真の内閣は広告会社だということがわかってしまった。しかし広告会社はテレビしか見ていない国民の意向を確実に政治に反映させている。

 対面で会う人すべてを説得できる政治家は存在する。それが森氏だった。しかし同時に、テレビしか見ていない国民を説得する能力はゼロの人がいる。それも森氏だった。

 現下の菅内閣にとっては、テレビしか見ていない国民からの支持が大事である。

 その、テレビしか見ていない国民は、ワクチンが間に合わないこの状況下で東京オリンピックなど開催することには反対である。

 その五輪を、どうしても開催すると叫んで譲らないのが森氏であった。
 森氏を切り捨てない限り、菅内閣の寿命はもう無い――と、広告会社は判断したのだろう。
 そこで《森氏が失言してくれないかなぁ》と、広告会社は神に祈ったのだろう。

 その祈りは通じたようだった。
 細けぇことはどうでもいいんである。
 森氏は広告会社にまんまときっかけを提供してくれた。

 広告会社は森氏の進路をすべて潰し、作戦の第一段階は成功しているところだ。

 テレビしか見ていない国民は、森氏の退場で溜飲を下げた。テレビしか見ていない国民は、森氏が前々から大嫌いだったからだ。それが分ってなかったのが森氏だった。新聞屋も含めて、対面で会う人すべてを説得できてしまう資質が、森氏をTV世論に対して盲目化させていた。引導を渡すのは、広告会社参謀が実質指揮を執る菅内閣しかなかった。

 あとがまに女性を据えて、五輪を返上するところまでが、作戦の第二段階だろうと思われる。

 次。
 Karen Hao 記者による2021-2-12記事「Deepfake porn is ruining women’s lives. Now the law may finally ban it」。
   英国のブロードキャスター、HM氏。知り合いから、あんたのヌード写真がポルノサイトに貼られまくってるよと言われて驚いた。
 自分で確認するとそのディープフェイク画像の素材は、2017年から19年にかけてフェイスブックなどSNSにUpした写真。
 いかにもまがいものとわかるものもあるが、おそろしく精巧にはめこまれたものもある。暴力的なシーン。
 当人にはこういう声が聞こえる。「おれたちはいつだってこういうことをしてやれるんだぜ」と。

 ※さいきんでは動画でないスチルのコラージュもディープフェイクと呼ぶらしく、読者を混乱させるかもしれない。もともとはディープフェイクとは動画コンテンツに限られていた。

 警察にうったえたが、できることは何もないと言われた。

 こんなことをする犯人は見当もつかない。周囲のすべての人が疑わしくなる。投稿者は元夫のファーストネームを署名にとりいれているが、これは嘘だろう。
 だがそれは、すべてのリアリティを疑ってかからねばならぬ新人生の始まりを、いみじくも暗示していた。

 「センシティAI」というリサーチ会社がディープフェイクのビデオ投稿を2018-12までさかのぼって調べた。初期にはそれは政治家の偽動画に悪用されると警戒されたものだが、蓋を開けてみれば、9割以上、当の女性の同意のない合成ポルノで占められるようになった。

 リベンジポルノとしてはディープフェイクは屈強である。少なからぬ被害者は、自分の名前を完全に変えたり、SNS上から一切の自撮り画像を消したりする作業を強いられる。
 しかしデジタル素材はコピーが容易なので、それがどこかに保存されていて、旧作または新作が、いつまた不意にネット上に貼られるか、予測ができない。

 さいわい英国と米国では、歩調をあわせるようにして、本人の同意のないディープフェイク〔やはりこの場合も、スチルのコラージュをも含む〕を違法化する動きが進んでいる。

 2017年に「レディット」上で「ディープフェイク」というスクリーンネームを使う人物が、某セレブ女優の顔部分を、ポルノスターの首から下と合成した動画を公開。このAIツールはオープンソフトだった。
 この技法によって一般人女性が迷惑を被るようになるのも時間の問題だとすぐに気づかれた。

 2019年に、着衣の女性画像をAIが自動的に裸体化してしまう「DeepNude」というアプリが出現。すぐに引っ込められたが、2020年以降それは「Telegram」というSNS上でボットになっている。

 一般女性の写真をこれを使って裸身化し、それをネットにUpすれば、永遠のイヤガラセがスタートする。

 「センシティ」の主任研究者いわく、すでに被害者は10万人をくだらないだろう、と。

 武漢肺炎のロックダウンのせいで人々は暇になり、オンラインで時間をつぶすことになり、合成エロ写真の製造数が倍増したそうである。

 米国では46州が、リベンジポルノを法令で禁じている。しかしヴァジニア州とカリフォルニア州を除けば、それはフェイク作品にまでは及んでいない。
 英国も同様。

 世界のどの国もいまだに、素材当人の同意を得ていない合成ポルノ画像を、国の法令レベルでは禁じていない。