この座礁事件が片付いたあとの話だが、全長300m(運河のシングルレーン区間の巾)を超える「背高」船舶のスエズ通航を禁止してしまえば、同類事故の再発は物理的に回避される。
しかしそうなればエジプト政府は儲からないし、世界経済も迷惑する。
そこで次善の策が考えられる。
全長300mを超える船舶は、バウスラスターを備えているか、さもなくば、船首の真正面に1隻のタグボートを密着させてバウスラスターの機能を実質持たせ得る構造となっていないならば、爾後は、スエズの通航を許可しない――とするのだ。
船首左右の投錨用のアイに2つのフックを鎖で固定し、そのタグボートは船首の真正面にへばりつく。横風の突風に吹かれるなどしたときは、ただちにそのタグボートがサイドスラストやリバーススラストを発生して、エスコートする巨大船舶に、緊急回避機動力や急速制動力を付与するのだ。
この流儀ならば、タグボートを用意するSCAが儲かるだけなので、エジプト政府にも何の不都合もない。
この専用タグボートは、巨大コンテナ船、巨大自動車運搬船、巨大LNGタンカー等のバルバスバウを傷つけないような特殊な浅喫水構造にもなっていなければならないことは言うまでもない。
日本の造船所が責任を感じて開発してやったらいいだろう。
浅吃水、且つ、機敏強力なタグボートは、今回のケースに限らず、さまざまなサルベージ・シーンでも活躍してくれるはずである。
また、中共軍の海上民兵のスチール製「当たり船」に、当たり負けすることもないから、尖閣警備・大和堆監視に任ずる海保警備艇もしくは水産庁漁業監視船としても、うってつけであろう。
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Samy Magdy 記者による2021-3-26記事「Day 3 and the Suez Canal remains blocked; at least 237 ships wait for canal to be cleared」。
ある保険屋いわく。このクラスのフネになると、かけられる保険はふつう、1億ドルから2億ドルまでの損害をカバーするはずだと。
こんかいの『エヴァーギヴン号』は2019前半にも事故を起こしていた。場所はハンブルク港に通ずるエルベ河で、繋留されていた無人のフェリー客船にブチ当てて破壊したという。
尖閣諸島を自衛隊はどう防衛するか 他国軍の教訓に学ぶ兵器と戦法