小型機を駆動できるのだ。となると、燃料電池が未来の小型旅客機の動力のホープかどうかも、再検討されねばなるまい。

 記者の結論。水素は飛行船のためにとっておけよ!

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 Kyle Mizokami 記者による2021-1-26記事「F-35 Pilot Reveals the Disappointing Truth About the Fighter’s Cockpit」。
   『Hush-Kit』という航空雑誌が、匿名のF-35パイロットにインタビューした記事。コクピット設計について酷評されていた。その内容のダイジェスト。

 タッチスクリーンが大不評。
 メカニカルな触覚のフィードバックがないから、本当にスイッチが入ったかどうか、ユーザーが確信を持てない。

 ※たしかF-22のときはテスパイが大反対してタッチスクリーンをやめさせ、スクリーンの四周を囲むボタン列式にさせたんじゃなかったか? その意見がF-35には引き継がれていなかったのか。この匿名パイロットはきっと米空軍だろう。彼らはタッチスクリーンが嫌いだ。それは尤もである。

 タービュランスに苦しんでいないときでもタッチスクリーンが予期しない反応をしてくれることが10回に2回もある。

 1個40万ドルの情報統合表示ヘルメットも不評。昔のHUDの方がずっといい、と。

 それから、音声によってマシーンに対して指示を出せる機能。パイロットは誰も使っていない。
 Gがかかっている状態でふつうの声が出せる奴なんかいないってーの。

 次。
 Alejandro de la Garza 記者による2021-1-28記事「Many States Don’t Know Who’s Getting COVID-19 Vaccines. That’s a Huge Problem for Equity」。
   各州の注射担当者、大苦戦中。
 住民の誰がすでに1回目の注射を受けたのか、誰が未だなのか、そのデータベース入力が、できていない。だから、進捗状況を誰も把握ができない。

 「データ・ギャップ」という大障害がたちあらわれた。

 しかも米国の場合、人種や民族によって注射普及度に差が生じると、政治問題になってしまう。そこも調節しなければならない。頭が痛すぎるぜ。

 住民として登録されていない不法移民たちはどうするのか。
 英語が通じない住民にどう通知するのか。
 難題が次々と……。

 住民の中には、じぶんの人種や民族を当局に教えたくないという者もいる。その区別が差別につながるんだという主張が背景にあったりする。その人たちのデータをどう扱えばいいのか。

 トランプが疫病統計調査を遅らせていたのが悪いのだ。

 ※米国ですらバイデンとトランプという2人の劣った候補しか大統領選に残らなかった。「人口3億2000万の国なのに、ほかに人材はいないのかよ」とアメリカ人ですら呆れたはずだ。無数のカネの亡者の意見を集約して法律化するためには、大統領には主張なんてあっちゃいけないのである。選挙のある国はどこでも似たようなものだ。とことん妥協して数をまとめられる人物でないと、議会を乗り切れない。それがわかっていて、いったいわれわれは日本の政治家に何を望むというのか? 頼れる政治家向きの人材なんて、世界中どこでも、払底しているのだ。



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