イランはスエズを長期間使えなくする方法を知ってしまったね。

 Carolyn Cohn & Jonathan Saul 記者による2021-3-25記事「Stranded Suez ship’s owner, insurers face millions in claims」。
   スエズで座礁したコンテナ船、すぐに離礁できたとしても、船のオーナーと保険会社は、巨額の損害賠償を請求されるだろう。
 この船、荷物を22万4000トンも載せられるマンモス船である。
 離礁作業は、ドバイに本社があるGACがやっているところだ。

 しょうえい汽船KKと、保険引受人たちは、SCA(スエズ運河運営体)から賠償を請求される。

 コンテナ船じたいのダメージは、金額にすると1億ドルから1億4000万ドルというところ。主機まで傷んでいるとして。
 この船の保険は日本の保険市場で引き受けられている。

 この事故のために配送が遅れるすべての荷物のオーナーも、保険会社に保険金を請求する。

 この種の保険に詳しそうな英国の人々いわく。『エヴァー・ギヴン』号の保険にはおそらく免責条項がある。海洋汚染でも引き起こしたなら、保険はカバーするが、今回のケースでは、保険がカバーしてくれない可能性もある。もちろん、これは外野からの想像だが。

 そして海上保険ではふつう、保険は数段構えで引き受けられている。再保険というやつだ。たぶんこれが発動されるだろう。

 今回の事故では運河の護岸も破壊されているので、その賠償請求もなされるはず。
 スエズ運河では座礁事故はめずらしくない。過去10年に25件あった。
 いまのところ、油等の漏出は報告されていない。そこは救いか。

 次。
 Rory Hopcraft & Kevin Jones & Kimberly Tam 記者による2021-3-26記事。
    2014年時点、スエズの最大通航キャパは1日49隻であった。これを2023年までに、1日97隻通航できるようにしようと拡張工事が始められているところ。

 すでに10隻の原油タンカーが足止めされている。合計1300万バレルだ。
 南ア廻りに変更すれば航海日数は15日余計にかかる。

 『エヴァーギヴン』は吃水が16mもある。コンテナは最大1万8000個積める。胴まわりもでかいので航路選びは不自由だ。

 同運河を通るフネの三分の一は、コンテナ船だ。

 事故はとてもマズい場所で起きた。運河の北端は2レーンになっていて、1レーンがふさがってもなんとかなる。しかし今回の座礁場所は、拡張工事がまだ済んでおらず、北行も南行も同じレーンを使う。その巾よりも長い船が横向きに塞いでしまったのだ。

 海運の混雑季は、クリスマス前の10月~11月である。

 こんかいの座礁点は海底が砂地。あとすこし位置が違っていたら、そこは岩だった。※砂の方が離礁が難しいようだ。

 ※別情報によると、船長はジョン・コンラッド。離礁作業はバラストタンクの注排水操作を用いようとするはず。

 次。
 Tyler Dawson 記者による2021-3-25記事「Why we shouldn’t blame the pilot of the container ship stuck in Suez Canal」。
   エバーグリーン海運いわく。30ノットの突風にやられたと。
 時速にすれば55kmである。

 エンジンにトラブルはなかった。

 「Bank効果」とよばれる海洋現象。運河の岸と船の間の水が、高圧部から低圧部に逃げようとする。それによって舵を効かなくする。

 事件当時、フネにはSCAから派遣される水先案内人×2名が、乗り込んでいた。
 しかし、オンラインで公開されているSCAの文書によると、運河通航中にもし船が何か事故を起こしたら、その責任は、「ship master」【船長】が負う。

 船長が、単独で、すべてのダメージ、すべての事故の責任を負う。その事故が、ナビゲーションの結果であれ、荷物ハンドリングの結果であれ。夜間に、水先案内人に任せていたとしても、それは変わらない。

 なぜなら、水先案内人たちは、各船にどんな問題点・難点があるのかは知らないわけである。操船が難しいフネもあるだろう。それを詳しく知っているのは船長なのだ。
 BBCによれば、砂のドレッヂ作業に続いては、積荷と燃料とバラスト水を除去して船体を軽くすることになるだろう、と。

 そのあとでタグボートが押し曳きして離礁させる。



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