Lisa Abend 記者による2021-2-10記事「Why Denmark’s “corona passport” is more of a promise than a plan」。
ビジネス界から熱烈に期待されているのがデンマークの実験。
スマホを「ワクチン接種済み」証明手段として持ち歩けば、その人は自由に商用出張できるようにするという取り組み。
これは先週、デンマークの財務大臣から発表された。《コロナ・パスポート》と通称されている。
その人がすでにワクチンを受けているか、もしくは、すでに抗体免疫をもっていることを、証明する。
このデジタル証明は、自動でアップデートされるという。すなわち、病院での免疫検査の結果が出たら、即、それが記載される。
空港その他では、スマホに表示されるQRコードをかざすことになる。
すると問題は、それでセンシティヴな個人情報が漏洩しないように管理し切れるのか。また、偽証明がぜったいに出てくるよね、ということ。
何にせよ、こんな実験ができるのは、コンパクトで中央集権的な先進国でなくては。だからデンマークが先頭に立ったのである。
デンマーク政府はIBMとこのプロジェクトで協働中である。数ヶ月以内にはデンマーク国内で普及させるつもり。
下地として、すでにデンマークには「NEM-ID」というオンライン個人認証システムができあがっている。これはデンマーク版のマイナンバーで、このIDだけで、銀行も納税も、政府機関との文書やりとりもできるようになっているのだ。そして、個人の健康情報も、既に高度に一元管理されている。
批判者いわく。このパスポートで小規模集会はOKだろう。しかし大規模コンサートを開けるようにはならない。というのはワクチンにも免疫にも「100%」の防護力などないからだ。となると、感染拡大を抑止することの方が、もっかのところは、社会公益的に、優先されねばならない。
月曜日、ギリシャとイスラエルは、相互に、ワクチン接種済みの国民を自由に旅行させるという協定を結んだ。
同様の協定は、スウェーデンと英国政府との間でも計画されている。これは今夏シーズンから適用される。
EUも、こうした取り組みの拡大版を模索している。
フランスとドイツは、このようなパスポートには反対している。それは個人情報がダダ漏れになるからである。
米国の場合、個人の健康コンディションを政府が一元管理する文化がないので、コロナパスポートはまったく無理である。
次。
Sarah Zhang 記者による2021-2-9記事「What If We Never Reach Herd Immunity?」。
集団免疫は、カンタンに言うと、焚き木の中の水分。焚き木にする木の枝が、湿りまくっていれば、それは火をつけてもじきに消えてしまう。そういう状態。
発症者は永久にゼロにはできないが、そこから2人以上にうつされなければ、パンデミックは終わる。キャンプファイアーにはならない。
しかし武漢肺炎の予期しなかった特徴は、変異が早いこと。
ウィルスのスパイク部分のたんぱく質が、どんどん、変わり続ける。
だから、ワクチン設計もそれに合わせて変えないと、ワクチンの性能が時とともに低下し、人類はいつまでも集団免疫を獲得できなくなる。
南アフリカとブラジルから報告されている変異ウィルスには要注意。
一回新コロに罹患して治った人も、南アフリカ変異株によって再度、感染させられている。
南ア政府は、日曜日に、アストラゼネカの接種を中止した。そのワクチンを射っても、変異ウィルスの感染を予防できないからというので。ただし重症にはさせない効果は認められているのだが。
※アストラゼネカのガラス瓶の写真を見ると、10射分が入っているようだ。わが国の旧型注射器だと、この何割を無駄にしてしまうことになるのだろう? 注射器に詳しい日本人は数十万人をくだらず居るはずであるのに、なんで去年のうちに《正しい注射器》の手当てができなかったのだろう? 誰かそれをネットで警告できたはずだよね。このネット時代に、間抜けしかいねえのか。
ジョンソン&ジョンソンの新ワクチン、ならびに、ノヴァヴァクスの新ワクチンも、試射されている最中だが、南ア型に対する効き目は、予期したよりも低い72%から57%だという。
ブラジルのマナウス地方。昨年の新コロ第一波で多数の住民が免疫を持っているはずであるにもかかわらず、変異ウィルスがまたしても大流行中である。
よって、今のところ、こう言える。
一回新コロに罹患して得た免疫も、あるいはワクチン注射によって得られた免疫も、変異ウィルスに対する防護は約束してくれないのだ。
ワクチン接種がいつまでも完了しない国があると、その住民の間で新しい変異株が生れてしまい、それが、すでにワクチン接種を済ませてしまった国の住民にまた伝染して、いつまで経っても人類は集団免疫を獲得できないことになってしまう。
予防には四つの狙いがある。すなわち――重症化させない。発症をさせない。感染者から他者へ伝染させない。誰も感染しない――。これら四つの、うしろのものほど、達成は難しい。
腕に筋肉注射されたワクチンが、その人の全身にとっての滴定量/力価であるとしても、新コロが最初に侵入する鼻や喉の粘膜部位に限れば、抗体はウィルスの数に比較して十分ではない、ということは、あり得る。
しかしそこから下の肺においては抗体がウィルスに対して数の上で十分となり得る。これが、「感染はするが重症化はしない」というメカニズムだ。
長期的には、新コロは、軽症化していくと予想されている。もちろん楽観予想ではあるが……。
これは、「コロナ系」の風邪ウィルスに、被験者を二度、1年の間隔を置いて感染させるという過去の実験の結果から、推測されている。二度目には自覚症状がない場合もあった。
次。
Nicole Wetsman 記者による2021-2-9記事「AstraZeneca’s COVID-19 vaccine has been confusing from the start」。
アストラゼネカの接種を中止した南ア政府の決定には疑問がある。感染を阻止する力が弱くても重症化阻止の力があればその接種には価値があるのに、重症化阻止の効力についての見極めを十分しているようには見えないからだ。
南ア型変異株の感染阻止力が、旧型支那ウイルスに対する感染阻止力より落ちる現象は、他社製のワクチンでも観察されていることである。
感染阻止力のベンチマークとして当局は「50%阻止」を基準にしている。アストラゼネカは、南ア変異株に関してはその値を下回る、と南ア当局は言う。
アストラゼネカは昨年の9月に量産開始できると予告してしまい、トランプ政権の保健局がそれに飛びついて、10月にはワクチンが米国に届く、と公表してしまった。しかし9月に副反応について謎めいた例が出てしまったために治験が延びた。
結果、データのまとめが仕上がったのが11月後半となった。会社は、感染阻止力は90%だと発表した。
ところがあとから、このテストにおいて、規定より少量を注射された人は90%感染が阻止されたが、規定量をキッチリ注射された人は、もっと低い阻止力しか証明しなかった、という奇妙な真相がバレてしまった。
南ア政府は、入庫しているアストラゼネカについて、これをヘルスケア職員の一部に接種して、独自にデータを検証したいと考えている。