一回震災を喰らって、それでもまた旧式家作を再現していた人々よ、いいかげんに目醒めよう!

 明日は暴風雪が襲来するそうだし、地震だってまたいつどこで突発するかわからん。

 このさい、多くの日本人が「クォンセット」(Quonset)という英単語を知ってくれることを真摯に望む。
 WWII中の「かまぼこ兵舎」から転じて、ハーフ・バレル(半円筒状)外形の金属製ドーム・ハウスを、今ではそのように呼ぶ。
 この単語がそのまま会社名の一部になっている北米のメーカーも普及に頑張っている。安価なスチールパネルを、亜鉛+アルミニウム等で特殊鍍金(めっき)し、雨さらし状態で70年間もメンテナンス・フリーにしたという。

 ハリケーンが襲来した海岸で、この現代版クォンセット・ハウスの1軒だけが無事に残った、だとか、山火事で町が全滅したのにクォンセット・ハウスは延焼を免れた、といった実例が、メーカーによって紹介されている。
 豪雪地方でも、雪下ろしの必要がまったくない。

 第二次大戦中、米海軍(シービーズ)が、兵舎(より軍隊式に正確に言うと“廠舎”)や物置小屋をプレハブ工法で急設したいと考えて完成したのが、波板のトタン板(初期には鉄不足によりベニヤ材も。後期にはアルミ材も)を使ったカマボコ廠舎であった。

 これが戦後、おびただしく余剰となってしまい、米本土で軍から民間へ一挙に大量に放出された。
 おかげで米国の庶民は、軍隊式の総金属製のクォンセット・ハット(蒲鉾小屋)を倉庫とか納屋、店舗、さらには簡易住居にできることを知ることになったわけ。

 最もシンプルな、近代的クォンセット構造とするなら、柱もいらないし梁もいらない。敢えてそれらを内側に組込むなら「中二階」構造にできる。

 工法は、ボルトとナットで部材を接合させて行くだけ。金属クォンセットのパネル・パーツがメーカーから配達されてきたら、施主がDIYで組み上げることもできる(基礎と内装と配管・配線はさすがに素人では無理だろうが……)。

 とにかく職人の工賃を大幅に節約できるので、1平方フィートあたり最低5ドルの工費にもできるという。2000倍すれば56坪くらいになろうが、それで1万ドルに収まる計算だ。

 2013年頃のわたしの著作をお読みの方々は、わたしが「単身者向けの百万円住宅はできる。それができないのはメーカーの怠慢」と主張していたことを覚えていてくださろう。米国では、とっくにそれは実現されていたようである。

 側壁や天井の採光窓、端壁(はしかべ)の出入り口(引き戸式が推奨されている)などは、できあいのパネルをそこにはめ込めば、自在にカスタムできる。

 このクォンセット・ハウスは、天井を高くできるので、複合災害時の「隔離棟」「避難住宅」として理想的ではないかと思う。将来、日本の敵国が、天災に乗じ、兵器級の生物兵器を放って戦争を仕掛けてきたときなど、単なる幕舎構造では人々の生命は守り難い。壁も天井もスチール・パネルで構成されたクォンセット建造物なら、豪雪も土砂崩れも、否それどころか、核ミサイル攻撃も、怖くなくなる。

 自治体や自衛隊は、平時からクォンセット・ハウスの資材を備蓄しておき、非常時の必要に応じてそれを現地に急設するべきである。ボルトとナットをゆるめれば、金属パネル・パーツはすぐに解隊して撤去することも容易だ。

 地方の被災貧民を救済するために、まだクリアされなければならないハードルがある。すなわちそれは、「基礎」工事をDIY化する方法はないのか、ということ。さしものシービーズも、これだけは考え付けなかったようだ。

 ベタ基礎はあきらめなければならない。
 しかしベタでなくてもいいなら、方法はある。
 わたしが今、空想しているのは、1個が台車に楽々載るくらいの寸法の六角形のコンクリート製タイルを、二層に敷き詰める方法。
 そのタイルは、平面の中央部に、天地方向(Z軸)の小さな縦貫孔がある。さらに上からみたとき、タイルの表面には、その中央穴から六稜の角々に向けて放射状に、細い筋溝が刻まれている。さらに六稜のカドは、Z軸方向の縦溝によって、まるめられている。
 こうすることで、食い違い式に敷き並べた2層のタイルを、細い金属杭を上から刺すことによって土に固定できる。その金属杭から、タイル表面の筋溝に沿って、針金やグラスファイバーの紐を水平方向に伸ばすこともできる。そのところどころを杭に絡めておけば、タイル全体が靭強に一体化するだろう。

 このような「タイル貼り付け式基礎」ならば、たとえば、活断層が動いて、ベタ基礎が破壊されてしまうほどの大地震に見舞われても、簡単に補修ができるはずだ。
 それも、職人を呼ばなくとも、自分たちだけで、すこしづつ作業して、直してしまえるのである。