ゆっくりやっている暇はないはずだ。この1~2年が尖閣脅威のピークだろうから。

 Joseph Trevithick and Tyler Rogoway 記者による2021-2-15記事「The Navy Wants To Get Rid Of Its Nearly Brand New Patrol Boats」。
   米海軍はとつぜん、『マーク6』パトロール艇を2021会計年度末をもって全廃すると決めた。つまり本年の9月30日である。
 『マーク6』艇はぜんぶで12隻ある。ペルシャ湾、グァムと米本土に展開している。
 その最も古い艇でもまだ6年しか乗り回していないという新鋭装備なのだが……。

 退役は来月から逐次的に進める。

 海軍の水上戦作戦部長は、『サイクロン』級のパトロールボート(これはマーク6艇よりも大きい)の仕事は、将来はLCSおよびコーストガード艇で埋めてもらうつもりであることを肯定した。
 『サイクロン』級を他の新鋭艇の調達で更新する計画は無いのだ。

 『サイクロン』級は2月時点で13隻ある。このうち3隻は3月末までに除籍させる。うち『USS トルナドー』は、米国の同盟/友好国にくれてやるつもり。

 小型でしかも戦闘任務のこのタイプの艇を海軍が、特殊作戦部隊用以外の装備として維持するつもりなのかどうかは、流動的である。

 『Mk.VI』型の造船会社は「SAFE Boats インターナショナル社」、略してSBI。
 海軍は2012年から2015年にかけて発注し、平均すると1隻の単価は700万ドルから800万ドルであった。
 ※陸自の戦車よりも安いんじゃないか! なんで陸自が無用きわまる戦車や自走砲を早く廃止して、本州からでも尖閣へ向かって即座に出動ができる航洋ボートを持たずにいてよいわけがあろうか? わずかな隻数で、尖閣海域のパワーバランスが劇的に変わるんだぞ。

 海軍遠征戦闘コマンドは、納品されたその艇を2015年から2017年にかけて部隊に装備させた。

 海軍はもともと「マーク6」艇を48隻調達したいと言っていたのである。
 だが6年前の12隻目以降、発注されなくなった。

 その間、「マーク6」の納入予価は、1400万ドルから1600万ドルの間で変動している。量産効果が期待できないので。

 「マーク6」は、全長85フィート。排水量72トン。
 主武装は25粍の「M242 ブッシュマスター」×2。これをリモコン・マウントに1門ずつ搭載。
 すこし位置の高いところには、12.7ミリ機関銃のリモコン・マウントも前後に1基ずつあり。
 加えて予備の兵装マウントが4箇所ある。

 外洋での最大速力は45ノット。
 25ノットの巡航速度だと750海里(=1389km)を走り抜けることができる。

 ※若狭湾から尖閣まで直航し、石垣島で給油してまた戻ることが可能なポテンシャル。北方に向かえば、若狭湾から国後島まで余裕で行ける。陸自は富山県から福井県にかけて、こうしたボートを運用する「水軍」の基地を置くべきだ。中共を滅ぼしたら次は韓国なんだから。たとえば富山駐屯地から川下りで富山湾に出られるだろう。

 「マーク6」開発時に与えられたミッション・イメージは、友好国の港湾先の沿岸をパトロールすること。
 ついでに特殊部隊のための潜入用ボートなども運搬してやる。

 ※空気で膨らませたゴムボートも潜入用として悪くはないが、コロムビアの「ナルコサブ」のような半没艇を親子式に発進させるようにする手もアリだろう。

 「マーク6」自体も、ドック付き強襲揚陸艦の艦内ウェルデックに複数隻が「入港」して戦略距離を楽に移動できるように最初から設計されている。

 駆逐艦『コール』がイエメンのアデン港内で小舟の自爆にやられた事件は2000年のこと。そこから、碇泊中の味方艦船に特攻テロ舟が近寄らないようにするための小型機動艇が求められた。
 そこで米海軍はSURC(小部隊搭載用リバーライン艇)や、RCB(リバーラインコマンドボート)などを調達して、中東の港湾に配備した。

 ところが海軍としては、小舟艇ではロクに対艦ミサイルも運用できないのが不満でたまらぬらしい。
 ※たしかに人と予算は、軽量艇でもがっつり取られるでな。だが人員急速運送目的に特化すれば、その限りではなくなる。なまじ「戦闘」ミッションを与えるからいけないのだ。

 ミサイルは、弾頭威力の小さなものでも、たとえば敵の大型艦のレーダーを損壊することによってミサイル戦闘能力を殺いでしまえるので、米海軍としては、小型艇にも、最低グレードでもいいから対艦用途に使えるミサイルを載せたいのである。

 海軍と海兵隊は、こうした小型艇を参加させたウォーゲームをやってみて、これらでは将来の実戦では脆弱すぎるだろうという結論に達した。
 特に中共や露軍が相手の戦争では、これらは大損害が必至だ。

 メンテナンスや訓練のコストが嵩みすぎだとも海軍では評価している。反論者は、12隻だから合理化が難しいので、当初計画どおりに48隻揃えれば、その問題は消える、と主張する。

 米海軍保有の「マーク6」艇は、メーカーのSBIに買い戻させてもいいくらいのコンディション。これを友好国の海軍等に売れないか、検討もされているようだ。※だったら陸自が買い取れ。バーターで何かの現物装備と交換したっていいはずだ。イスラエルはイタリアとの間で互いの国産兵器(新品)をバーターで交換する、安全保障貿易を始めている。これに倣えばいい。中古品の物々交換ならもっと話は楽だ。

 米政府は昨年、「マーク6」艇をウクライナに売ることを承認している。それで1月にSBI社に新造艇が複数発注された。

 ※70トン級のボートを、海岸や河川の岸の上から、数mの段差のある水面まで卸してやるための装備を、陸自の施設科は、ありあわせの器材を使って、どうにか工夫しなければならない。普通のクレーンのようなものではダメだ。カンチレバー橋の部材でやじろべえをつくって、重車両をカウンターマスにするなどの方法で、なんとかできないものだろうか?