ロケット式の「つっぱり棹」が可能じゃないか? 緊急変針用として、また、離礁作業補助にも使える……。

 ただのメカニカルな竿なら重いスチール製だろうとぐにゃりと折れ曲がっておしまいだが、水中へ短時間噴射して反動を得る「リムペット式ロケット」の方式にすればショックは少なく、有効だろう。軽量素材でこしらえてふだんは船首部に安全に格納しておけるだろう。

 すなわちリムペットマインの逆用。リムペット式のロケットを貨物船じしんが船上に搭載しておくのだ。

 そしてもし岸壁衝突の危機が迫ったなら、それを船首の片舷へ、船員が転がし落とす。その機械には有線で電力が供給されるようにしておく。それは、ワイヤーが伸びきった水線下の位置に、適時に通電された電磁石の機能によって自動的に張り付く。
 続いて、内部AIが、吸着面(船体舷側)と反対開放面(岸壁側)を自己判定して、反対開放面(すなわち船首側方)に向けて短時間、サイドスラストを発生させるのだ。

 吸着が電磁石式だから、用が済んだら通電を停止してワイヤーを切断すれば、そのまま水底に落下する。

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 Jennifer Leman 記者による2021-3-25記事「How That Massive Ship Got Stuck in the Suez Canal?and Why Nobody Can Get It Out」。
   2017年に日本のコンテナ船『OOCL Japan』がスエズ運河で座礁したときには、数時間にして自力離礁できた。

 2004年にリベリア船籍の原油タンカー『トロピック・ブリリアンス』が座礁したときは、運河は3日、閉塞された。

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 Peter S. Goodman 記者による2021-3-26記事「In Suez Canal, Stuck Ship Is a Warning About Excessive Globalization」。
   ジャスト・イン・タイム方式が、海上輸送の業界にもすっかり定着してしまっている。そしてまた、海上を運ばれる貨物の増え方が、過去数十年、ハンパじゃないのである。これが、今回のような予期せぬトラブルの影響を大きくしている。

 ブルームバーグの試算では、スエズ運河が1日閉塞されれば、96億ドル分の滞貨が生ずると。

 またコペンハーゲンの研究所いわく。今年の2月後半、欧州に到着したアジアの貨物コンテナ船のうち「四分の三」は、スエズを通ってきた、と。
 もし閉塞が2週間続くと、欧州では「四分の一」のコンテナが動けなくなる。

 運河が再開した直後も、世界の港は混乱する。一斉に、貨物船が着船するからだ。押し合いへしあいになる。



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