十年以上前に出版したマンガ『2011年 日中開戦』の中で警告させてもらった《離島侵略の手口》に対する方策を、日本政府はロクに考えていなかったようで、がっかりした。
まず「ホンモノの漁民」を上陸させてしまう――というところがコツなのである。
それは荒天下に「海難」を偽装すれば、誰にも止めようはないのである。
「ホンモノの漁民」を救助せんとする中共公船(海警船)の尖閣への接近を、海保が「凶悪犯罪」と看做して毀害射撃を加えることができるかどうか、東大法学部を出ていなくても分かる話だろう。
海難救助には、海上民兵の船団も参加できる。軍用航空機も参加できる。救難物資を投下すると称して、糧食と弾薬を投下できる。
1万トン級の海警船は、武警500名を吐き出すことができる。
武警が漁民も使役して島内にすばやくトンネルを掘り、地下陣地に立て籠もってしまったら、海保には追い出す手立てなどない。
海保船長の指揮下に「同乗」陸自隊員が入れるようになっている場合だけ、即時に追い出すことができる。
北京発の「グレーゾーン工作」は、日米海空軍との正面衝突は巧妙にこれを避け、わが海上保安庁の弱みを集中的に衝く。
だから、もし陸自(およびそれと一体化した海保)によってこれを即時に排除することができぬのならば、尖閣諸島も《第二の竹島》となるのである。
これを未然に抑止するためには、自衛隊の「陸戦ドクトリン」を大転換する必要がある。
3月に徳間から刊行する『尖閣諸島を自衛隊はどう防衛するか(仮)』では、したがって、陸自の話だけをしています。
次。
『The Maritime Executive』の2021-2-26記事「Explosion on Israeli-Owned Car Carrier in Gulf of Oman」。
イスラエル人が所有する自動車運搬船。2-25にオマーン湾に入ったところで爆発が起きた。水線上にダメージあり。負傷者は出ていない。同船は点検と修理のためドュバイに引き返しつつあり。
船名は『ヘリオス・レイ』で2万1000トン。2015に韓国で建造されている。
爆発海面は、ムスカトの北西44海里。
自動車7700台を運搬できるキャパがある。
2-24にサウジのダマン港を出た。AISによれば最終仕向け港はシンガポールで、3-5到着予定であった。
イスラエルメディアによると、同船の所有者はアブラハム・ウンガル。同国の最大手の自動車輸入業者のひとりだという。
いまのところ、原因がミサイルかどうか、リムペットマインかどうか、なんとも言えない。
しかし直径1.5mの破孔が、両舷の乾舷にあいているそうである。
ウンガル氏いわく、敵は、持ち主がイスラエル人だと知っていて狙ったわけじゃなさそうだ。
イランは、イスラエルとサウジアラビアが鞏固な同盟関係に入ることを特に警戒している。
次。
『The Maritime Executive』の2021-2-25記事「Study: Antifouling May be a Major Source of Microplastic Pollution」。
ドイツのオルデンブルグ大学の研究者先生。北海沿岸の海洋を汚染しつつあるマイクロプラスチック源の大きな供給犯人は、船舶の水線下に塗布されているフジツボ避け薬剤だ、と。
これまでの研究者はプラスチック粒子の総量にばかり着目していた。この先生は粒子のタイプと分布をつきとめないと発生源が分らないと考えた。そこで、異なった複数の場所でサンプル海水を採取し、粒子タイプの異同を調べたのだ。
世間が、海洋プラスチック汚染の犯人だと思い込んでいる一般的な「包装材」のプラスチックは、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレイト)である。
それらは、海岸線近くの海中で多量に採取された。
しかるに、北海の沖合いと、エルベ河口域の、商船が頻繁に往来する航路においては、PVCがプラスチック粒子量の「三分の二」以上を占めていることがつきとめられた。
PVCは、アクリレイト・ポリマー+ポリカーボネイト類である。
ふつう、包装材にはPVCは使わない。
フネの底には、海洋生物を付着させないような作用があるコーティングがされている。その、アクリル系塗布剤やエポキシ系塗布剤の中には、結びつけ媒質として、PVCが大量に混ぜられている。
この先生の計算では、欧州の近海には、毎年、数千トンの船底塗布剤が、あたかも自動車タイヤが道路上ですりへらざるを得ないのと同じように、海水中に、こそぎ落とされている。
※タイガー・ウッズの事故現場は、ダウンヒル車両の事故多発地点だった。現代のカーナビは、そこに車両がさしかかったら「いま、事故の名所にさしかかりつつあります」という警告音声を鳴らさなくてはダメだろう。高級車の車内は音楽しか聞こえないから、勾配下りのスピード超過の危機感がドライバーからは奪われてしまう。そこを補正してやらねば。そのくらいのこともできねえのか……って話。
2011年日中開戦 (SUN MAGAZINE MOOK)